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アザゼル999

※アザゼルかっぱの独自調査記事が少しございます。記事検索で「アザゼル」と入力すると読む事ができます。ジャーナリストでも物書きでもないので下手な文章ですが、どうぞ読んで行ってください。 各優良サイトのオカルト・政治・芸能・国内ニュース・海外ニュース・歴史・バラエティなどなど、ネット中の様々な情報を紹介していきます。

2014年08月

357 :未 本編1 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 23:27:51.55 ID:93PkLSJW0
和雄でなくとも、こういう子が幼馴染なら悪い気はしないなあ、などと考えていると、
後ろの師匠から「早く登れ」と尻を蹴られた。
石段はすぐに途切れ、枯葉で覆われた山道が現れた。標高の低い山だが道はかなり険しい。
寒さに慣れた身体はすぐに熱くなり、息が荒くなった。
それでも山歩きは今年、師匠にかなり鍛えられたので、ペースを乱すほどではなかった。 
楓と和雄も慣れた足取りで平然と登っていく。 
「へえ~。興信所で働いているんですか」 
「ああ。その中でもわたしはオバケ専門」 
「なんですか、オバケ専門って」 
和雄は吹き出しながら師匠と会話を続ける。
なんだか如才ないやつだ。
体格も良く、少し彫りの深い顔だがなかなかの色男だし、なんと言っても笑顔が爽やかだった。
実に気に食わない。
「僕らも見たんですよ、例の幽霊」 
な?と先頭の楓に話を振る。 
「うん。見たよ。怖かった」 
「どんな風に?」 
師匠はこの場にいるのが全員年下のせいか、さっきまでの営業トークから一転してくだけた口調で話しかける。 
楓は平日に仲居が一人休んだので、晩の給仕を手伝わされていた時、
膳を下げるため廊下を通っていると窓ガラス越しに、やけに白っぽい格好のふわふわした人影が目に入ったのだそうだ。
「出る、って聞いてたけど、ホントに見たら腰が抜けそうになりますねえ」 
人影はすぐに消えてしまったらしい。三ヶ月くらい前のことだった。 
「僕の方は風呂場ですよ。二ヶ月くらい前かな。
 大浴場の外に露天風呂があるんですけど、
 帰りが遅くなって泊めてもらった時に、お客さんが全員出た後で一人で入ってたんですよね。 
 そしたら、湯気の中からこっちにスーッって、水面を歩いてくる人がいるんですよ。
 やばい、と思って立ち上がって逃げようとしたんですけど、お湯に足を取られて走れなくて、
 向こうはスーッて近寄ってくるでしょう?生きた心地がしなかったですよ。
 なんとか逃げ切って脱衣所のところまで来て、振り返ったらもう見えなくなってましたけど」
あ、露天風呂自体はすごく良いお湯ですから、後でぜひどうぞ。和雄はさりげなくそう付け加える。 


358 :未 本編1 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 23:30:00.47 ID:93PkLSJW0
「あなたはその神主の霊の子孫じゃないの?なんでびびってんの」 
「いやあ、それなんですけど、なんかピンと来ないんですよね。
 ご先祖様がなんで『とかの』を祟らないといけないのか、さっぱり分からないんですよ。
 なにか言ってくれればいいのに、うらめしいの一言もなしですよ。
 なんなんでしょう、一体。親父も首を傾げてますよ」 
父親の章一さんはかなり責任を感じていて、女将や楓に会うたびに頭を下げているらしい。 
御祓いも何度も行なったし、それでどうしても上手くいかなかったので、
恥も外聞もなくこうしたことに強いというお寺を自ら探してきたりと、
とにかく神主の霊が出なくなるように協力してくれている。
今のところその効果は見られないようだが。 
次男とはいえ、成人した息子が幼馴染の女の子のところへ入り浸って、その家業の従業員のような真似をしているのを、
叱りもせずに見逃しているというのも、そうした後ろめたさがあるせいなのかも知れない。 
「お父さんが宮司なんだよね」 
「ええ。もう先祖代々の」 
師匠は若宮神社の宮司、石坂家の家族構成を正確に聞き出した。 
父親が宮司の章一、母親が昌子、兄が皇學館の大学院に在籍中の修(おさむ)、そして妹が専門学校生の翠(みどり)。
あと、父方の祖母がいるそうだが、今は西川町の病院に入院中とのことだった。 
この一帯の松ノ木郷も、行政単位としては西川町の一部なのだが、
このあたりの人は、町役場のあるあたりだけを指して西川町と呼んでいるようだ。 
「兄貴が大学を卒業したら、戻ってくるんですよ。
 うちで権禰宜をしながら、西川町の高校で歴史を教えるって言ってます。
 親戚筋の神社からも、神職の手が足りないって相談されてるんで、ひょっとしたらそっちに行くかも知れませんけど。
 どっちにしても、いずれはうちの若宮神社の跡を継ぐんですけどね、兄貴は」
和雄は冗談めかして自分の二の腕を叩いた。
「だから、僕なんて肩身が狭いですよ。早いトコ手に職つけないと、いずれ実家から追い出されちゃいますから」 
和雄の方は神道系のコースのある大学ではなく、一般大学の法学部に在籍している。 
「章一さんの前の宮司はお祖父さん?」 
「そうです。もう五年になりますね」 
すでに亡くなっているらしい。
師匠は『とかの』に現れる霊がそのお祖父さんである可能性はないかと尋ねた。
すると和雄は「それはないですね」と即答する。 


359 :未 本編1 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 23:32:02.51 ID:93PkLSJW0
「祖父はあの年代の人にしては、凄く押し出しの立派な人でしたから」 
今の自分よりも背が高かったんですよと、頭の上に手をやってみせた。 
なるほど。そんな大柄な人なら、たとえ顔がぼやけていようが、幽霊になって現れたらそれと分かりそうなものだ。
女将や旅館の人々も、先代の宮司を良く知っているだろう。 
誰もそのことに触れないということは、どうやら和雄の祖父が化けて出ているわけではないようだ。
もっと昔のご先祖様ということか。 
「最近、神職の服が盗まれたりってことはない?」 
師匠の問い掛けに和雄は眉をひそめる。 
「誰かが、イタズラでもしてるってことですか」 
「まあ、どんなことでも可能性はあるから」 
自分自身、幽霊を目撃したという和雄からすると、それが誰かのイタズラだと言われても納得できないだろう。
確かにこれまでに聞いた多くの目撃談からしても、すべて人間の仕業というのは無理がある気がする。 
「服が盗まれたことなんてありませんよ。もちろん紛失もありません」 
和雄がはっきりそう言うと、師匠は「そう」と言ってそれ以上追求しなかった。 

「あ、この先から見えますよ」 
楓が指さした先には、木々の群れがぽっかり抜けたような空間があった。
その開けた所まで登りきると、遠くの景色が見渡せた。 
「見晴らしがいいなあ」 
師匠が手近な切り株に片足をかけた。 
眼下には枯れ木で覆われた山の峰が広がっている。
それほど高くは登っていないはずだが、角度のせいかここからは『とかの』は見えない。
その代わり、平野を隔てた遠くの山の中腹になにかの建物が見えた。 
「あれが、うちの神社ですよ」
和雄が指をさす。
「こうして見ると、結構近いな」 
「でも『とかの』から歩いたら一時間近くかかりますよ」 
見下ろす風景の中には畑や田んぼ、そして枯れ木ばかりの林など、寂しい色彩ばかりが広がっている。
その間を縫うように、枝川がくねくねと蛇のようにうねりながら伸びていた。 
「なにもないところでしょう。だんだん人口も減ってますし。
 うちの神社のあたりなんて、今じゃバス停も遠くになっちゃって、不便でしょうがないですよ。
 家族全員バイクに乗ってるくらいです」 


360 :未 本編1 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 23:33:43.33 ID:93PkLSJW0
「え~。うちの『とかの』のあたりの方がバス停遠いじゃん。たまにはそのくらい歩きなよ」 
そんなことを話しながらしばらくそこで景色を見ていると、陽が翳ってきて寒さが身体に戻ってきた。
風も少し出てきたようだ。
「もう少し先が頂上ですけど」と和雄が尋ねたが、師匠は首を振って「もういいや。戻ろう」と言った。 
頂上までの道はここから少し下った後でまた登りになっていたが、そのすべてがすでに見渡せた。
女将の言っていたとおり、裏山には神社やそれに関するものは全く見当たらなかった。
頂上の反対側の下りも同じようになにもないと、楓と和雄が断言した。 
師匠はそれほど残念そうでもなく、
また先陣を切って元来た道を下り始めた楓の後ろについて、山道を踏みしめていった。 

五分ほど歩いただろうか。
右手側に大きくV字形に抉れた谷が広がっている場所に出たのだが、そこで師匠が足を止めた。 
谷の方へ身を乗り出して首を伸ばしている。先はかなり急な崖だ。
後ろにいた僕は思わず「何をする気ですか」と止めに入りそうになった。 
師匠はキョロキョロと周囲に目をやると、手がかりとなる木がまばらに生えた獣道を見つけ、
そこから崖の下へ降り始めた。止める間もなかった。
最初にザザザと山肌を滑るように降りた後、枯れ木にしがみついて勢いを殺し、
そこから先は器用に木の枝につかまりながら、あっと言う間に谷の底近くへたどり着いてしまった。 
地元民の二人も驚いたようにそれを見つめている。 
「なにかあるんですか?」 
僕は両手でラッパを作って声を上げる。 
師匠は谷の奥でうろうろしながらせわしなく動いている。 
「ああ。こいつは地滑りの跡だ」 
斜めに生えている潅木を叩きながら返事が返ってきた。
その谷は途中から水が湧いていて、さらに下へと流れていっている。 
師匠はそのあたりの土を掘ったり木を揺すったりしながらその周囲を探索していたが、
やがて山肌から突き出ていた石の前にしゃがんで、堆積した土や苔などを手で払い始めた。 
僕たちの眼下でその動きがふいに止まり、またすぐに立ち上がったかと思うと、そばの谷川の淵へ近寄っていった。


361 :未 本編1 ラスト  ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 23:37:32.59 ID:93PkLSJW0
その先はさすがに危険な地形だったので諦めたのか、
師匠は猿のように木の枝につかまりながらこちらへ戻り始ってきた。 
「悪い。待たせた」 
山道へ戻ってくると、ズボンの土ぼこりや枯葉を払いのけながらあっけらかんと言う。 
「すごいですねえ。レンジャーみたい」 
楓がそう褒めると、和雄は「危ないからもうやめてくださいよ」と心配そうに詰め寄る。 
「わかったわかった。もう帰ろう」と師匠は笑った。
そして楓、和雄の後についてふたたび山道を下り始める。 
なにか予感のようなものがして、僕はそのすぐ後ろについた。

すると、前を行く二人としばらく談笑しながら歩いていた師匠が、こっそりとした手の動きで合図をしてきた。 
顔を近づけた僕の耳元に素早く口を寄せ、「地滑りの跡に埋もれた石の表面に、こんな模様があった」と囁いた。 
そして僕の手を握り、手のひらに指でなにか文字のようなものを書いた。 
「え?」と怪訝な顔をした僕に、師匠は「面白くなってきた」ともう一度囁いて、
前を行く二人を早足で追いかけていった。 
なんだろう。この字は。 
僕は手のひらに残る文字の感触をじっと記憶に刻みながら、そして同時に記憶を呼び覚まそうとする。 
漢字だ。
雨冠は分かる。その下に、丸……いや、口がみっつ。横に並んでいる。
そしてさらにその下に、なにか複雑な字が続いている。
龍という字だろうか。あるいは能力の能という字か。 
いずれにしても、そんな漢字があるのだろうか。物凄く画数が多い。
しかし全体のバランスからして、一つの字としか思えない。 
なんだ、この文字は。 
僕は自分が足を止めていることに気づく。 
前を行く師匠の背中に視線を向けたまま、手のひらに刻まれた文字の感触に身震いする。 
なんだ、これは。
そんなことを口の中で繰り返しながら、僕は冬枯れの山道に立ち尽くし、
じわじわとその文字に沿って自分の血が流れ出て行くような、得体の知れない悪寒に包まれていた。

352 :未 本編1 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 23:13:25.59 ID:93PkLSJW0
女将は師匠のことをどう思っているだろう。
テレビで見るような霊能者のように、『この霊はこういうことを訴えているのです』などとすぐさま断言し、
そのうえ自ら憑依現象など起こしてみせるようなことを期待しているのだろうか。 
「神主の服装は、どうです」 
「どう、と言いますと?」 
「今の若宮神社の宮司のものと同じですか」 
「えっ。それは」 
女将は驚いた表情を浮かべた。 
「同じ、だったかと思いますが」 
「自信はないんですね。では、若宮神社の宮司は霊を見ていますか」 
「見て、いないようです」 
「服のことは宮司から訊かれませんでしたか」 
「はい」 
師匠は舌打ちをした。 
「大事な要素です。いつの時代の霊か分かるかも知れないのに……。宮司は霊についてなんと言っていますか」 
「どうしてこういうことになるのか分からない、と。とても困惑しています。それはこちらもですが……。
 とにかく、若宮神社にも私どもにも、まったく心当たりがないんです」 
「よそ者、という点に関してはどうです。代々の氏子ではないわけでしょう」 
「そんな。
 町の外から移り住んできた家は他にもありますし、私どももこちらに来てからは、初代より若宮神社の氏子です。
 旅館組合からは継子(ままこ)にされても、若宮さまはわけ隔てなく接してくださいましたから、
 お互いにうらみつらみもございません。
 私は当代の宮司の章一さんとは、同じ小学校の先輩後輩で、年下の私を良く気にかけてくださいますし、
 娘の楓は、章一さんの次男の和雄さんと幼馴染で、とても仲が良いのですから」 
若宮神社の宮司は石坂という名前らしい。 
勘介さんがムッスリした顔のまま頷いたところをみると、そのあたりの事情はそのとおりのようだ。 
「では、いったい何のために、霊はさまよい出てきているのでしょう」 
「私どもには分かりかねます」
『それはそちらの仕事だ』という表情で女将は師匠の目を見つめ返した。
師匠は溜め息をついてその視線を避けると、少し口調を変えて言った。 
「写真はどうです」 


353 :未 本編1 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 23:15:22.54 ID:93PkLSJW0
「え?」 
「写真です。心霊写真。その神主の霊の写真は撮れていませんか」 
「写真は……聞いたことがございません。写真に撮ったというような話はなかったかと思います」 
「そうですか」
師匠は残念そうに自分の額を叩いた。 
「いや、しかし、古い霊だと基本的に写真には写らないので、正体を知る上では少しヒントになるかも知れない。
 わたしの経験上、写真文化の成立前の霊は、心霊写真として撮れないことが多いんです。 
 写真という、己を写しとりうる機械の存在を知らずに死んだ霊らならば。
 つまり、江戸時代後期以前の霊ならば……」 
はじめてそれらしいことを言った師匠に、女将は困ったような表情を浮かべた。
信じて良いものか迷っているような顔だった。 
「まあいいでしょう。
 あとは、そうですね、この旅館の裏手は山になっていますが、
 そちらにはもしかして、その若宮神社の分社がありませんか?あるいは昔あったとか」 
「いえ、ありません」
即答だった。
「今でも良く気晴らしに登ることがございますが、そういうものはありません。
 登り口が表から少し回りこんだところにあるんですが、そちらから山に入れます。
 気になるようでしたら、そちらからどうぞ。とっても見晴らしが良いところがあるんですよ」 
「それはぜひ。
 では、まず旅館の中を見せてもらいましょうか。
 恐らくですが、夜までなにも起こらないでしょう。それまで、できるだけ情報収集をしたい」 
師匠は立ち上がった。 
「運が良ければ今夜中に、相手の正体が分かるでしょう。正体が分かれば対処のしようがあります」 
応接室を出るとき、先に立った僕がドアを開けると、すぐ前にいた女性にぶつかりそうになった。 
「うわ」という声が出てしまった。
相手も驚いたようだったが、ばつの悪そうな顔をして後ろの女将の方を見て首を竦めている。 
「楓、なにしてるの」 
「あの、いや、ちょっと」 
楓というと、さっきの話にも出た女将の娘のはずだ。僕と同い年くらいだろうか。 


