http://karapaia.livedoor.biz/archives/52171312.html引用


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 脳に電流を流して人為的に”ゾーン”へ突入すれば、学習効果や問題解決能力が2倍にも高まるかもしれない。こうした研究はまだ始まったばかりとはいえ、さらなる脳の強化やチップ移植による義体化まで、無限の可能性が広がっている。

 研究者によれば、脳への理解が進めば、電気を利用して、集中力、記憶、学習能力、計算能力、パターン認知といった脳の機能を強化することが可能になるという。他にもうつ病や痴呆の治療といった用途も考えられる。さらにコンピューターチップを移植して、インターネットから情報やスキルを直接ダウンロードすることまで可能になる。攻殻機動隊の世界がすぐそこに待っているのだ。


こうしたことを実現するための鍵は、脳のコーディング機能の解明にかかっており、これへ向けた数多くの研究がなされている。

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脳の修復と補強

 脳の機能を強化する技術は医療においても重要な役割を果たす可能性がある。認知機能の低下や精神病の治療のほかにも、視力や聴力の回復といった用途が見込まれる。

 実はすでに実用化されている技術すらある。脳へ電気を流し病気を治療する試みは、大昔からなされているのだ。古代ギリシャやローマでは、大プリニウスなどが頭痛を治すためにエイの針でショック療法を試みている。今日においては、経頭蓋直流電気刺激(TDCS)が、うつやてんかん、薬の効きにくい脳の疾患などにおいて有効な治療法となっている。

 また神経移植も非常に有望な医療技術と見られている。聴覚障害者の脳に音を伝え聴力を回復したり、小型カメラを接続して全盲の障害者に形や動きといった視覚を認識させることすら成功しているのだ。

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脳への電気ショック

 こうした医療における進歩も驚きだが、そうした技術の未来の可能性にはさらに胸躍るものがある。

 例えば、頭に電極を取り付けて、脳に微弱な電流を流してみる。すると突然頭がすっきりして、これまで手こずってきたパズルを急に解けるようになってしまったり、何だか判らない羅列から規則性を認識したり、記憶力まで良くなってしまう。

 神経学者や脳強化の研究者によれば、こうしたことは最早SFの中だけのことではなく、TDCSを利用して実現していることなのだという。また、こうした結果を裏付ける将来有望な研究も数多く存在する。

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 「TDCSは外科的と言うよりは、ショットガン的な手法とでも言っておきましょう」とライト州立研究所の神経学者マイケル・ワイゼンド氏。同氏によれば、現段階では脳内の電気を流す対象となる部位を把握する研究が進められており、少なくとも研究室においては安全性が確認されているという。

 ワイゼンド氏が実施した500人を対象とした研究では記憶、パターン認識、注意力の改善が見られ、とりわけ新しいスキルを修得する早さが通常の人の2倍にも達するという結果が得られている。また別の研究では、電気刺激によって計算能力が最大6ヶ月相当分も向上した。また米軍においては、集中力を向上させることで、狙撃手の成績向上や、パイロットがレーダーで目標を早期に発見するうえで効果が期待できるという結果もでている。

 TDCSは安価で手軽に製作できるうえ、効果も期待できるため、脳機能を向上させたい人やゲーマー向けの自作製品まで出回っている。しかしワイゼンド氏は安全性にはまだ不明な点があるうえ、その効果にも過度な期待を抱いていると懸念する。「今の段階で判明しているのは、脳機能を変化させることで、能力を向上させることができるということだけです」

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頭蓋骨内のチップ

 頭蓋骨内にコンピューターチップを埋め込む覚悟が必要ではあるが、TDCSで最も興味をかき立てられることは直接ダウンロードの可能性だろう。

 例えば、視覚や聴覚を補うために既に利用されているものと同様の技術によって、感覚をさらに向上させることができる。ニューヨーク大学心理学部教授のゲーリー・マーカス氏によれば、その代表的なものは記憶だという。米軍では、脳に神経や電極を移植することで、トラウマによって記憶に障害を負った人々の記憶を取り戻す研究を進めている。これを発展させば、記憶容量の拡大まで可能になるという。「ただしそれがいつになるかは判りません。10年以上はかかるでしょう」とマーカス氏。

 これを実現するには脳が物事を記号化し、それを保存する仕組みの解明という大問題を解決しなければならない。しかし、これさえできるようになれば、それを模倣することで脳への直接ダウンロードが実現できる。こうした研究は政府や研究機関で最優先事項として進められているが、それは50年後を見据えてのことだ。

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そして次の段階へ

 こうした技術は多くの人々の想像よりも遥かに進歩しているとは言え、夢の技術の実現までの道のりはまだ長い。TDCSに関して言えば、まずは訓練プログラムや薬物が効きにくい脳疾患の治療での利用が広まり、場合によっては高度の集中力を必要とする職業でも普及していくだろう。

 「こうした技術は30年後になっても未熟なままでしょう」とマーカス氏。しかし、すでに実現へ向けて世界が動き出していることだけは確かだ。

via:businessinsider・原文翻訳:hiroching