354 :未 本編1 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 23:19:59.14 ID:93PkLSJW0
髪をポニーテールにして、タートルネックの黒いセーターにデニムのパンツといういでたちからは、
活発そうな印象を受ける。 
どうやら盗み聞きをしていたらしい。 
悩みの種だった幽霊騒動のさなか、解決のために霊能力者が雇われたとなると、
若い彼女が興味津々となるのも無理はない。 
「楓、後でこの方々について裏山をご案内しなさい」 
溜め息をつきながらの女将の言葉に、楓のすぐ後ろにいた仲居姿の女性が身を乗り出す。 
「あ、私が案内しましょうか」 
広子さんだ。いっしょに盗み聞きしていたのか。 
「おまえは夕食の仕込みがあるだろうが」 
勘介さんがボソリと言って自分の娘の頭を小突いた。結構痛そうだった。 

それから師匠は小一時間旅館の中を調べて回った。
特に幽霊が出たという場所では、いつ、誰が、どんな風に見たのかをこと細かく聞き取った。 
僕はそれにくっついて回り、書記係となって聞いた内容をすべて大学ノートにメモしていった。 
師匠はその間、聞いた内容に関する評価をほとんど下さなかった。ただ淡々と事実を収集していくだけだ。 
それらの目撃談は旅館中に及んでいた。玄関や、廊下、客室や宴会場、そして中庭や温泉。
その節操のなさからは、場所に関する拘りをまったく感じなかった。 
ただ、その頻度からは、この『とかの』という温泉旅館そのものに対する異常な執念、
あるいは執着のようなものを感じられた。 
神主姿の霊は、人に危害を加えようとするようなそぶりこそ見せていないようだが、
目撃者は皆、なんらかの怨念じみた恐ろしさを感じて怯えている。 
廊下の壁から抜け出るように突然現れたかと思うと、反対の壁の中へ消えて行ったり、
夜中に宿泊客がふと目を覚ますと、布団の周囲を数人の神主姿の霊がゆっくりと歩いているのが見えたり。
現れ方も様々だった。 
「数人?」 
宿泊客からそんな話を聞かされたという仲居の一人に、もう一度確認する。 
「ええ。二,三人か、三,四人か。うろうろ歩いていたそうです」 


355 :未 本編1 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 23:21:52.22 ID:93PkLSJW0
「顔は?もしかして全員同じではなかったですか」 
訊かれて四十年配の仲居は首を傾げる。 
「そんなことはおっしゃってませんでしたね。
 でも、私も見たことがありますけど、顔はあまりよく見えないんですよ」 
顔のあたりは妙にぼやけていて、ただ蒼白い顔をしているということだけが分かるのだという。 
「ありがとうございます」

師匠はおおよそ必要と思われる情報を集め終わったのか、
あるいはこれ以上聞いても有益な情報は得られないと判断したのか、調査を一旦打ち切った。 
時計を見ると午後三時を回っていた。 
「では裏山に登ってみます」 
師匠がそう告げると、女将は娘を呼んだ。 
「楓、ご案内しなさい」 
「はあい」 
セーターの上からジャンパーを羽織った格好で現れた楓は、元気に返事をすると右手を高らかと挙げてみせた。 
「あ、では僕も」 
その後ろから旅館の半被を脱ぎながら大柄な青年が現れて、はにかみながらそう言った。
さっき玄関で枯葉を掃いていた人だ。 
この若者が、女将の話に出てきた若宮神社の宮司の次男らしい。 
その掃除している姿を『お坊ちゃん』と呆れたように評した広子さんの態度が気になって、
聞き込みの最中にもう一度広子さんを捕まえ、彼が何者か訊ねてみたのだ。 
彼は石坂和雄といって、県内の大学の三回生。
キャンパスの近くに下宿しているのだが、冬休みになって実家に帰省しているらしい。 
そんなたまの里帰りなら、実家で足を伸ばしてゆっくりすればいいのにと思うが、
広子さん曰く、この旅館の一人娘の楓にホの字らしいのだ。 
そのために、『ヒマだからなにか手伝いますよ』と言って、足繁く『とかの』に通ってきては、
掃除に荷物運びにと汗をかいているらしい。 
そして夕方遅くなると、一緒に晩御飯でも食べていきなさいという話になり、
いとしの楓ちゃんといられる時間をがっちりキープする、という具合だ。 
もっともそれは今に始まったことではなく、狭い田舎のコミュニティの中で昔から幼馴染として仲良くしてきたらしい。


356 :未 本編1 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 23:25:38.44 ID:93PkLSJW0
和雄の父親である現宮司の章一さんは、女将の千代子さんと幼馴染であるし、
章一さんの奥さんの昌子さんは、千代子さんと同じ華道の先生についていた縁で仲が良いらしい。
いわば家族ぐるみの付き合いだ。
そして二つ年下の楓が今年の春に高校を卒業し、地元の短大に通い始めてから和雄のアプローチが積極的になってきた。
将を射んと欲すれば、まず馬から射よ。
とばかりに旅館に入り込んでテキパキと仕事をしてみせる和雄を、女将は上手く操っているようだ。 
女将は十年ほど前に夫と死に別れ、それ以来女手一つで楓さんを育て、
親から受け継いだ旅館を切り盛りしてきたのだそうだ。 
いずれ楓に婿を取って跡を継いでもらわないといけない。
そこに若宮神社の次男坊であり幼馴染の和雄という、うってつけの人物がいるのだ。これを逃す手はない。 
楓自身はまだ短大に入ったばかりで遊びたいざかり。
どうやら和雄のことは憎からず思っているらしいのだが、まだはっきりとは態度で示さず、
バイトにサークルにと忙しい日々を送っている。
そんな二人の間を巧妙に取り持って、けっして下手に出ることなく、
和雄の方から積極的にこの旅館へ通わせてあれこれ手伝わせているのが、女将の千代子さんというわけだ。 
聞くと、和雄は普段の土日にも良く顔を出しているらしい。まめなことだ。 
「じゃあ、行ってきます」 
楓が玄関先で振り返りながら声を張り上げる。 
「和雄さん、お願いね」 
「はい」 
女将は和雄の方へだけ声をかけた。そして師匠と僕に会釈して旅館の中へ戻って行った。 
「こっちでーす」
楓が先導して敷地の外へ出る。すぐ裏の山なので旅館の建物を回り込んで行くのかと思っていた。 
「この先を回ったとこから入山口があるんですよ」 
早足で一人先へ先へ進む楓に苦笑しながら和雄が説明する。 
旅館のそばを流れる川沿いに少し歩くと、山側に石段のようなものが見えてきた。
「ここから登りまーす」 
楓は苔むした石段を二段飛ばしで登っていき、そのたびにポニーテールの先がピョコピョコと揺れた。
元気だし、動きが妙に可愛らしい。 

340 :未 本編1 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 22:32:28.14 ID:93PkLSJW0
平地の中にぽっかりと水面が開けている。かなり大きい。
溜め池のそばの道沿いに看板のようなものが立っている。書いてある文字は見えなかった。 

それからほどなくして、蛇行した川を横切る形で橋を渡り、バンは山の麓の方へ進んでいった。 
「着きましたよ。お客サマ」 
バンが速度を緩めたのは、山に抱かれるような奥まった場所にひっそりと立つ二階建ての建物の前だった。 
『とかの』というひらがなで大書された屋号が、玄関に大きく飾られている。 
大きく開かれた門を抜け、玄関に近づいていくと、旅館の半被を着た若者が大きな箒を持って枯葉を掃いていた。 
「あら。あのお坊ちゃん、また来てるよ。マメだねえ」 
お坊ちゃん?広子さんの口調には呆れたような、それでいてどこか意味深な響きがあった。
彼はこの旅館の従業員ではないのだろうか。 
広子さんが玄関に車を横付けすると、若者はこちらに軽く頭を下げてから自動ドアの中へ消えていった。 
そして僕らが車を降りて荷物を出そうとしていると、白髪交じりの髪を短く刈り揃えた男性がドアから出てきて、
「お待ちしておりました。お持ちします」と言った。 
やはり旅館の半被を着ている。小太りだが動きはキビキビしていた。
「あ、いや、自分で持ちます」と言いかけた師匠から、押し付けがましくなく自然に荷物を受け取った。 
どうやら水周りのトラブルに呼びつけた修理工という感じではなく、それなりに客としての待遇ではあるようだ。 
「あ、お父さん。くるま、車庫でいいの?」 
広子さんの言葉に男性は頷いてから、ニコリともせずに「こちらへどうぞ」と僕らを自動ドアの方へ先導した。
どうやら親子で働いているらしい。広子さんは仲居ということだったが、さしずめ父親は番頭というところか。 
車を回す広子さんを尻目に僕らは旅館の中に入っていった。 

タイル張りのたたきで靴を脱ぐと、狭いが整然としたロビーが目の前にあった。床には赤い絨毯が敷き詰められている。
中は暖房が効いていて、ほっと人心地がつけた。 
人形などの民芸品で飾られたフロントの奥から、和服の女性が姿を現した。薄桃色の上品な着物だ。 
「ようこそいらっしゃいました」 


341 :未 本編1 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 22:40:29.86 ID:93PkLSJW0
微笑んだ後で頭を下げる姿は流れるようで、いかにも身についた仕草という感じがした。 
四十年配の女将は続けて「依頼をした戸叶(とかの)です」と名乗った。
師匠が名刺入れを出したので、僕も慌ててポケットを探る。 
興信所の所長は僕らバイトにも名刺を作ってくれていた。
ただし、大きな声では言えないのだが、偽名だ。バレやしないかといつも不安になる。 
女将も懐から名刺を出してお互いに交換した。 
「よろしくお願いします」 
特に名刺の名前に疑惑を持った風もなく、女将はにこやかに「まずお部屋へどうぞ」と片手を広げた。 
ロビーを回り込むように抜けると、先へ伸びる廊下と階段があり、僕らは二階に案内された。 
本来師匠が一人でやってくるはずのところを、急きょ僕も助手としてついていくことになったので、
部屋が二人分用意されているのか不安だったが、並びで二つきちんとかまえられていた。 
和室の中に通されると、思ったより広く、家族連れなどのグループ客が使う四,五人用の部屋のようだった。
こんなことろを一人で使うのは申し訳ない気分になる。 
女将は「今日はあと二組お見えになっているだけですから、お二階はすべて空いておりますので」と、
こちらの考えを見通したようなことを言って、
「また後で参ります。遠路お疲れでしょうから、まずはおくつろぎください」と去っていった。 
僕としては、
『申し訳ありません、一部屋しか用意できず』
『いえいえ、一向に構いません。ねえ師匠』
『しょうがないなあ。布団だけは離して敷いてくださいね』
という展開を心のどこかでは期待していたので、幾分がっかりしたのだが。 

とりあえず荷物を置いて、部屋のテーブルにあった茶菓子を掴むと、隣の師匠の部屋へ移動した。
同じような造りの和室だ。 
隣の部屋では師匠がさっそくお茶をいれていたので、ご相伴に預かることにする。 
「思ったよりいいところだな」 
師匠の言葉に僕はこれまでに見たこの旅館のパーツ、パーツを思い浮かべ、そして頷いた。 
「ただで泊めてもらって、その上バイト代ももらえるなんて最高じゃないか」 
「その分プレッシャーなんですけど」 
口にすると、なんだか本当に不安になってきた。 


344 :未 本編1 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 22:45:20.68 ID:93PkLSJW0
興信所の常として、成功報酬は別として、たとえ依頼内容が達成できなくても最低限の基本料金は払ってもらうのだ。
もしこれでなにも成果なく逃げ帰るようなことになったら、と思うと…… 
「いいじゃないか。お化けを退治したら済むことなんだから」 
「そう。それなんですよ。なにか感じますか、この旅館に」 
僕はなにも感じない。今のところは、だが。 
師匠は「うんにゃあ」と気のないそぶりで首を振ると、茶菓子に手を伸ばした。 
「とりあえず、ただの噂とか勘違いの路線で、裏づけを取る方向ですか?
 それとも、あくまで本物という前提で、やっつけに行きますか」 
これだけなにも気配を感じないとなると、『見る』のは大変そうだ。 
「まあ、大丈夫じゃないか。聞いた話でも、出るのは夜だっていうし。
 それにカンだけど、今回のはたぶんホンモノだよ」 
師匠はあっけらかんとしている。「お茶うめえ」などと言って、僕の分の茶菓子にまで手をつけている。 

そうこうしているうちに女将がやってきた。
そして依頼のことを口に出そうとしたとき、師匠がそれを制した。 
「場所を変えましょう。この部屋では、主客が逆転してしまう」
女将は意外そうな顔をしたが、すぐに微笑んで「では下の応接室で」と言った。 
なるほど。僕らは依頼を受けた立場で、女将の方が依頼客だ。
それなのにこの客室にいては、職業柄女将は僕らを客として遇してしまうに違いない。
それではちぐはぐなやりとりになると師匠は考えたのだ。さすがに慣れている。 

階段を降り、僕らはフロントのちょうど裏側にあった応接室に通された。 
僕と師匠はソファーに腰かけ、テーブルを挟んで向かいに女将と出迎えてくれた角刈りの男性。 
「番頭兼料理長の井口です」 
女将の紹介に男性は「井口勘介です」と頭を下げた。
「先代からお仕えしております」 
愛嬌のある顔ではない。薄くなりかけた頭の下に丸い鬼瓦が鎮座している。どこかムスッとしているようだ。 
そしてその『お仕えしている』という時代錯誤な言い回しに、犬のような実直さを垣間見た気がした。 
女将の名前は戸叶千代子といって、
この温泉地である松ノ木郷で五つあるという温泉旅館の一つである、『とかの』の三代目だということだった。


347 :未 本編1 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 22:50:28.87 ID:93PkLSJW0
この松ノ木郷は温泉地としては歴史が浅く、明治に入ってからボーリングによって湧き出したものなのだそうだ。 
その温泉旅館の中でもこの『とかの』は一番新しく、
大阪で材木問屋を営んでいた初代の戸叶亀吉氏が、こちらへ移り住んできて開いたものだという。 
一番の新顔ということに加え、よそ者ということで最初は随分苦労したそうだ。
旅館組合でも、なにかにつけ意地悪をされてきたという。 
そしてそれは、代を重ねた今になっても日陰の下で続いているという話だった。 
「私など、生まれも育ちも松ノ木ですのにね」と女将は寂しそうに呟いた。 
そのよそ者に対する意地悪も、番頭の勘介さんという存在のおかげで幾分か和らいでいるそうだ。
勘介さんの井口家は、地元の水利組合や消防団などでは中心となってきた家で、いわば松ノ木郷では顔役の一つだ。
その息子が番頭をしているというだけで、古参の旅館への睨みが利いていることになる。 
勘介さん自身も持ち前の気性で、旅館組合の寄り合いなどで『とかの』が不利になるような取り決めが持ち出されると、
真っ赤になって怒鳴りちらし、反故にしてしまうようなことも多々あった。 
勘介さんは若い時分、あまりの不良ぶりで実家から勘当されそうになっていたところを、
『とかの』の先代、つまり千代子さんの父親に諭されて、ここで働くようになったのだそうだ。 
元々なにか打ち込めることがあると真面目に取り組む性格だったらしく、
とたんに人が変わったように汗水を流すようになり、先代にも大変可愛がられた。 
それ以来、『とかの』への忠誠心たるや金鉄のごとし、という具合で、
今や娘も仲居として親子二代で働いているのだそうだ。 
ただこの情報、後半のほとんどはその娘の広子さんから後に聞き取ったもので、
当の勘介さんは、師匠と女将が応接室で話している間ほとんど口を利かずに、不機嫌そうな顔をしていた。 
「幽霊が出るという噂が立ったのは、一年ほど前からです」
とうとう本題か。
僕は緊張して膝の上の拳を硬く握った。
『とかの』の宿泊客から『夜中に幽霊を見た』という苦情が出るようになり、
その噂が狭い松ノ木郷、そして松ノ木郷のある西川町に広がるのはあっという間だった。 
それも決まって『神主の格好をしていた』と言うのだ。


349 :未 本編1 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 22:53:05.96 ID:93PkLSJW0
やがて仲居など従業員からも『見た』という証言が出始めた。
このままにはしておけないと、地元の若宮神社に相談して、お祓いにきてもらった。
しかし、一向にその出没が収まる気配はない。 
隣の地区の寺にも頼んだが、やはりどれだけ念仏を唱えてもらっても効き目は現れない。 
それどころか、夜に僧侶に来てもらった時など、
しつらえられた護摩壇の上に、それをあざ笑うかのような神主姿の霊が浮遊しているのが見える、
と言って列席者から悲鳴が上がり、読経が中断される騒ぎにもなった。 
もはや手の打ちようがなく、噂を恐れて客足は減る一方。 
幸いにして『祟られた』だの『不幸があった』だのという話はなかったため、
いっそ開き直って『神主さまの霊が現れる有り難い宿』という触れ込みで営業をするしかないのかと、
今では迷っているのだそうだ。
松ノ木では比較的新しいとはいえ、三代続いた温泉宿だ。もちろんそんなことは本意ではないだろう。
女将は暗い顔をして語り終えた。
師匠はソファーに深く腰掛け、天井を見上げるような格好で思案げな顔をしている。 
その様子に、なにか見えるのかと女将も不安そうに天井を見上げる。もちろんそこにはなにもなかった。 
それにしても、幽霊が出るという噂は旅館業にはつき物だと思うが、ここまで深刻な話になるというのは余程のことだ。
師匠は前に向き直り、左手の指の背を顎先にあてながら女将に問い掛けた。 
「あなたは見ましたか」 
「はい」 
女将は硬い表情でそれだけを口にした。 
「一回ですか」 
「いえ、何度か」 
「その、神主の霊はなにかを訴えているような感じでしたか」 
「さあ……それは分かりかねます」 
「こちらに危害を加えそうな様子ですか」 
「そう、おっしゃる方もいらっしゃいます」 
「あなたはそう感じなかったと?」 
「はい」 
師匠はこの場では自分自身のことを詳しく説明していない。
ただこうしたことの専門家だということだけが、事前に先方に伝わっているはずだった。

336 :未 本編1 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 22:15:41.13 ID:93PkLSJW0
師匠から聞いた話だ。 

大学一回生の冬。僕は北へ向かう電車に乗っていた。 
十二月二十四日。クリスマスイブのことだ。 
零細興信所である小川調査事務所に持ち込まれた奇妙な依頼を引き受けるために、
バイトの加奈子さんとその助手の僕というつましい身分の二人で、いつになく遠出をすることになったのだ。 
市内から出発するころにはかなり込んでいた車内も、大きな駅を通り過ぎるたびに少しずつ人が減ってきた。 
はじめはゴトゴトと揺れる電車の二人掛けの席に並んで腰掛け、荷物をそれぞれ膝に抱えていたのだが、
閑散としてきたのを見計らい、僕は空いた向かいの席に移動して荷物を脇に置いた。 
僕をこの旅に駆り出した張本人であり、オカルト道の師匠でもある加奈子さんは、
さっきから一体いくつ目になるのか知れないみかんの皮を真剣な表情で剥いている。 
その横では窓のサッシに敷いたティッシュの上に剥かれた皮が小さな山を作っている。 
「イブに温泉かぁ」 
頬杖をつき、特に感情を込めずに僕がそう呟くと、
その師匠はみかんの表面の白い繊維を千切れないように慎重に剥がしながら顔を上げた。 
「イブってのは、日没から深夜二十四時までのことだ。二十四日の昼間はクリスマスイブじゃない」 
「本当ですか」
「百科事典で調べてみるか」 
師匠はそう言って笑った。 
今日は天気がいい。 
それでも山肌や畑。水路。あぜ道。送電線。そして瓦屋根。
流れるように過ぎ去っていく景色には、寒々とした冬の色合いが濃い。 
今回の依頼は、以前オカルトじみた事件を解決してもらって以来、師匠のシンパになってしまったという、
ある老婦人の口利きで転がり込んできたものだった。 
北の町の市街地から離れた温泉旅館で、このところ幽霊の目撃談が相次ぎ、営業に支障がでているというのだ。 
そんなものは仮に本物だとしても、いや、ガセだったとしても、
どちらにせよ地元の神社やお寺にお願いして祓ってもらえば済む話だろう。
ところが、それが全く効果がないらしいのだ。それも目撃される幽霊というのが問題だった。 


337 :未 本編1 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 22:19:43.56 ID:93PkLSJW0
「神主?」 
「そう。神主の格好してるんだと」 
師匠はみかんにこびりついた白い繊維をすべて取り去ってなお、まだ残っていないかとじろじろと見回しながら答えた。
「小さな温泉街だ。そのあたりにあるのも、若宮神社っていう一社だけ。
 歴史はあるみたいで、先祖代々一族で神主を引き継いできてるんだけど……」 
「その神社のご先祖様が化けて出てるんですか。温泉旅館に」 
「そこなんだよ。理由がわからないんだ。
 場所も歩いて四,五十分くらいは離れてるらしいし、どうしてわざわざ旅館の方へ出てくるのか」 
「なにか因縁があるんでしょうかね」 
「それが旅館の方にも、神社の方にも全然心当たりがないらしい。
 責任を感じて今の宮司が、かなり本格的にお祓いをやったらしいんだけど、効果なし。
 依然として夜中に旅館の中を、狩衣(かりぎぬ)に烏帽子、袴姿の幽霊がさまよってるんだとさ」 
神職の服装ってのは主に三種類に分けられる、と言いながら、
師匠はティッシュの中から手ごろなみかんの皮を摘み出した。 
「まず、正装。新嘗祭とかの大祭で着る衣冠(いかん)だな。
 次に礼装。紀元祭とかの中祭で着る斎服(さいふく)だ。 
 これも頭は冠。最後に小祭、恒例式とか日ごろのお勤めで着る常装。これが狩衣に烏帽子、袴ってわけ」 
師匠が順番に指をさす三つ並べられたみかんの皮をどれほど見つめても、そんな違いを感じ取れない。 
「まあ、冠と烏帽子は、シルエットでも見た目違うから分かるよ」 
では、その日常の格好である常装で化けて出てくるところに、なにか意味があるのだろうか。 
「さあ。一番多い格好だからじゃない」
師匠はすべての繊維を取り去り、すべすべになったみかんを満足そうに眺めながら言った。 
「まあ、現地を見てみないことにはな」 
そうですね。
窓の外に目をやろうとした瞬間、トンネルに入った。 
「そういえば、最長で何日くらい向こうにいるんですか」 
自分もそうだが、師匠の荷物もあまり多くない。 
「その温泉で年越しを迎える馴染み客が、何組かいるらしくてな。遅くとも二十九日までにはなんとかしたいらしい。
 まあ三日もあればなんとかなるんじゃないか」 


338 :未 本編1 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 22:25:24.66 ID:93PkLSJW0
二十四、二十五、二十六、と師匠は指を折った。 
「三日ですか」 
僕としては師匠が出向けば即解決か、解決不能かどちらかのような気がしていた。三日というのは中途半端な感じだ。
「強気に出たいけど、神主の霊が出るってのはただごとじゃない気がする。まあそれも踏まえて三日だ」 
師匠がすべすべのみかんをまるごと口に放り込んだ瞬間、トンネルを抜けた。一瞬で光が電車のなかに満ちる。 
「お、着いたぞ。西川町だ」
もぐもぐと口を動かしながら師匠が窓に張り付く。 
緩い勾配の山が四方を囲んだ盆地のような地形に出た。川が線路と平行に走っている。 
田畑が広がっているその向こうに、かすかに市街地が見える。あまり高いビルの姿はなさそうだ。 
「さあ、お化けを見に行こう」 
師匠は目を細めて嬉しそうに言った。 

古びた駅の構内から出ると、申し訳程度の小さなロータリーに一台のバンが止まっていて、
そのそばで二十代半ばとおぼしき年恰好の女性が、立ったままタバコをふかしていた。 
バンの側面には『旅館 とかの』と大きな文字で書いてあった。 
「あ、小川調査事務所のヒト?」
女性がこちらに気がついて、タバコを地面に落として踏みつけた。
チェックのシャツに、ジーンズ、スニーカーという格好。 
「私、『とかの』で仲居をしてる井口広子っての。よろしくね。あ、荷物後ろに乗っけるから」 
そう言ってバンの後部ドアを開けると、僕と師匠のバッグを荷台にひょいひょいと放り込んだ。 
スリムな体型に見えるが、意外に力があるようだ。
「まあ、乗って乗って」
僕らを収納し終わると、すぐにバンは発進した。背後の駅が小さくなっていく。 
「バスのルートを教えてもらってましたけど」 
師匠がクシャクシャになった紙を手にしながら言った。 


339 :未 本編1 ◆oJUBn2VTGE :2012/01/02(月) 22:29:00.65 ID:93PkLSJW0
「あ、そう?まあ、ちょうど私が暇だったから。それにバスだと一度役場の方へ回るから、だいぶ遠回りなのよね」
広子さんはあまり丁寧とは言いがたい口調だったが、どこかしら好感を持てるキャラクターだった。 
「ねえ、あんまり詳しく聞いてないんだけど、あなた除霊とかするヒトなの?」 
「除霊はできませんよ。ただ……」
師匠は無遠慮な問い掛けに苦笑する。
「ただ、解決するだけです」 
「ふうん」 
広子さんはバックミラー越しに後部座席の僕の方を見た。 
「そっちのコが、助手ってコ?」 
「はあ。どうも」 
会釈すると、広子さんは顔を変に中央へ寄せて笑顔を作った。思わずこちらもつられて笑ってしまう。 
それからしばらく僕らはバンの座席で揺られ続けた。 

師匠は広子さんに土地柄に関する質問をして、そのたびにしきりに頷いている。 
「とにかくど田舎よ。ど田舎。あたしもいつか絶対こんなトコ出てってやるんだから。……あ、田中屋だ」 
広子さんの視線の先には大型のバンが走っている。その後部には『田中屋』という文字。 
「あれは、うちのお隣の旅館の車。お隣っても、うちが一番辺鄙なとこにあるから、だいぶ離れてんだけど。
 うわー、団体客乗せてんじゃん」 
宿泊客用の送迎車らしい。 
広子さんは舌打ちをすると、乱暴なハンドルさばきであっと言う間に前を走る田中屋の車を追い抜いた。 
「へへーん。うちは小さいけど小回りが身上だから」 
同業者なのに、いや同業者だからか、普段からかなり仲が悪そうだ。本人は口笛など吹いている。 
いつの間にかバンは市街地から抜け、周囲に田んぼの広がる川沿いの土手を走っていた。
広子さんは窓の外に目をやりながら、「枝川っての。線路沿いの増井川の支流」と言った。 
窓から外を見ていると、大きな貯水池のようなものが前方に見えてきた。 
「ああ、あれは亀ヶ淵っていう溜め池。昔なんとかって武将が作ったんだって」 

89 :未 ◆oJUBn2VTGE :2010/12/25(土) 23:50:33 ID:ANcoT4Xq0
師匠から聞いた話だ。

匂いの記憶というものは不思議なものだ。
すっかり忘れていた過去が、ふとした時に嗅いだ懐かしい匂いにいざなわれて、鮮やかに蘇ることがある。
例えば幼いころ、僕の家の近所には大きな工場があり、
そのそばを通る時に嗅いだ、なんとも言えない化学物質の匂いがそうだ。
家を離れ、大学のある街に移り住んでからも、
どこかの工場で同じものを精製しているのか、時おり良く似た匂いを嗅ぐことがあった。
そんな時にはただ思い出すよりも、ずっと身体の奥深くに染み込むような郷愁に襲われる。
次の角を曲がれば、子どものころに歩いたあの道に通じているのではないか。そんな気がするのだ。
そんな僕にとって一番思い入れのある匂いの記憶は、石鹸の匂いだ。
どこにでも売っているごく普通の石鹸。その清潔な匂いを嗅ぐたびに、今はもういないあの人のことを思い出す。
身体を動かすのが好きで、山に登ったり街中を自転車で走ったり、
いつも自分のことや他人のことで駆けずり回っていたその人は、きっと健康的な汗の匂いを纏っていたに違いない。
けれど、僕の記憶の中ではどういうわけか、いつも石鹸の匂いと強く結びついている。

その人がこの世を去った後、その空き部屋となったアパートの一室を僕が借りることになった。
殺風景な部屋に自分の荷物をすべて運び込んで梱包を解き、一つ一つあるべき場所に配置していった。
その作業もひと段落し、埃で汚れた手を洗おうと流し台の蛇口を捻った。
コンコンコンという音が水道管の中から響き、数秒から十秒程度経ってからようやく水が迸る。
古い水道管のせいなのか、その人がいたころからそうだった。
その人はよく僕に手料理を作ってくれた。
そう言うと妙に色気があるように聞こえるが、実際は『同じ釜の飯』という方が近い。
兄弟か、あるいは親しい仲間のような関係。それが望ましいかどうかは別として。
その人は台所に立つと、まず真っ先に手を洗った。石鹸で入念に。
だから食事どきのその人は、いつもほのかな石鹸の匂いを纏っていた。


90 :未 ◆oJUBn2VTGE :2010/12/25(土) 23:52:34 ID:ANcoT4Xq0
今でも爽やかなその匂いを嗅ぐと、あのころのことが脳裏に蘇る。
痛みや焦り、歓喜や悲嘆。絶望と祈り。僕の青春のすべてが。
蛇口を捻り、水が出るまでの僅かな時間。その人は乾いた石鹸を両手で挟み、そっと擦り合わせていた。
その小さな音。それを僕は背中で聞くともなしに聞いている。ささやかなひと時。
戻れない過去はなぜこんなに優しいのだろう。
その人がいない部屋で、僕は一人蛇口から落ちていく水を見つめている。手には無意識に握った石鹸。
指の間から滔々と水は流れ落ちる。ほのかに立ち上る涼しげな匂い。
僕は蘇る記憶の流れに、しばし身を任せる。



寒い日だった。昼過ぎから僕はある使命を帯びて、オカルト道の師匠が住むアパートに乗り込んだ。
十二月も半ばを過ぎ、街中を、いや目に映る全てを一色に、いや、二色に染めているイベントが目前に迫っていた。
赤と白だ。なにもかもが。
それに伴い、僕にも焦りと若干の期待が入り混じった感情が押し寄せていた。
ドアをノックすると、赤でも白でもなく青い半纏を来た師匠が玄関口に現れて、じっと僕のことを見つめる。
いや、見つめているのは僕の手元だ。つまりスーパーの袋である。
「コロッケが大量に安売りしてたので、一緒にどうですか」と言うと、入れとばかりに顎を軽く振る。
部屋に上がらせてもらうと、炬燵布団に人型の空洞が出来ている。
その向かいに腰を下ろして足を入れ、袋からコロッケのパックを取り出す。
師匠は台所から小ぶりの鍋を持って来て、「甘酒だ」と炬燵のテーブルの上に置いた。
鍋の中には白くてどろどろしたものが、ほのかに湯気を立てている。生姜の香りがした。
お椀にとりわけてくれたそれを、コロッケを齧る合間に啜る。
ここ数日でめっきり冬らしくなったものだ。
朝方、路上に止まっていた車のフロントガラスに、霜が降りていたことを思い出す。
「こっちが普通ので、こっちがカボチャ、こっちがクリームコロッケです」
カボチャコロッケに手を伸ばす師匠を横目に、
床に散らばっている雑誌を手に取り、見るともなしにパラパラとページを捲る。


91 :未 ◆oJUBn2VTGE :2010/12/25(土) 23:54:40 ID:ANcoT4Xq0
『クリスマス、どうするんですか?』
それをなかなか口に出せないまま、特に会話らしい会話もなく穏やかな時間が過ぎて行く。
コロッケを三つ平らげた師匠は甘酒を片付け、ふんふんと鼻歌を奏でながら、テーブルに向かって何かを書き始めた。
気になったので首を伸ばして覗き込むと、年賀状のようだ。
万年筆で書かれた新年の挨拶の横に、かわいらしいヘビの絵が見えた。
来年は巳年だっただろうかと一瞬考えたが、そんなはずはなかった。
「そのヘビはなんですか」
「うん?この子はカナヘビちゃんだ」
顔を上げず、師匠はペンを動かしながら答える。
どうやら干支を表す動物ではなく、自分の署名代わりのキャラクターらしい。加奈子という名前と掛けているのか。
そう言えばバイト先の興信所でも、彼女が作成した報告書の端に、こんなヘビの絵を見たことがあった気がする。
にっこり笑ったヘビが、二又に分かれた舌をチロチロさせながら、三重にトグロを巻いている絵だ。
「カナヘビちゃんですか」
「そう」
一枚書き終えて、師匠は次の宛名書きに移る。
「でもカナヘビって、トカゲの仲間じゃなかったですか」
ふと沸いた疑問を口にすると、「え?」と師匠が始めて顔を上げた。
「ヘビだろう」
「いや、ヘビって付いてますけど、確かトカゲだったような……足もあったはずですよ」
うろ覚えだが、なんとなく自信があったので言い張ってみる。
師匠は納得いなかい表情で、自分の書いた絵を見つめている。
なんだか、キクラゲはクラゲなのか海草なのかで、言い争いをしたことを思い出してしまった。
その時は勝者のいない戦いだったが、今度はどうだろうか。
「カナヘビがトカゲぇ?」と鼻で笑いながら呟く師匠に、僕は「確かめてみましょうか」と言って立ち上がる。
玄関に向かい、靴をつっかけて外に出ると、冷たい風が顔に吹き付けてきた。
身体を縮めて、小走りにアパートの右隣の部屋の前まで行く。


92 :未 ◆oJUBn2VTGE :2010/12/25(土) 23:59:03 ID:ANcoT4Xq0
ドアをノックすると、「はい」という声とともに部屋の主が顔を覗かせる。
卵のようにつるんとした顔に、細い目と低い鼻、そして薄い唇が乗っかっている。
小山だか中山だか大山だか忘れたが、確かそんな感じの名前の人だった。
「どうしました」
「百科事典を貸してくれませんか」
この師匠のアパートの隣人は、普段なにをしている人なのかさっぱり分からないが、
しばしば師匠の部屋に、食べ物をたかりに来たりしていた。
師匠は基本的に追い返しにかかるのだが、当人はいたって平然と師匠の容姿を誉めそやし、口先三寸で丸め込んで、
最終的にただでさえ乏しい食料のその何分の一かをせしめるという、奇妙な人物であった。
僕は以前その彼の部屋に上げてもらった時に、百科事典が詰め込まれた棚があったことを覚えていた。
「かまいませんが、アカサタナで言うと、どこをご所望ですか」
「カ、の所をお願いします」
そう言って売れ残りのコロッケを差し出す。
「しばしお待ちを」

そうして首尾よく百科事典を借り受け、師匠の部屋に戻ると、
さっそくカナヘビのことが出ているページを開いて見せた。
小さな写真が付いている。その姿からして一目瞭然にトカゲである。
説明文を読むと、「有鱗目トカゲ亜目トカゲ下目カナヘビ科」とある。
よくは分からないが、ようするにトカゲのようだ。
写真を見る限り、普通のトカゲと比べると鱗が妙にカサカサとして油気がない印象だった。
だがもちろん手足はあるし、ヘビとは明らかに違う。
「トカゲじゃないですか」
「……」
師匠は何ごとか反論しようとしたようだが、
百科事典の背表紙を見て、それが有名な出版社のものであることを確認するや、諦めたように嘆息した。
「はいはい。私が間違えておりました。あほでした。これで良いのでございましょう」
そう言って自分の描いたヘビの絵に、申し訳程度の小さな足を四本書き添えた。
トグロを巻いたままなのでバランスが非常に悪い。
というか、手などは一見二本並んでいるのだが、よく見るとトグロの別の段から出ている。冒涜的な生物だ。
その絵に対する突っ込みを入れる前に、ふと思った。
百科事典の記事なのに、出版社次第では何か言い訳するつもりだったのかこの人は。
拗ねた様にうつむいて年賀状の続きを書き始めたのを見て僕は腰を上げ、百科事典を返しに行った。


94 :未 ◆oJUBn2VTGE :2010/12/26(日) 00:01:42 ID:eIOkk7GA0
ドアを叩くと、小村だか中村だか大村だかという名前の隣人がにゅっと顔を出す。
「コロッケの何をお調べになったのです」
「いえ、確かにカ行ではありますが、コロッケを調べたんじゃありません」
「そうですか。カボチャコロッケもクリームコロッケもカ行ですから、私はてっきり。そうですか。
 そう言えば、昨日お隣を訪ねて来られた男性のお名前も、カ行から始まったような」
「もっといりますか、コロッケ」
「あ、すみません。こんなに」
「で、その男とは」
「最近またよく見るようになった方ですよ。あの背の高い」
やつか。
暗鬱な気分になった。状況をもう少し詳しく聞いたが、その気分に拍車をかけただけだった。
「あげます」
「え。全部。すみませんねどうも。これで年を越せそうです」
卵のような頭を丁寧に下げるのを呆然と見下ろしてから、師匠の部屋に戻る。

その本人は万年筆の先をペロリと舐めながら、真面目くさった顔でテーブルに向かっていた。
僕は身体にこびり付いた冷気を振り払うように玄関口で服の裾を直すと、うっそりとコタツに入った。
「クリスマス、どうするんですか」
なんだかどうでも良くなってきて、本題を口にした。
「は?」
師匠は頭がすっかり正月へ飛んでいたのか、その単語の意味が一瞬理解できないような表情をしたが、
すぐに笑い始めた。
「おまえ、クリスマスなんか信じているのか」
小馬鹿にしたような声。
いや、まて。なにかおかしい。
「サンタクロースならともかく、クリスマスを信じるっていうその概念がおかしくないですか」


95 :未 ◆oJUBn2VTGE :2010/12/26(日) 00:03:58 ID:eIOkk7GA0
まさか、サンタどころかクリスマスというイベント自体を迷信だと親に吹き込まれてきた可哀想な子だったのか、
師匠は。
「ただの言葉の綾だ」
そう言ってまだ笑っている。
なんだか、クリスマスを前に焦っているこちらの腹の内を読まれたような気がして、恥ずかしくなった。
「そう言えば、クリスマスにまつわる怪談話があるよ」
「どんな話ですか」
「実話なんだけど」
と言って師匠は、コタツの中でゴソゴソ動いていたかと思うと、脱いだばかりの靴下を床に置いた。
「おととしだったか、その前だったか、クリスマスイブに一人でいたんだよ。この部屋に。やけに寒い日だったな。
 サンタでも来ねえかなあと思って、枕元に靴下を置いといたんだ。こんな風に。
 寝る前にちゃんと戸締りして、よし、これで朝起きて靴下になにか入ってたら、サンタ確定だと。
 もちろん冗談のつもりだ。まあイベントごとだし、気分の問題だから。で、寝たわけ」
え……そこから怪談になるって、どういうことだ。まさか。
ドキドキしながら聞いていると、師匠は床に置いた靴下を手に取る。
「朝起きたら、入ってるんだよ」
「うそでしょう」
急に鳥肌が立った。思わず声が大きくなる。
「いや、本当だ。入ってたんだよ、私の足が」
師匠は真剣な表情のまま口元を押さえる仕草をする。
力が抜けた。
「寒かったせいかな。普段は冬でも靴下履かずに寝るから、寝ぼけて履いちゃったらしい」
からかわれたと知って、腹が立ってきた。「もういいです」と言って、コタツに入ったまま後ろに倒れこむ。
「いや、私からしたら結構怖かったんだって」と言い訳をしていたが、やがて静かになった。
再び万年筆が紙の上を走る音。

しばしの間考えごとをした後、天井を見ながらぼんやりと言った。
「一昨年はそれとして、今年のイブはどうなんです」
ペン先の音が止まった。


96 :未 ◆oJUBn2VTGE :2010/12/26(日) 00:08:33 ID:eIOkk7GA0
二回訊いたのだ。いくらこの人でも、どういう意味で訊いているのか分かっただろう。
顔は冷たく。足は温かい。
わずかな沈黙の後で、「お泊り」という単語が出てきた。
「あ、違った。お泊り」
二回言った。
その二回目は一音節ごとに区切り、しかもくねくねした動きがついていた。
「そうですか」
もういいや。帰ろう。
そう思った時、師匠が意外なことを言った。
「おまえも来るか」
「ハァ?」
思わず跳ね起きた。どうしてそうなるのだ。
僕の動きに驚いたのか、師匠の身体がビクリと反応する。
「いや、そんなに良い所じゃないぞ。鄙びた温泉宿だ」
「行きます」と取り合えず即答しておいてから、疑問を口にする。
「なんでクリスマスイブに温泉なんですか」
「それには深い事情があってだな」と師匠がもったいぶりながら話したところを要約すると、要するにバイトだった。
小川調査事務所という名前の興信所で、師匠は調査員のバイトをしているのだが、
中でもオカルト絡みの妙な依頼を専門に請け負っていた。
たった一人の正職員にして兼所長の小川さんにしても、
そうした怪しげな依頼を積極的に求めているわけではないのだが、
今までに師匠が携わったケースの関係者からの口コミで、日増しにそんな仕事が増えつつあった。
そしてそんな口コミの大半を担っていると思われるお婆さんがいるらしいのだが、
その人の紹介でこの年の瀬に転がり込んできた依頼だった。
「婆さんが贔屓にしてる馴染みの宿、ということだけど、どうも出るらしいんだな」
「出る、とは、あれですか」
「うん。これが」
師匠は両手首を引き付けてから胸の前で折った。目を細めて、にゅっと舌も出す。
「そんなに大きな旅館じゃないみたいだけど、毎年正月をそこで過ごすお得意様が何組かいるらしくてな。
 その前に、つまり年内にどうにかしたいんだと」


97 :未 ラスト ◆oJUBn2VTGE :2010/12/26(日) 00:10:48 ID:eIOkk7GA0
「お祓いとかしても駄目だったんでしょうか」
「ああ。駄目だったらしい。そのあたりがちょっと訳ありみたいでな。詳しくはまだ聞いてないんだけど」
僕は指を折ってみた。年末までそれほど猶予がない。だからクリスマスに泊り込みで仕事が入っているのか。
でもどうして、僕にあらかじめその話が来なかったのだろう。
零細興信所である小川調査事務所の、バイトの助手という立派な肩書きがあるというのに。
「さすがに十代の若者に、クリスマスに仕事しろとは言えないからなあ」
「そんな……」
あなたと一緒にいなくて、なんのクリスマスか。とはさすがに言えなかった。
「じゃあ助手を一人連れて行くって言っとくから」
師匠はそれだけを告げると、また年賀状を書く作業に戻った。僕はそれを見て「そろそろ帰ります」と立ち上がる。
クリスマスイブに師匠と二人、田舎の温泉宿でお化け退治か。
真冬だというのに、身体の芯に火が入ったような感じがした。僕は半ば無意識に小さく拳を握る。
それを見た師匠が、「やる気だな。よろしく頼むよ」と気の抜けたような声で言った。

776 :先生  後編 ◆oJUBn2VTGE:2009/09/04(金) 23:10:30 4o0HgrnU0 
ぶつぶつと言うと、「エッヘ」と腰を上げ、じいちゃんと同じように部屋から出て行った。 
取り憑かれていた?僕が?
色々なことが頭を駆け回りすぎて、ガタガタと身体が震えた。
そして、知らないあいだに涙が流れていた。 

僕の風邪はただの風邪だった。感染性の恐ろしい病気などではなかった。 
すっかり身体が良くなっても、僕はあまり外には出なかった。
家にこもって宿題をやり、全部片付けてしまうと、今度は公民館にある図書室で本を借りて読んだ。 
シゲちゃんや病院から戻ったタロちゃんなんかが遊びに誘ってきても、あんまり気が乗らなかった。 
それでも、ダンボールで作ったスーパーカーに乗り込んで遊ぶ仲間たちを見ていると、
みんなあんまり出来が悪いので居ても立ってもいられなくなり、カッコいいフェラーリを作成して参戦した。 
ただぶつけて遊ぶだけなのだが、フェラーリの輝くボディに恐れをなしたやつらが逃げ回るのは気持ちが良かった。
最後はシゲちゃんと一騎打ちになって、とうとう負けてしまった。 
シゲちゃんのボディには、『ダンボルギーニ・カウンタック』とマジックインキで書いてあった。やっぱりかなわない。

そんな風に僕は少しずつ元気になっていったけれど、鎮守の森には近づかなかった。
『もう行くでない』とじいちゃんに言われたこと、そして、先生自身に『きてはいけない』と言われたことを、
自分への言い訳にしていたのかも知れない。
考えないようにしても夏は終わる。僕にも帰るべき本当の家があり、学校がある。
このまま目を閉じ、耳を塞いだままには出来なかった。ケジメだと思ったのだ。案外律儀な子どもだったらしい。 
明日にもお世話になったシゲちゃんの家からおいとまするという日。僕は鎮守の森へ、一人で入っていった。 

あいかわらず耳の痛くなるような蝉時雨の中、薄暗い葉陰の下を黙々と歩く。
神社の参道を横目に、道の奥へと足を進める。
雨がほとんど降らないので、柔らかい土についた足跡が汚らしく残っているのが目に付く。


778 :先生  後編 ◆oJUBn2VTGE:2009/09/04(金) 23:16:23 4o0HgrnU0 
みんな僕の足跡のようだった。僕はそれを見ながら思い出す。
あの日、初めてこの森を抜けた時、神社より向こうには誰の足跡もついていなかったことを。 
よく考えるとおかしい。
先生が言っていたように、僕らの村と森の向こうの集落との間には、この鎮守の森を抜けるほかに道がないのであれば、
人の足跡がたくさんついているはずなのだ。
役場だって郵便局だって、森のこっち側にしかないのだから。 
そんな綻びを見つけられないまま、僕は知らず知らずのうちに、この世の裏側に足を踏み入れていたのだろうか。 

俯き加減で黙々と歩き続け、暗い木のアーチを抜けると青空が頭上に広がった。 
同じだ。緑の畦道。畑。蛙の鳴き声。空を横切るツバメの羽の軌跡。
目の前の光景に一瞬目を細めて、そしてやがて気づく。 
畦道に雑草が生い茂っていること。畑にも雑草が生い茂っていること。蛙の鳴き声はずっと小さいこと。
山の中腹に見える民家は屋根に穴が開き、とても人が住んでいるようには見えないこと。 
そして同じことが一つ。電信柱も電線もどこにも見えない。 
僕はふらふらと畦道を歩く。絡まる草を踏みつけながら坂道の前に着いた。
なだらかに続き、見上げるとその向こうには古ぼけた瓦屋根がある。汗を振り払いながら僕は坂を登る。 
途中で振り返り集落を見下ろす。誰もいない。
動くものの影と言えばツバメばかりだ。所々に白い花が咲いている。 
僕は広場に着く。校庭と呼ばれて、初めてそうであると気づいたはずの場所は、今はそう言われても分からない。
朽ちた木片が散乱する荒れ果てた広場だった。 
そしてその向こう。僕が毎日見上げていた校舎は、黒く変色して酷く歪んでいる。
壁にはいたる所に穴が開き、ささくれ立った木片がギザギザに突き出ている。
向かって左下、小さな母屋があった場所には、焦げたような跡と瓦礫の残骸があるだけだった。 
僕は目の前の光景が意味するもののことを考える余裕もなく、
ふらふらと夢遊病のように、玄関口に吸い込まれていった。 

中はさらに酷い有様で、煤と穴と木切れの山だった。
下駄箱の残骸の横を通り抜け、靴のまま校舎の廊下に上がる。
蜘蛛の巣を払い除けながら階段に足をかけると、バキッと音がして底が抜けそうになった。 


779 :先生  後編 ◆oJUBn2VTGE:2009/09/04(金) 23:20:18 4o0HgrnU0 
すぐに足を引っ込め、大丈夫そうな場所を何度も体重をかけて確かめながら、一段一段登っていった。 
ボロボロの壁に手をついて、手のひらを真っ黒にしながらようやく二階に辿り着くと、僕は首をめぐらせる。
六年生と書いてある白い板はどこにも見あたらない。
ただ朽ち果てた木の床と壁が作り出す、灰色の廊下が伸びていた。
僕はゆっくりと歩き、いつか先生が手を振って迎えてくれた教室へ足を踏み入れる。 
その瞬間、クラクラと頭が揺れた。
五つあり、先生がもう一つ運んできてくれたので、全部で六つになったはずの机は、一つもなかった。
ただ木の残骸が、教室の隅に無造作に折り重ねられているだけだった。 
教壇には大きな穴が開き、黒板があった場所には煤けた壁だけがある。 
なんだろうこれは。なんだろう。いったいなんだろう。これは。 
そうだ。ハリボテなのだ。本物の上に被せられたハリボテ。よく出来ている。
これならみんな騙せる。じいちゃんだって、シゲちゃんだって、僕だって。 
そしてこれから、それは勝手にすり替わるのだ。
本物の教室には先生がいて、僕の知らない遠い国の物語を話して聞かせてくれるのだ。 

……なにも起きなかった。
僕はずっと待っていた。それでもなにも起きなかった。 
ふと、窓の方を見た。折り紙の鶴でいっぱいだった窓には、もうなにもぶらさがってはいない。
足を引きずるようにそちらに近づく。
先生がいつも頬杖をついていた窓際に僕も立った。窓枠は腐ったように抉れていて、とても肘をつけそうにない。 
僕は先生がいつも、ふいに遠くなったように感じたことを思い出す。
そんな時先生は、いつもぼんやりと窓の外を見ていた。思えば初めて会った時だってそうだ。 
何度も先生を呼び、ようやく気づいてくれた時、ぱちんという感じに世界が弾けた。
その瞬間に、僕と先生の世界がつながったのだ。 
先生はいつも白い花柄の服を着ていた。清潔なイメージにそぐわない、同じ服だったような気がする。
捨てられた校舎の中で、学校の先生の時間は止まったままだったのだろうか。 


783 :先生  後編 ◆oJUBn2VTGE:2009/09/04(金) 23:24:49 4o0HgrnU0 
いつか珍しく雨が降ったことがあったけれど、鎮守の森を抜けると晴れていたということがあった。 
小雨だったから、ちょっと不思議に思ったくらいだったけど、
たとえ嵐がやってきても、あの森の向こうは晴れたままだったのかも知れない。 
ジワジワと蝉が鳴いている。どこか虚ろな声だった。
別の世界の気配はどこにもない。もう僕には見えない。見えなくなってしまった。 
僕は立ち尽くし、ぼうっと窓の外を見ていた。 
先生が見ていたものを、無意識に探していたのかも知れない。目の端に校庭の広場の隅が入った。
先生はいつもそこを見ていた。同じ場所を。あそこにはなにがある?
僕は振り向くと早足で教室を出た。ミシミシと廊下が軋んで嫌な音を立てたけれど、足は止まらなかった。
階段を半分壊すように駆け下り、玄関を出て広場に向かった。

廃材の山をスルスルと避けながら、その隅っこにひっそりと立つ木の根元に走り寄った。 
かつて花壇があったのだろうか。黒い土が盛られている一角だった。
その土の上に木の板が一本突き立っている。
それがまるで墓標のように見えて、胸がドキンとした。
板にはなにか書いてあったが、雨で流れたのかもう読めなかった。 
僕は木切れを拾ってきて、土を掘り始めた。 
真上に昇った太陽が僕の影を地面に焼き付ける。ポタポタと汗が落ちて、それがシュンシュンと土に吸われる。
掘り返された土が周囲に盛られて行く中、木切れの先になにかが当たる感触があった。 
膝をつき、両手で土を掘る。指の先に触れたものは、頭をよぎったような白い骨ではなかった。 
ボロボロになった布袋が、土を被って現れてきたのだ。 
口のあたりをつまみ上げ、土を払おうとした途端にボソボソと布袋の底が抜けて、黒く汚れた中身が地面に落ちた。
それは折り紙だった。折り紙の鶴だ。ぐしゃぐしゃになり、ぺったんこになり、土にまみれて色あせた鶴だった。 
その時、こみ上げてきたものに耐えられなかった。 

誰もいない廃墟のような校庭に立っていた。
幻も見えなかった。なに一つ見えなかった。どうしてもう見えないんだろう。 
けれど僕は想像する。そこにいるつもりで想像する。
僕のそばに先生が立っている。透明になって立っている。僕の肩に手を置いている。
困ったような、はにかんだような、優しい顔で。 
風が顔に吹き付けて、それは消える。綺麗に、跡形もなく。 
涙を流しきって、僕はぼやける視界で手元を見る。
千羽はいないけれど、千切れかけた糸にぶら下がってたくさんの鶴が揺れていた。 
その中に、僕は不思議なものを見つけた。 
それは不格好に歪んでいる鶴で、胴体は傾き、顔なんか横を向いてしまっている。
けれど一つだけ、たった一つだけ格好いい部分があるのだ。 
僕は手を高く上げ、その鶴の、戦闘機のように端がくいっと立っている羽を空に翳して、切っ先が風を切る音を聞いた。
夏の終わる匂いをかいだ気がした。 


784 :先生  後編 ◆oJUBn2VTGE:2009/09/04(金) 23:26:15 4o0HgrnU0 
そっと、辞典を閉じる。 
小さなころの記憶が夢のようにあふれて、そして消えていった。 
辞典を本棚に戻し、大学の図書館にいたことをようやく思い出す。
柔らかい床が色んな音を吸い取って、あたりはやけに静かだ。 
少しのあいだ目を閉じて、ゆっくりと大学生の自分を取り戻す。 
ふと、シゲちゃんはどうしているだろうかと思った。随分会っていない。相変わらず親分をしているだろうか。 
洞窟の顔入道も笑ったままだろうか。
その奥の、誰も入れない密室の中にいるというお坊さんの即身仏は、今も山に彷徨う死者の霊を弔っているのだろうか。
あのころのことを思い返すと、不思議なことがまだいくつかある。 
先生の年代であれば、高校から大学へという学歴がおかしいのだ。
おそらく、高等女学校から高等女子師範学校か、女子大とは名ばかりの私立学校へ上がったのではないかと思うのだが、
そのころの僕の思っていた、高校、大学という言葉で通じていた、というのがよく分からない。


785 :先生  後編 ◆oJUBn2VTGE:2009/09/04(金) 23:27:54 4o0HgrnU0 
ほかにも時代的な素地が違うため、きっと噛み合わない部分があったはずなのだ。けれどそんな覚えはない。
会話はスムーズだったと思う。
もしかすると、交わしたと思っていた会話さえ、本当は存在しなかったものなのかも知れない。 
ただつかのま、うつろな世界のはざかいで、魂が触れあい、重なり合い、そして響きあっただけなのかも知れない。
その小学校最後の夏休みが終わり、新学期が始まった時、
僕は算数の成績がぐっと上がっていて、担任の先生を驚かせた。
もっと後で世界史を習った時には、もう忘れてしまっていたけれど。 
ふ、と笑いが漏れる。 
本棚に戻した辞典の背表紙を見つめる。 
全く関係のない調べ物をしていたのに、
ふと目に止まった頁に、長い時間を隔てた最後の謎の答えがあっけなく転がっていた。
そしてそれは、僕をひと時の追憶の彼方へと誘ったのだ。 

【結核】 学名tuberculosis
結核菌によって引き起こされる感染症。呼吸器官やリンパ組織、関節や皮膚など発祥する器官は多岐にわたる。 
なかでも代表的な肺結核は日本においては古来より労咳と呼ばれ、罹患者も多く死病として恐れられていた 
…… 中略 ……
医師の使用する略称であるTB(学名から)が民間においても広まり、隠語的にテーベーと呼称されることも…… 

あの日の教室で、アテネをアテナイとしないのに、テーベだけをテーバイと書き直した先生の重く沈んだ背中が、
昨日のことのように瞼の裏に蘇る。 
あの時の先生は、自分が幻であることを知っていたのだろうか。
そして幻を見ている僕のことを、どう思っていたのだろう。 
あれから何度か別の年に、鎮守の森を抜けてあの廃校に足を向けたことがある。
けれどただの一度も、先生には会えなかった。 


786 :先生  後編 ラスト ◆oJUBn2VTGE:2009/09/04(金) 23:31:03 4o0HgrnU0 
また会いたいかと言われれば、今では躊躇してしまう。
先生に言われたとおりに、目を開けていられたかどうか不安なのだ。
あのころの僕が思っていたよりもずっと、あまりに底知れない悪意がこの世には満ちているのだから。 
中学三年生のころ、あの廃校が取り壊されたという話を聞いた。
大規模な工事で、大きな道が抜けたらしい。あの捨てられた集落を飲み込んで。
僕がその場に埋め直した折り鶴たちも掘り返され、そしてもっと深く埋められてしまっただろうか。 
僕はあのボロボロの折り鶴の中に、埋もれるようにして一枚の紙が混ざっていたことを思い出す。 
それはどこかで見た筆跡で、詩のようであり、誰かへ宛てた手紙のようであった。
僕はそれだけを持ち帰って、やがてその紙で折り鶴を作った。 
実家に帰った後、しばらく僕の部屋の窓際に吊されて揺れていたけれど、いつの間にかどこかへ行ってしまった。
幼き日の記憶のつどう、リンボ界のどこかへ。 

目当ての本を探し当て貸出しの手続きをしてから、それを小脇に抱えて図書館を出ると、
顔が切られるような冷たい風が吹き付けてきた。
真冬だった。
すっかり夏のような気がしていたのに。 
僕は苦笑して、コートの襟を寄せた。

764 :先生  後編 ◆oJUBn2VTGE:2009/09/04(金) 22:37:14 4o0HgrnU0 
先生が手を振る。僕も手を振る。
そして、出会ってから一度も、先生が学校の外に出ていないことを思い出す。 
カンカンと太陽は照りつけているのに、校舎の古ぼけた瓦屋根がやけに色あせて見えた。
坂を下りて行くと、だんだん学校が見えなくなる。僕は手を下ろし、畦道を通り、森へ向かう。 
鎮守の森は、いつになく暗く湿っている。
真っ暗で、夜そのもののような木のアーチを抜け、黒い土の道を踏みしめる。
頭がぼうっとしてくる。気分が悪い。 
神社の参道の前を通る。いつもは通り過ぎるだけなのに、何故かふらふらと入ってしまう。
ギャギャギャギャギャと、鳥の泣き声がどこからともなく響く。 
お賽銭箱に、ポケットに入っていた十円玉を投げ入れる。チリンという音がする。僕は手を合わせる。
先生の風邪がよくなりますように。みんなの風邪がよくなりますように。 
そして参道を戻る。鳥居の下をくぐる。そう言えば、前に通った時にはくぐらなかったことを思い出す。
なにかが頭の中を走りぬける。時間が止まったような気がする。
いや、違う。止まっていた時間が、今動き出したのだ。 

ぐるぐる回る頭を抱えて森を抜け、どうやって帰ったのかよく覚えていないけれど、
次に気がついた時は、イブキの見える庭に面した部屋の中で、
僕は布団に入りびっしょりと汗をかいて、ウンウン唸っていた。 
熱が出て、僕は二日間横になったままだった。夢と現実の境目がよく分からなかった。
色々なものが嵐のように駆け抜けて行った。 
ぬるくなった額の濡れタオルを、時々誰かが換えてくれた。
それはおばさんだったような気もするし、ヨッちゃんだったような気もする。
咳はあんまり出なかった。ただ鼻水がやたらに出た。鼻紙をそこら中に散らかして、僕はふうふう言い続けた。 

ようやく熱が引いた三日目の朝、目を覚ました僕の隣にシゲちゃんが座っていた。 
「もうほとんど平熱じゃ」と言って、僕からタオルを取り上げる。
横になったまま文句を言う僕と何度か軽口を応酬し、それからすっと黙った。 
外は良い天気のようだ。考えると、この村にいる間、雨なんかほとんど降っていない。
ふと、畑の野菜は大丈夫だろうかと思った。 


772 :先生  後編 ◆oJUBn2VTGE:2009/09/04(金) 23:01:33 4o0HgrnU0 
やがてシゲちゃんは、決心したように閉じていた口を開く。そして、あの顔を変えたのは自分だと言った。
僕は知ってたよと言う。驚いた顔。 
すべては先生の推理の通りだった。
失敗にもへこたれないシゲちゃんが、あんなにも元気がなかったのは、自分のせいで友だちに大怪我をさせてしまったからだ。
だけど、僕も知らなかったことが一つ。
シゲちゃんは事件の翌日、顔入道の上に貼ったもう一つの顔を剥がした後で、
一人で隣町の病院まで歩いて行ったのだそうだ。タロちゃんへのお見舞いだ。 
病室のベッドでぐったりしていたタロちゃんは、もちろんシゲちゃんの仕業だってことをもう分かっていて、
それでも怒りもせず、変に照れくさそうな顔をして苦笑いを浮かべた。 
腰を抜かして逃げ出したなんてこと、恥ずかしいから誰にも言わないでくれと、そう言って頭を掻くのだった。 
だからシゲちゃんは、大人に何を聞かれても黙って怒られているんだ。
僕はシゲちゃんがもっと怒られるのが怖くて、自分の仕業だということを隠しているんだと思っていた。 
潔く責任を取ることが親分のあるべき姿だと思って、失望をしかけていたのに、
シゲちゃんはタロちゃんの心情を考えて、最初からすべてを飲み込んでいたのだ。 
やっぱりシゲちゃんは立派な親分だった。イタズラ好きさえなければだけど。 
「先生ってな誰のことじゃ」
突然シゲちゃんがそう言った。僕がうわごとで口にしたらしい。
しまった、と思った。なにを口走ったんだろう。
そう言えば、熱を出してる時に先生に会ったような気がする。 
ここにいるはずがないのに。でもここにいるつもりになって、先生に話し掛けてしまったのかも知れない。 
ああ。すべてに知恵が回るシゲちゃんのことだ。へたな言い逃れは余計なやっかいを生むかもしれない。 
僕は観念して、鎮守の森の向こうの集落のこと、そして夏休み学校のことを話した。
自分でももう、コソコソするのは潮時のような気がしていた。
話している内に、気分が晴れやかになっていくことに気づいた。


774 :先生  後編 ◆oJUBn2VTGE:2009/09/04(金) 23:04:03 4o0HgrnU0 
こんなにも先生のことを、誰かに話したかったんだ。自慢したかったんだ。 
そう思いながらシゲちゃんの顔を見ると、怪訝そうな表情で首を傾げている。 
「まだ熱があるようじゃ」
シゲちゃんは「鎮守の森の向こうにはなにもない」と言った。 
そして「寝とれ」と、僕に取り上げていたタオルを投げてよこし、部屋から出て行った。 
僕は狐につままれたような気になり、
どうしてシゲちゃんはまだ嘘をつくんだろうと、イライラしながらまた眠りについた。 

どれくらい眠っただろうか。誰かが部屋に入ってくる気配がして、僕は目を覚ます。
襖を閉めて布団のそばにやってきたのはじいちゃんだった。 
「鎮守の森の向こうに行ったのか」とじいちゃんは聞いてきた。シゲちゃんから聞いたようだ。
「そうだ」と僕が口を尖らすと、いつになく難しい顔をして、腕組みのまま胡坐を掻いた。 
そして、僕の耳は信じられないことを聞いた。
あの集落はじいちゃんが子どものころに恐ろしい病気が流行って、みんなバタバタと死んでしまい、
残った人々も集落を捨てて散り散りになり、今では誰もいない集落の跡だけが打ち捨てられているのだという。 
そんなわけはない。だって僕は現にその集落に行ったのだし、現に先生に会ったのだし、現に……
ハッとする。
僕はその時、あの森の向こうの空間には、のどかな山間の集落が確かに存在したけれど、
先生以外の人間に出会っていないことに、今更のように気づいた。 
校舎の隣の家にいるという先生のお母さんも、僕のほかに四人いるという夏休み学校の生徒も、
結局誰一人として見ていない。
でも、本当にそんな捨てられた集落だというのなら、どうして先生はあんなところに一人でいたのだろう。
そして、どうして嘘をついていたのだろう。 
分からない。考えていると、また熱がぶりかえしてきそうだ。 
「その病気って、なに」 
ようやくそれだけを言った僕に、じいちゃんはムスッとしたまま答えた。 
「結核じゃ」


775 :先生  後編 ◆oJUBn2VTGE:2009/09/04(金) 23:07:21 4o0HgrnU0 
結核。 
テレビで見たことがある。昔のドラマで、療養所に入っている女性が咳をしていたのが思い浮かぶ。 
「肺結核でな。診ることのできる医者がおらんかった」
風邪が流行っているのよ。
風邪が流行って。
咳だ。咳。先生も咳をしていた。どういうことなんだ。 
わけが分からず、僕はその言葉を何度も頭の中で繰り返す。 
じいちゃんはそんな僕から視線を逸らして立ち上がり、部屋から出て行こうと襖に手をかけてから、思い出したように言った。
「わしらが、顔入道さんの怒った顔を見たのも、そのころじゃ」 
もう行くでない。
ピシリ。襖が閉まる。 
わけが分からない。いや、僕の頭のどこか隅の方では分かっている。ただ、分かりたくないのだった。僕自身が。 
頭を抱えていると、少ししてまた襖が開かれ、今度はおかゆをお盆に乗せてばあちゃんが入ってきた。 
僕はばあちゃんにすがるように訴える。
「でも、先生は知ってた。大きなイブキの庭のある家って言っただけで、シゲちゃんって」 
ばあちゃんは、はいはいと子どもをあやすように僕の手を掻い潜って、お盆を枕元に置き、
なんでも知っているという顔で、むにゃむにゃと呟いた。 
じいちゃんは子どもの時分、音に聞こえた大変なイタズラ小僧で、
近隣の集落のものならば誰でも知っていたというほど、悪名を轟かせていたのだという。
名前は茂春。孫のシゲちゃんは、その一文字をもらったのだそうだ。 
じいちゃんが子どもころからこの家の庭のイブキの木は、大きな枝を家の屋根まで伸ばしていたのだと言う。 
「やっぱり憑かれちょったな。あやうい。あやうい。取り殺されんで良かった。南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」 

756 :先生  後編  ◆oJUBn2VTGE:2009/09/04(金) 22:14:39 4o0HgrnU0 
「そうね。だからその時タロちゃんが見た顔は、前に見た顔と違ってたのは確かだわ。
 タロちゃんが前に見た顔っていうのが、あなたが昨日一人で見た、本当の顔入道の顔だったはずよ。
 笑っていた顔が今度は怒ってたんだもん。それはビックリするよね」 
え?ってことは、どういうことになるんだ。 
首を傾げる僕に、先生は噛んで含めるように語り掛ける。
「言ったでしょ。あなたが最初に見た顔は、岩に描かれたものじゃなかったって。
 かと言って、人が後ろに隠れられるハリボテでもない。
 白い塗料のついた尖った岩という、同じ目印があるんだから、場所が違っていたわけでもない。
 ……たぶん、厚手の紙を顔入道の岩に被せて、その上から白い塗料で別の顔を描いたのよ。
 笑っている顔の上に、怒ってる顔を」
その真下の尖った岩の塗料は、その時についたのね。 
先生は僕の目を見ながら、確かめるようにゆっくりと言う。 
確かに、それならほとんどかさばらないから、抜け落ちた牙のように見えた白い岩との位置も変わらない。
でも、それでは人間も隠れられなくなってしまう。 
「誰かが隠れる必要なんてないのよ。顔は勝手に変わったんだから。『怒る前』から『怒った後』に。
 さっき言ったみたいに、『怒る前』の顔と『怒った後』の顔は全く同じものなのよ。
 ただ、それを見ていた人間の心理が違っていただけ」 
ドキドキしてきた。だんだんと先生の言いたいことが分かってきたからだ。でも、そんな。そんなことって。 
「あなたが始めにその顔を見た時、
 眉間に皺を寄せて、口なんかへの字に曲がって、迫力満点で睨みつけてくる、その表情に驚いたんでしょ。
 さっき私がそんな顔をした時、あなたは怒られると観念した。
 なのに顔入道の時は、その顔は怒っていないと思ってしまった。 
 さあ、それはどうして?」 
その答えは分かる。今思い出した。あの時の言葉を。叫びそうになった僕を勇気づけてくれたその言葉。 
『よかった。まだ怒ってない』 
シゲちゃんだ。僕の隣で、あの時確かにそう言った。 
シゲちゃんが、この顔入道の事件の犯人だったんだ。


757 :先生  後編  ◆oJUBn2VTGE:2009/09/04(金) 22:18:48 4o0HgrnU0 
僕の中ですべてが繋がって行く。先生は静かな口調でその手助けをしてくれた。 
「最初からシゲちゃんのイタズラ計画だったのよ。
 それも、本当は臆病なのに、口ばっかり強がりなタロちゃんを標的にした。
 私が秘密基地の話を思い出してと言ったのは、
 顔入道をその晩に見に行こうなんて言い出したのが、シゲちゃんだったってことを思い出して欲しかったの。 
 あなたは変な勘違いをしたみたいだけど」 
僕は椅子に座り込んで、じっと先生の説明を聞いていた。 
春ごろに顔入道の噂を聞いて見に行った悪ガキ仲間は、洞窟の奥で笑っている顔を見た。
そして、イタズラ好きでしかも手先の器用なシゲちゃんが、その顔を怒らせることを思いつく。 
紙を貼り付けて、その上からペンキかなにかで顔を描き、その準備が終わった後に、
新入りの僕を連れて行くという名目でみんなを誘う。
標的は生意気なタロちゃんなのだから、ほかの臆病者たちが逃げても構わない。 
むしろ大勢で行ってしまう方が、みんな変に気が強くなってしまって、
マジマジと見られて、細工がバレてしまう可能性があったのだから好都合だ。 
首尾よく三人で洞窟に辿り着いた時、タロちゃんが入りたくないとゴネだす。 
無理やり引っ張っていく手もあったが、そこでシゲちゃんは名案を思いつく。
笑っている顔を見ていない僕を連れて先に入り、タロちゃんには後からこいというのだ。 
承知したタロちゃんを残して洞窟に入ったシゲちゃんは、怒っているような顔を見て驚く僕に、
『よかった。まだ怒ってない』と言って安心させる。
そう言われればそう見える顔だったから。 
当然僕は、前にシゲちゃんたちが見にいった時の顔のままだと思った。
しかし、約束通り後から入ったタロちゃんにとっては、まさしくそれは笑っていたはずの顔が怒った後の顔だったのだ。
そして悲鳴を上げて逃げ出す。
ここまでは計画通りだったのに、
まさか洞窟から飛び出して崖から転落してしまうほど、タロちゃんが怯えてしまうとは思わなかった。 
怖くなったシゲちゃんは、自分のイタズラだったことを誰にも言わずに、次の日こっそり仕掛けを片付けに行った。
僕が笑っている顔を見たのは、その後だったのだ。 
そう言えば昨日、シゲちゃんは僕より先に家を出ていた。懐中電灯も見あたらないはずだ。
なんてこった。シゲちゃんが全部。全部やっていたのか。 


759 :先生  後編 ◆oJUBn2VTGE:2009/09/04(金) 22:25:50 4o0HgrnU0 
僕は呆然として説明に聞き入っていた。 
「笑っている顔の塗料が古かった時点で、怒っていた方が張り子なのは間違いないわ。
 そしてその張り子を見て、 『どうってことない。こないだと一緒』なんて言ったシゲちゃんが、
 その仕掛けを知っているのも間違いない。 
 もし春に見たという顔も、その時点ですでに張り子だったとしたら、
 同じ顔を見たことになる、タロちゃんの過剰な反応に説明がつかないしね。
 あとは推理を広げれば簡単だわ」 
先生は黒板に点を三つ、カン、カン、カン、と書いた。 
「ゆ・え・に、犯人はシゲちゃん。この点三つのマーク∴は、もう少し後で習う記号なのよ」 
チョークをそっと置いた先生が静かにそう言った。
その記号も、チョークを置く指も、眉毛の上に揃えられた髪も、その時の僕にはなにもかもカッコよかった。 
見とれる僕に、不思議そうな顔をして先生は首を傾げた。 
太陽はゆっくりと高く昇って行き、教室に伸びる陽射しは、机や木の床から少しずつ引いて行った。 

その後、僕は算数の続きをやった。
同じ問題なのに、教えてくれる人が違うだけで、こんなにも楽しいなんてなんだかおかしい。 
せっせと問題を解く僕のそばで、先生は鶴を折っていた。
そして、いくつか数がまとまると立ち上がり、窓際に掛けた千羽鶴にまた仲間を増やすのだ。
それをずっと繰り返している。 
僕は、いつかは夏休み学校の子どもたちの風邪が治って、ここが二人だけの空間でなくなることも、
そして、朝が昼になり、それから午後になるように、夏もいつかは終わり、
僕がここを去る日がくることも、信じたくなかった。 
だから、今日が先生に出会って何日目なのか数えたことはなかったし、その毎日はふわふわとした夢の中にいるようだった。
一体いつからほかの子どもたちが風邪を引いているのか、考えたことはなかった。
先生の時どき見せるぼんやりした、そしてどこか哀しい表情も、その奥に隠れたもののことも、理解しようとはしなかった。 
ただひたすら僕は問題を解いた。歴史を知った。夏の中にいた。 


761 :先生  後編 ◆oJUBn2VTGE:2009/09/04(金) 22:29:24 4o0HgrnU0 
「よく出来ました。じゃあ今日はここまで」 
先生が僕の答案を見てそう言った。もうお昼過ぎだ。夏休み学校の時間もおしまい。
僕は帰り支度をしながら、なんとなく口にした。 
「先生。怒ったふり、すっごく上手かった」 
本当だった。近づいてきた時、絶対叩かれると思ったのだから。 
それを聞いて先生は、あはっと笑った。とても嬉しそうに。 
「ありがとう。驚かせてゴメンね。でも、迫真の演技じゃないと意味なかったから。
 錆付いてると思ってたんだけどな。私これでも役者を目指し……」 
きゅっ、と口が閉じられた。
顔が一瞬強張り、そしてこくんと喉が動いた後、先生は目を伏せたまま声もなく笑った。 
風が吹き渡るどこまでも高い空の下で、ほんのひと時僕の前に覗いた先生の夢は、ゆっくりと閉じられていった。
それは、どうしようもなく繊細で、綺麗だったけれど、
きっと、いつまでも見続けてはいけないものだったのだろう。
コン、コン。
咳が聞こえた。
どこか遠くから聞こえた気がした。 
でも、目の前で先生が口を押さえている。とても落ち着いた顔をしていた。 
「私も」
ただの咳払いではなかった。少しおいて、先生はまたコン、コン、と咳をした。そしてゆっくりと顔を上げる。 
「ゴメン。私も風邪を引いたみたい。うつるといけないから、明日からお休みにしましょう」 
そんな。そんなのはいやだ。風邪なんかへっちゃらだ。だから休みなんて言わないで。 
そんなことを口走る僕を押しとどめ、先生は目を細めて言う。 
「駄目。悪い風邪なのよ。治ったらきっと、世界史の続きを教えてあげるから」 
だだをこねる僕に、先生は諭すように肩に手を置く。 
「今日はあなたも顔色が悪いわ。あなたも少し休んだ方がいいみたい」 
そんなことない、そう言って飛び跳ねようとして、グラッと膝が落ちる。
だめだ。やっぱり朝から調子悪い。風邪なんかじゃないのに。 
悔しかった。もう二度と先生と会えないような気がした。 
顔を背け、またコンコンと言ってから、先生は僕の目を見る。


763 :先生  後編 ◆oJUBn2VTGE:2009/09/04(金) 22:34:04 4o0HgrnU0 
「あなたが始めに洞窟に入った時、不思議な幻を見たわね。赤い着物がヒラヒラしてるのを」 
終わってしまったはずの事件のことを、急に言われて戸惑ったけれど、なんとか頷く。 
「怖い怖いと思う心が生んだはずの幻なのに、
 まったく関係がない赤い着物の幻なんて、どうして見たんだろうと、あなたは思った」 
そうだった。どうして赤い着物なんだろうと。
でも、結局洞窟の奥には隠れられる場所もなく、誰もいなかったのだから、ただの幻には違いない。 
そんな僕に、先生はゆっくりと首を振る。 
「この村ではね、若くして死んだ女の子には、白い経帷子ではなくて、赤い着物を着せて弔うのよ。
 その子の嫁入りのために貯めていたお金で、残された親が最後のお祝いをしてあげるの。
 晴れのない袈なんて、あんまり可哀相だもの。 
 もっとも、今はもうしていない、大昔の風習だけれど。
 そして、あの洞窟のある山は、死者の魂が惑う場所として恐れられていた所なの。
 即身仏になったお坊さんは、それを鎮めるために入山したと伝えられているそうよ」 
なんだか変な気分だ。僕が見たものは、ただの幻ではなかったのだろうか。 
「いいえ、幻よ。もうこの世にはいない。でも、あなたはそれを見る」 
先生の目が、吸い込まれそうに深く沈んだような輝きで僕の目を捉える。 
「あなたは、誰にも見えない不思議なものを見るのよ。これからもずっと。
 それはきっと、あなたの人生を惑わせる」 
唇がゆっくりと動く。滑らかに、妖しく。 
「それでも、どうか目を閉じないで。晴れの着物を見てもらえて嬉しかった。
 そんなささやかな思いが、救われないはずの魂を救うことがあるのかも知れない」 
僕はゴクリと唾を飲んだ。それから二回頷いた。何故か涙があふれ出てきた。 
先生は「さようなら」と言った。
僕も「さよなら」と言った。
ふらふらとしながら教室を出て、廊下を抜け、階段を下り、下駄箱で靴を履く。
そして校庭に出て、少し歩いてから振り返る。 
二階の教室の窓には先生がいる。出会ったころのままの笑顔で。
その隣には千羽鶴が揺れている。千羽にはきっと足りないけれど、たくさんたくさん揺れている。 

748 :先生  後編  ◆oJUBn2VTGE:2009/09/04(金) 21:55:07 4o0HgrnU0 
先生は手にチョークを持ったまま口を開く。 
「あなたは一昨日の夜、まずシゲちゃんと一緒に二人で洞窟に入った」 
黒板には洞窟の絵と、丸と線だけの人間が二人描かれている。その上には①というマーク。 
「一本道の洞窟の奥には顔入道の岩があって、お坊さんのミイラがあるというその先には行けなかった。
 二人は怒り出す寸前みたいな顔を見てから、入り口へ戻った」 
行って戻った矢印が洞窟の中に描かれる。そして『怒る前』と走り書き。 
「その後、タロちゃんが入れ替わりに一人で洞窟に入って行った」 
②として、もう一人の丸と線だけの人間。
「洞窟の中から悲鳴が聞こえて、タロちゃんが走って出てきた。そして勢いあまって崖から落ちた」 
矢印が洞窟の出口から先へ曲がって落ちた。
「タロちゃんが言うには、『顔入道が怒った』」 
②の矢印が洞窟の奥でUターンする場所に『怒った後』という文字。 
「次の日、つまり昨日の昼間、あなたはもう一度洞窟に行った。今度は一人で」 
③だ。
「その時ちゃんと確認したけれど、洞窟は一本道で、枝分かれや人が隠れるような場所はなかった。そうね?」 
頷く。 
「洞窟の奥には顔入道の岩があったけれど、今度は笑っていた」 
先生は③の矢印の先に『笑う』と書いた。 
そうだ。顔入道は笑っていた。
昼間なのに懐中電灯の光なしでは真っ暗闇になってしまう洞窟の最深部で、白い顔と向かい合った、
この世のものとは思えない光景を思い出し、背筋が寒くなる。 
「やっぱりその時確認したけれど、岩に顔を描いた塗料は古くて、とても昨日や今日に塗り替えたようには見えなかった。
 そうだったわね」
頷く。 
先生はチョークを振り上げ、『笑う』の上に『古い』と書いた。
そして『怒る前』と『怒った後』の上には、『古い?』とクエスチョンマークつきで書いた。 
先生はくるりと振り返り、ニッと右の眉毛と口の端を上げた。 
「一昨日の夜の顔入道には、近寄って確認はしていないわね」 


749 :先生  後編  ◆oJUBn2VTGE:2009/09/04(金) 21:59:21 4o0HgrnU0 
言われてみればそうだ。
でもその後、本当に岩が怒ったり笑ったりするなんてその時は思ってもみないのだから、仕方がないじゃないか。
「その顔入道のすぐ下に、白い塗料がついた岩が突き出ていたのよね。
 あなたが抜け落ちた牙みたいだと思ったその岩。その塗料も古かったかしら」 
え?そう言えば確認していない。顔と同じ塗料だとばかり思っていたから。 
「じゃあ、最近塗り替えた時についたものかも知れない」 
塗り替えだって。やっぱり先生は顔が怒ったり笑ったりしたのは、誰かが岩を塗り替えていたと言うのだろうか。 
「ううん。昨日あなたが確認した時には古い塗料が使われていた。
 だから、その前に岩の塗り替えなんて行われていなかったってことは間違いない。 
 それに、あなたとシゲちゃんが出てきた後で、
 タロちゃんが一人で入って行くまでのあいだに、誰かが塗り替えるなんて出来っこないでしょ。
 入り口は一つしかないし、隠れられる場所もない。その入り口もあなたたちが見張ってたんだから」 
そうだよ。その通りだけど、だったらどうして顔は怒ったんだ? 
「答えは一つよ。算数みたいに。一昨日、あなたがシゲちゃんと一緒に見た顔は、岩に描かれたものではなかった」
ガンッと殴られたようなショックがあった。 
確かに、二度目の時みたいに顔を近づけて見ていない。
洞窟に入るまでに岩に描かれたものだと教えられていたから、素直にそう思っていた。
それが白く塗られたハリボテだったというんだろうか。 
でも待てよ。それがハリボテだったとしても、どうして顔が変わるんだ? 
「ここで思い出して欲しいのは、
 一昨日の昼間に、あなたたちが秘密基地に集まって、顔入道の洞窟に行こうって話をした時のこと」 
先生はいたずらっぽい顔をして、僕を試すように見つめてきた。 
思い出せ。
あの時シゲちゃんが、『こいつももう俺たちの仲間と認めていいんじゃないか』なんて言い出して、
僕をその晩に、顔入道の洞窟に連れて行こうとした。


750 :先生  後編  ◆oJUBn2VTGE:2009/09/04(金) 22:00:38 4o0HgrnU0 
そしたらみんな怖がって、いろいろ言い訳して逃げた。
そして怖がりだと思われたくないタロちゃんがモタモタしているうちに、シゲちゃんに捕まってしまったのだ。 
ピン、ときた。僕の頭がなにかを閃いた。それがどこかへ行ってしまわないように、必死で考えをまとめる。 
あの夜。山奥の洞窟には、僕とシゲちゃんとタロちゃんの三人しかいなかったはずだ。
あんな場所に夜中、ほかの誰もくるはずがない。
でもだ。僕ら三人がその夜、あそこにくることを知っていたやつらがいる。
怖がって『行かない』と言ったほかの連中だ。 
そして顔入道のハリボテ。
わかった!
ハリボテの後ろ側に初めから隠れていたんだ。僕らが洞窟に入る前から!
あんな所に誰かが待ち構えているなんて思ってもみなかった。
だけど、あいつらならそれが出来る。僕らがくることを知っていたんだから。 
『怒る前』のハリボテの後ろに隠れて、僕とシゲちゃんをやり過ごし、
その後に入ったタロちゃんがやってくる前に、もう一つ用意していたハリボテと入れ替えて、『怒った後』にしたのだ。
ひょっとしたら、丸いハリボテの両面に顔を描いていて、くるりと裏返しただけなのかも知れない。 
そして、岩に描かれているはずの顔が怒ったことに驚いたタロちゃんが悲鳴を上げる。
僕らが怪我をしたタロちゃんを担いで山を下りた後で、ハリボテごと撤収する……
くそう。誰がやったんだ、こんなイタズラを。
タカちゃんか、トシボウか、ユースケか、それともカッチンか。
ひょっとしたら二人、ううん、あの秘密基地にいた全員かも知れない。 
卑怯なやつらだ。ブッコロしてやる。シゲちゃんにもチクッて、二人で仕返ししてやる。 
そんなことを僕が感情に任せて喋るのを、先生はじっと聞いていたけれど、ふいにその顔色が変わった。 
「ちょっと待ちなさい。今なんて言ったの」 
いつもは穏やかな顔をしている先生の頬が、緊張しているのが分かる。
目が見開かれて、白目が大きくなる。眉毛が吊りあがる。
その言葉は質問しているのではない。こちらの答えなんてどうでもいい。そんな爆発前の確認の儀式だ。 


751 :先生  後編  ◆oJUBn2VTGE:2009/09/04(金) 22:02:46 4o0HgrnU0 
「なんて言ったの」 
その声はキリキリと軋むように尖っている。 
「あ、いや、えと」
いきなりの思ってもいなかった展開に僕は足が震えてきた。
これからどうなるか分かるのだ。うちの担任の先生と同じだ。 
僕はこの時間が一番嫌だ。なにか悪いことをして怒鳴られるのはしょっちゅうだけど、怒鳴る前の『溜め』の時間。
固まったように動けなくなる時間が僕には一番怖かった。 
なんでだろう。『ブッコロしてやる』がまずかったのか。
それとも、自分でも気づかないようなヘマをしたのだろうか。 
出会ってからあんまり経っていないのに、
訳知り顔で『優しい先生』だなんて勝手に思って、喜んでいたのがバカみたいだ。
一体なにが先生を怒らせたのだろう。
そんなことを、やがてくる溜め込んだ怒りの爆発をただ待つ身の僕は考え、
その睨みつけてくる恐ろしい視線に耐え切れず、思わず目を瞑ってしまった。 
「あなた自分がなにを言ったのか分かってるの」 
押し殺したような声が、ぐっと近づいてくる。 
あ、ひっぱたかれる。
そう思った瞬間だ。
僕の頬っぺたに柔らかいものが触れた。ぐにっと頬肉が左右に引っ張られる。 
僕は驚いて目を開けた。その目の前に、ニコッと笑う先生の優しい顔があった。 
「ごめんね。怒られると思った?」 
こんなに近くで見るのは始めてだったけど、
前髪を短く揃えたその顔は、すんなりと伸びた長い首の上にかわいく乗っていて、
僕よりずっと年上だと思っていたのに、その時はほんの少し年上の女の子のように見えた。 
そのせいで胸がドキドキする。怒られると思った緊張も混ざっていたかも知れないけれど。 
「あなたが勘違いをしていたから、分かりやすく教えてあげようと思っただけなの」 
先生はよく分からないことを言いながら、スッと僕のそばを離れて教壇に戻って行った。 


752 :先生  後編  ◆oJUBn2VTGE:2009/09/04(金) 22:06:06 4o0HgrnU0 
「あなたとシゲちゃんが最初に見た顔入道は、岩に描かれたものではなかったけれど、
 あなたが思ったようなハリボテでもなかった。
 確かに、ハリボテが本物の顔入道の手前にあったなら、
 誰も隠れる場所なんてなかったはずの洞窟に、秘密の空間が出来ることになる。 
 そこに誰かが隠れていて、タロちゃんがやってくる前にハリボテを入れ替えれば、
 あっと言うまに顔入道が怒ったってことになるわよね。
 でも良く考えて。どうしてその誰かは、後からタロちゃんがくるなんて知ってたの?」 
ハッとした。
そうだ。タロちゃんは急に怖気づいて、僕らが入った後に入るなんてことになったけど、
それでも無理やりシゲちゃんが連れて行ってたら、三人とも始めの『怒る前』の顔を見ていたことになる。 
そうなれば、いくらなんでも僕らの目の前で、ハリボテの早がわりなんて芸当が出来るはずはないし、
そのまま帰られたら、せっかくのイタズラの仕掛けもパァだ。 
口ぶりからすると、シゲちゃんもタロちゃんも、
それから、たぶんほかのみんなも、一度は顔入道を見ているはずだから、
なにも顔の早がわりなんてことをしなくても、初めから怒った顔のハリボテを用意していれば、 
最初に見た瞬間に『顔入道が怒った。うわあぁ』ってことになるはずなのだ。 
「そうね。それにあなたが見た、白い牙のような塗料のついた岩が、重要なヒントになってるのよ」 
先生はもったいぶったように、ゆっくりと人差し指を立てる。 
「塗料のついた尖った岩は、顔入道の岩の真下にあったのよね」 
あ、と思った。
「だから抜け落ちた牙のように見えた。それも、一昨日昨日と二回見た、その両方とも同じことを思ったのよね。
 ということは、塗料のついた岩と、顔入道の位置は変わってないってこと。 
 ここまで言えばもう分かったかな。
 つまり、顔入道の岩の手前にハリボテなんか作って、そのあいだに人間が隠れたりしたら、
 絶対にその真下の塗料のついた岩も隠れちゃうんだから……」 
だから、ハリボテはなかった。 


755 :先生  後編  ◆oJUBn2VTGE:2009/09/04(金) 22:11:01 4o0HgrnU0 
そんな結論が、先生の口からスラスラと出てくる。
そのこと自体に納得はいったけれど、全然事件の解決にはなっていない。
それどころか、余計に薄気味悪くなってくる。
それじゃあ顔入道は、やっぱり勝手に怒ったり笑ったりしたってことじゃないか。 
僕がぶつぶつとそう言うと、先生はうふっと笑った。 
「その通りよ」
ええっ、と思わず力が抜けそうになった。そんなバカな。 
「正しく言うと、顔入道は勝手に怒ったけれど、勝手には笑わなかった」 
なんだか謎掛けのようなことを言いながら、先生はチョークを手に持つ。
そして黒板に描かれたのマークのついた『怒る前』の文字のお尻に、『?』の文字を書き加えた。 
それからこちらに振り向く。
「さっき、私に怒られそうになったでしょう?」 
うんうんと頷く。なんだか楽しくなってきた。これからもっと不思議なことが起こりそうな予感がして。 
「あれはお芝居だったけど、あなたはなんだか分からないうちに怒られそうになって、
 目なんか瞑っちゃって、観念してたわよね」
恥ずかしくて、思わずカァーっと顔が赤くなりそうになった。 
「これから怒るってことは、もう怒ってるってことよ」 
そりゃあそうだ。大人が怒る時なんて、大体パターンが決まってるんだから。
目を吊り上げちゃって、僕らが答えられないようなことを問い詰めてきて、
それから怒鳴りつけたり、引っ叩いたりするんだ。
本気で怒り出す前に、これからどうなるかくらい分かる。 
あれ?てことは、なにか変だぞ。
先生はクスクスと肩を揺すった後、イタズラっぽく僕の方に向き直った。 
「あなたが最初に見た『怒る前』の顔。それは、本当は『怒ってる顔』じゃなかったの?」 
ハッとした。
怒る前ってことは、怒ってるってこと。そうだ。怒りをこらえてるってことは、怒ってるってことだ。
ただ爆発する前か後かってだけで。
「でも、おかしいよ。タロちゃんも前にいっぺん見てるはずなのに、『顔が怒った』なんて言って逃げてきたんだよ」

679 :先生 中編  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/28(金) 23:24:32 4kHIdhSj0 
前に一度、午後にもあの学校に様子を見に行ったことがあるけれど、先生はいなかった。
お母さんにつきそって、病院にでも行っているのかも知れない。 
時間がゆったりと流れる夏の家の中で、早く明日にならないかと僕はやきもきしていた。 
シゲちゃんはその後、元気がないなりにどこかに遊びに行ってしまったが、
僕はそんな気になれず、家で宿題をぽつぽつと進めていた。
けれどだんだんと心の中にある欲求がわいてきて、それが大きくなり始めた。 
昼間なら、あんまり怖くないよな。 
そんなことを思ってしまったのだ。つまり顔入道を、タロちゃんが見たものを確かめに行こうというのだ。
さすがにこれは悩んだ。じいちゃんに『あれは、おそろしいものだ』なんて言われたばかりなのだ。
でも、見たかった。知りたかった。
タロちゃんは一体なにを見たのか。
一度逃げ出した場所にもう一回挑戦することで、手に入るものもある。
例えば、鎮守の森の奥に進むことで先生に会えたようにだ。 
バシン、とノートを閉じた。ようし、やってやる。 
僕は立ち上がった。 

夜と昼間では山道の印象が違っていて、何度も迷いそうになりながらも、僕はなんとか顔入道の洞窟にたどりついた。
ぜえぜえと息が切れる。昨日の夜よりしんどいのは、太陽の光が木の枝越しに凶暴に降り注いでいるからだろう。 
樹木が開け、山肌が見える場所で僕は額をぬぐう。
小さな崖になっている場所が見える。昨日タロちゃんが飛び出して落っこちた所だ。 
タロちゃんがゴロゴロと転がって、身体ごとぶつかって止まった岩もその先にある。
そのどっしりした岩の形を見ていると、今さらながらゾッとする。 
タロちゃんはそんなにまで怯えて、いったいなにから逃げたかったのだろう。 
昼間でも暗い口を開けて洞窟が僕の目の前にあった。
覚悟を決めていてもドキドキしてくる。
顔入道は怒っているかも知れない。それがどんな顔なのかあれこれ想像する。 
今のうちに最悪の事態を想定しておけば、ビビって崖から落っこちたりはしないだろう。 


680 :先生 中編  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/28(金) 23:27:57 4kHIdhSj0 
あらゆる怒りの表情を十分にイメージしてから、僕は深呼吸を五回した。
五回した後でもう三回して、それからもう後四回くらいしてから、洞窟に足を踏み入れた。 
太陽の光が届かないので中はひんやりしている。
外の熱気が追いかけてくるけれど、それも何度か角を曲がると去って行ってしまった。
リュックサックから懐中電灯を取り出す。
シゲちゃんが昨日持ち出したやつが見あたらなかったので、押入で見つけたもう一回り小さいやつだ。 
心細いような光の筋が目の前を照らすけれど、洞窟の中はぐねぐねと折れ曲がっているので見通しが悪く、
いつ曲がり角の向こうに、なにか恐いものが飛び出してくるか分からない。
首筋のあたりをぞわぞわさせながら、僕は洞窟の奥へと進んでいく。 
『岩でできた顔が怒り出すなんてあるわけない』
そんな考えが浮かぶたびに、
『いや、この世ではなにが起こるか分からない』と気を引き締める。
そう。なにが起こるか分からないのだ。 

隠れたような枝道がないか慎重に探りながら、僕は深く深く洞窟へ潜って行った。 
そしてどこか見覚えがある曲がり角を回った時、目の前に白いものが飛び込んできた。 
ビクゥッ、と背中が伸びる。
顔だ。顔入道。
昨日と同じように洞窟にみっしりとはまり込んで、とおせんぼをしているその白い顔を見た瞬間、
僕は恐怖というよりも吐き気を催した。
なんだこれは?
あれほどイメージトレーニングを繰り返したにも関わらず、まったく想像していなかった不気味な姿がそこにあった。
足下から天井まで伸びる巨大な顔は、笑っていたのだ。 
目を細め、口元の皺は縦に真っ直ぐではなく、横にふっくらと広がっている。
ほっぺたは丸々として、口の端は優しげに上がっている。 
これこそが、この洞窟の先で即身仏になっているというお坊さんの、普段の顔だったのだろうか。
けれどそのえびす顔がもたらす印象は、吐き気を催すような奇怪さだった。 
僕とシゲちゃんは二人でここまできて、『怒りをこらえる顔』に会った。
そして、その後入れ替わりにタロちゃんは一人でここまできて、『怒った顔』に会ったという。
そして次の日の昼、今僕は笑っている顔と向かい合っている。


682 :先生 中編  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/28(金) 23:31:44 4kHIdhSj0 
これはいったいなんなのだろう。 
足がガクガクと震える。目の前で白い顔が、ぐにゃぐにゃと飴のように形を変えていくような錯覚がある。
……でもそれは本当に錯覚だろうか。
僕は泣きそうになりながらも、『これだけはする』と決めていた確認作業を断行した。
生唾を飲みながら、震える足を叱咤して少しずつ顔に近づいていく。 
顔が大きくなっていくにつれ、この狭い空間が、この世から切り離された異空間のような気がしてくる。
どんなことが起こっても不思議ではないような。 
それでも僕は自分の顔を突き出し、顔入道の表面に光をあてる。
よく見ると、ところどころボロボロと塗装が剥げ、白い顔にも黒い汚れが目立った。 
その地肌は確かに岩で、その上に描かれた顔は、昨日今日のものではないのは明らかだった。
何年も、いや何十年も前から同じ顔で、ここにこうして洞窟に挟まっているはずのものだった。 
顔の真下には、折れた歯のような塗料のついた尖った岩。
笑っていても、ついさっきまで牙のあった証のように青白く光っている。 
僕は今までとは違う別の寒気に襲われ、とっさに逃げ出した。くるりと振り返って、きた道をひたすら戻る。 
うわあ、という叫び声を上げたと思う。ギャー、だったかも知れない。
とにかく、僕は何度も転けそうになりながら走り続けた。
白い手が追いかけてくる幻想が、昨日よりもくっきりと頭に浮かんだ。恐い。恐い。なんだこれ。なんだこれ。 
それでも、射し込む太陽の光が道の先に見えた瞬間にブレーキをかけた。
洞窟の外まで飛び出した僕は、崖の前でピタリと止まることができた。 
昼間だったから良かったのだ。
夜だったら、洞窟の続きのような暗い空の下に、両手両足を泳がせていたかも知れない。 
背中に異様な気配を感じる。ハッと振り返ると、洞窟の奥に赤い着物の裾が翻ったような気がした。
それはすぐに記憶の彼方へ消えて、現実だったのか幻だったのかわからなくなってしまう。 
僕はガチガチと震えながら、洞窟の入り口から中へ小声で問いかけた。 
「誰かいるの」


683 :先生 中編  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/28(金) 23:36:03 4kHIdhSj0 
いるはずはなかった。中は一本道なのだ。行き止まりにはあの顔入道の岩がつっかえている。
がっしりと地面にも壁にも天井にも食い込んでいて、とても動きそうには見えなかった。 
だから洞窟の途中に誰もいなかったからと言って、その岩の奥に誰かが隠れているはずはない。 
こういうのをなんて言うんだっけ。こないだテレビでやっていた。そう。密室。密室だ。 
密室の中には、生きたままミイラになったお坊さんがいるはずだ。
真っ暗闇の中で座禅を組み、もう二度と変わらない表情を顔に貼り付けたままで。 
その顔は怒っているのだろうか。笑っているのだろうか。 
ああっ。
なんだかたまらなくなり、僕は逃げ出した。
崖を回り込み、山道を駆け下りる。振り返らずに。汗を飛び散らせて。 
ぜいぜい言いながらひたすら走り続けていると、頭が勝手に想像し始める。 
顔入道が怒ったら、悪いことが起きる。 
じいちゃんが『あれはおそろしいものだ』と言っていた。本当なのかも知れない。
ひょっとして、タロちゃんが崖から落ちたのだって、その『悪いこと』に入っているのかも知れない。
目に見えない手が、崖の前でその背中を押したのかも知れない。
でもさっき見た顔入道は笑っていた。
けれど、それがなにか楽しいことを暗示しているような気がしない。
いつもは誰もこないはずの暗い洞窟の奥底で、どうして笑っていたのだろう。 
想像が顔入道の笑顔を大げさに変形させ、視界一杯に、いや頭の中一杯に広がって行く。
その奇怪な姿を僕は振り払おうと振り払おうと、木の根を飛び越えながら駆け続けた。 

その夜、晩ご飯を食べている時におじさんから、タロちゃんが三,四日後には退院できるらしいと伝えられた。
僕もホッとしたけれど、首謀者であり親分でもあるシゲちゃんが一番ホッとした顔をしていた。


685 :先生 中編  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/28(金) 23:39:39 4kHIdhSj0 
食べ終わってから僕はシゲちゃんに、顔入道の洞窟にもう一度行ったことを話そうと思ったけれど、
「疲れたからもう寝る」と言って、あっというまに布団に入られてしまった。 
僕はどういうわけか、顔入道の笑顔のことをほかの人に話すのが妙に恐い気がしたので、
「寝ちゃったからしかたないや」と自分に言い訳をしながら、居間でテレビを見ることにした。 
ブラウン管の向こう側ではプロレス中継をやっていた。
恐い顔の外国人レスラーがマットの中や外で大暴れしていたけれど、
刻一刻とその表情は変わり、どの瞬間にも同じ顔はなかった。
睨む顔、強がる顔、痛がる顔、笑う顔、吠える顔。 
繕い物をしているばあちゃんと並んで、僕はテレビの前にずっと座っていた。 

次の日、少し元気になったシゲちゃんが、朝から外へ遊びに行ったのを見送ってから、僕は夏休み学校へ行く準備を始めた。
先生にどうやって洞窟のことを話そうか考えながら、一応宿題をやるふりをしていると、
ばあちゃんがハタキを持って部屋に入ってきた。 
パタパタと家具や壁を叩いて回り、ちょっと重い物をどかす時に「エッヘ」と言いながら、小一時間ハタキをかけていた。
僕は早く出て行きたかったけれど、なんとなくタイミングを失って、どんどん埃っぽくなっていく部屋の中でイライラしていた。
すると、一通りハタキを掛け終わったのか、ばあちゃんが腰を叩きながら目の前に立つと、僕の顔をまじまじと見つめてきた。
そして、「あんた、つかれちょらんか」と言った。 
この二,三日のあいだは、確かに色々あって疲れている。
それでもタロちゃんがすぐ退院できると分かったし、昨日会えなかった先生に早く会いたかった。
会って話をしたかった。 
僕は「別に」と言って立ち上がり、「散歩してくる」とばあちゃんを残して部屋を出た。 
外はあいかわらずカンカンと日が照っていて、半そでから伸びる腕の何重にもなった日焼けの跡が疼いた。 


694 :先生 中編  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/29(土) 00:01:43 4kHIdhSj0 
顔見知りのおばさんとすれ違って、「おはようございます」なんて挨拶しながら、
なんにもない道をてくてく歩いていると、なんだか足が重いような気がする。
やっぱり疲れてるな。朝ご飯もお茶碗一杯しか食べられなかったし。 
それでも僕の足は素晴らしく早く動いた。入道雲が北の山の稜線に大きな影を落としている、その先を目指して。

アッバース朝や後ウマイヤ朝、ファーティマ朝など分裂・建国を繰り返したイスラム国家は、
トルコやイベリア半島、北インドなどに確実に勢力を伸ばしていった。 
その中で、ローマ帝国の後継者ビザンツ帝国の領土に侵攻したセルジューク朝は、
キリスト教の聖地エルサレムまでも圧迫したので、
ローマ教皇の号令の下に、ついに西方諸国が腰を上げ十字軍が結成された。 
成功に終わった第一回遠征の後も十字軍は、トルコ人やエジプトのサラディンなど相手を変えながら、
第二、第三、第四と続いて結局第七回くらいまでいったらしいけれど、イスラム勢力との決着はつかなかった。 
それはそうだろう。
今だってターバンを巻いたりスカーフをしたりして、『インシュアラー』なんて言っている人がたくさんいる所を、
テレビで見るんだから。
みんなやられちゃったはずはない。 
あの人たちが、先生から教えてもらう歴史の先にいるのだ。
そう思うと、先生の口から語られる遠い世界の出来事も、
けっしてファンタジーの世界の物語ではなく、この僕の生きている今に繋がっているのだと実感する。 
凄いことが起きたら、その凄いことが今の人間の社会のどこかに影響している。
だから僕はほかの科目にはないくらい、ハラハラドキドキしながら先生の授業を受けた。
漢字がたくさん出てくる中国の歴史は、さわりだけで勘弁してもらったけれど。 

「で、どうしたの」 
世界史の講義が終わった休み時間、洞窟であったことをどう話そうか悩んでいる最中に、先生の方から訊いてきた。
おかげで僕は、ビビって逃げたことを上手くごまかせずに、全部話してしまった。
かっこ悪いな。ゲンメツしたかな。


696 :先生 中編  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/29(土) 00:05:08 mwHzvPwJ0 
先生は窓際のいつもの席に腰掛けて、真剣な顔をして聞いている。
花柄の白い服が、射し込む太陽の光を反射してキラキラ輝いて見えた。 
今朝、先生は昨日僕がこなかったことを怒りもせずに、いつもの笑顔で二階の窓から校庭の僕に手を振ってくれた。
今日もだけど、昨日もほかの子はこなかったらしいから、
きっと先生は、午前中ずっと教室で僕を待っていたはずなのだ。 
二階の窓際で頬杖をついて、ぼうっと校庭を見ながら。それを思うと、僕は胸が痛くなる。
先生みたいな若くてきれいで頭が良くて優しい人が、
こんな誰もこない山の中で、じっと僕みたいなただの子どもを待ってるなんて。 
先生は言わないけれど、きっと東京でしたいことがあったんだろう。好きな人だっていたかも知れない。
そんなものを全部捨ててこの田舎へ帰ってきて、
夏のあいだずっとこんなオンボロの学校で、たった数人の生徒を毎日待っているのだ。 
僕が算数の問題を解いているあいだ、時どき先生は窓の外を見ながらぼんやりしている。
そんな時、先生はそこにいるのに、そこにいないような感じがする。
その横顔を覗き見するたびに、僕はなんだか悲しくなるのだった。 
「そんなことがあったの」
先生は顎の先に折り曲げた人差し指をあてて頷いた。 
「顔入道さんのことは聞いたことがあるわ。
 わたしが子どものころにも、男の子なんかは肝試しに行っていたみたいね。
 わたしは見たことないけど、不思議な話ね」
先生はそう呟いて、あのぼんやりした表情を一瞬だけ見せた。
僕は何故か慌てて、「こんなことってあると思う?」と問いかけた。 
先生は我に返ったように目を大きく開くと、
「この世の中は不思議なことだらけよ。
 とくにこんな田舎にはね、生活のすぐそばにおかしな迷信や言い伝えがあるの。
 学校で習う物理や算数よりもずっと近くに。
 私も都会の生活が長くなっていくにつれて、忘れそうになっていたけど」 
先生がふっと息をつくと、外はうるさいくらいジワジワジワジワ蝉が鳴いていたのに、教室の中は変にシーンとした。


697 :先生 中編 ラスト  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/29(土) 00:08:00 mwHzvPwJ0 
ただの岩が怒ったり笑ったりするのも、学校では習わない不思議な力が働いているからだろうか。
ただの森を、鎮守の森なんて呼んで神社を建てるのも?  
お仕置きをするため、暗く狭い場所へ僕を押し込める父親の顔と、
暗闇でひとりになった後で、誰かがいつのまにか背後にいるような、あの振り向けない感じが頭の中をよぎった。 
「でも理科や算数を教える先生としては、それで終わりってわけにはいかないわね」 
その時、僕が感じたことをなんて言えばいいんだろう。 
先生はゆっくりと立ち上がり、僕のまだ知らないことを楽しく、そして優しく教えてくれるあの素敵な表情をした。
僕をどうしようもなくワクワクさせてくれる大好きな顔だ。 
先生は教壇に立ってチョークを握り、黒板にスッスッと手を走らせる。 
その指が描き出す白くて涼しげな線を、僕は息をするのも忘れてじっと見つめていた。

669 :先生 中編  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/28(金) 23:04:09 4kHIdhSj0 
顔だ。 
顔入道。生首のように洞窟の奥に詰まっている岩。 
人工の光に照らされて、その白い表情が浮かび上がる。 
人間のものというには大きすぎるその眉間には皺が寄り、口はへの字に結ばれて、鼻の頭にもヨコに皺が入っている。
そして、その目はぐりんと剥かれて、こちらを凄い迫力で睨んでいる…… 
叫びそうになった僕を抑えてくれたのは、シゲちゃんの一言だった。 
「よかった。まだ怒ってない」
ふっ、と息が漏れる。シゲちゃんの声も震えているけど、力強い言葉だった。
確かに顔は怒りを堪えているように見える。
シゲちゃんは「こないだきた時も、こんなだった」と言って、強張った顔で笑う。 
顔入道は良くないことが起こる前触れに、怒りの顔に変わるという。
岩に描かれた顔の表情が変わるなんてあるもんかと思うのとは別に、
心のどこかでは、ひょっとしてと怯えざるを得なかったのだけれど、
これを見ると、タロちゃんが洞窟に入るのを嫌がった訳がわかる。 
昔からそうだったのか、
それとも、お祭りとして顔の塗り替えがされていた時に、最後の誰かがこんな風にしてしまったのかは分からないけれど、
まるでこれから怒り出す寸前のような顔をしているのだ。
これではもう一度見にこようという勇気はなかなかわかない。 
しまった。想像してしまった。僕の膝はぶるぶると震え始める。 
今にも顔が変わって怒り出すところを想像してしまったのだ。もういけない。だめだ。
のっぺりした丸い岩に描かれただけの顔がぐわぐわと蠢いて、なにか恐ろしい怒鳴り声を上げる、
そんな想像が頭の中で繰り返しやってくるのだ。 
目には炎が宿り、引き結ばれた口は開いて、赤い喉と牙が……
空気はシーンと冷えている。張り詰めたような静けさだった。
対峙する白い顔のすぐ下には尖った石が突き出ていて、その石には白いものがこびりついている。 
岩に顔を描いた時の塗料がついてしまったに違いないのだが、
その時の僕には、まるで折れた牙のようにしか見えなかった。


671 :先生 中編  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/28(金) 23:11:15 4kHIdhSj0 
僕はシゲちゃんをつつき、「行こうよ」と言った。シゲちゃんも「あ、ああ」と頷いて後ずさりを始める。
だんだんと遠ざかり、顔が曲がり角に隠れて見えなくなるまで、僕らは奥へ懐中電灯を向けたまま目を逸らせなかった。
目を逸らしたとたんに、その怒りが爆発するような気がして。 
その顔の向こう、今は誰も行けなくなってしまった洞窟の最深部には、お坊さんの即身仏があるはずだった。
けれどその時は、そんなことまったく頭の外だった。顔だ。顔。顔。顔入道。 
曲がり角で顔が見えなくなると僕らは振り向き、早足で元きた道を戻り始めた。 
僕が先頭でシゲちゃんがシンガリ。絶対にシンガリはいやだ。
白くて長い手が洞窟の奥から伸びてきて、足首をガシッとつかまれそうで。
でも懐中電灯を持っているのはシゲちゃんだった。 
一本道だけれど完全に真っ暗な洞窟だったので、足元を照らさないと危ない。
息を殺しながら緊張して歩いていると、シゲちゃんが懐中電灯を渡してくれた。 
ギリギリすれ違うくらいの広さはあったのに、シゲちゃんは明かりをくれた上、シンガリも引き受けてくれたのだ。
親分だった。やっぱり。 

なんどか躓きそうになりながらも、ようやく僕らは洞窟の外へ出てこれた。 
僕らの姿を見て、タロちゃんがビクッとする。
僕は息を整えながら、なにごともなかったことに安堵していた。
そしてシゲちゃんを振り返り、親指を上げて見せる。シゲちゃんもニッと笑うと、同じように親指を上げた。 
これで仲間だ。そう言われた気がした。 
「どうだった」とタロちゃんが訊く。
「どうってことない。こないだと一緒」と、シゲちゃんはタロちゃんの背中を叩く。 
「トカイもんが入ったんだ、約束通りお前も行けよな」
と言われて、タロちゃんは生唾を飲みながら、こっくりと頷いた。
やっぱり一人で?と言いたげな視線をシゲちゃんに向けながら、
未練がましそうに懐中電灯を一本携えて、タロちゃんは入り口に歩を進める。 
可哀相だが仕方がない。シゲちゃんも付いて行ってあげる気はないようだ。


673 :先生 中編  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/28(金) 23:13:58 4kHIdhSj0 
観念したタロちゃんが洞窟の中に一人で消えて行き、僕らは外でじっと待っていた。 
そのあいだ、ふとあの赤い着物の幻のことを考える。
洞窟の奥は顔入道が塞いでいて、そこまでの道は枝もない一本道だったし、気がつかずにすれ違うことだって出来ない。
なのに僕らは結局、洞窟の奥ではなにも見なかった。 
ということは、やっぱりあれは幻だったんだ。
怖さのせいで見えるはずのないものを見てしまう、というのはたまにあるかも知れないけど、
あの洞窟に相応しい幻は、お坊さんの姿のような気がして、
どうしてあんな赤い着物を見てしまったのか分からず、その理由をぼんやりと考えていた。 

いきなりだ。 
「ギャーッ」という声が洞窟の中から聞こえた。僕らは思わず身構える。
シゲちゃんが懐中電灯を洞窟の奥に向けて、「どうした」と叫ぶ。
かすかな空気の振動があり、奥から誰かが走ってくるのが分かる。 
緊張で手のひらに汗が滲む。これからなにか恐ろしいものが飛び出してくる気がして、足が竦みそうになる。
シゲちゃんがゆっくりと洞窟の中に入ろうとする。
僕はそれを遠くから見ていると、暗闇の中から揺れる光が見えて、
次の瞬間なにかがシゲちゃんを弾き飛ばし、僕の方へ向かって突っ込んできた。
慌てて身体を捻ってそれを避ける。
その後ろ姿に、あ、タロちゃんだ、と思うまもなく、
それは目の前の崖で止まり切れずに、足を滑らせて転がり落ちて行った。 
悲鳴が遠ざかって行き、すぐに身体を立て直したシゲちゃんが崖に駆け寄る。
すぐに転がる音は止まったけれど、ちょっとした高さだ。ただでは済まないだろう。 
けれど、その下から泣き声が聞こえてきたので僕はホッとした。
シゲちゃんが「待ってろ」と言って、崖を回り込んで助けに行く。
僕も追いかけようとして、ギクッと背後を振り返る。 
洞窟の口がさっきと同じように開いていて、その奥にはなにごともなかったかのように、暗く静かな闇があるだけだ。
でもタロちゃんは、なにかに怯えて逃げてきた。そして勢いあまって崖へ。 
僕はガクガクと全身が震え始め、なんとか視線を洞窟から逸らし、そこから逃げるようにシゲちゃんを追いかけた。


675 :先生 中編  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/28(金) 23:17:39 4kHIdhSj0 
全身を強く打ったタロちゃんをシゲちゃんが担いで、僕らは必死に山を降りた。
公衆電話の置いてある所までたどり着くと、そこから救急車を呼んだ。 
深夜だったけれど、シゲちゃんの家とタロちゃんの家にそれぞれ連絡が行き、僕らはこっぴどく叱られて、
病院に駆けつけたタロちゃんの家族に謝ったり、事情を聞かれたりして、
家に帰って布団に入ったのは明け方近くだった。 
興奮していたけれど、よほど疲れていたのか僕は泥のように眠った。

昼ごろに目が覚めてから、布団の上に身体を起こした。
昼に起きるなんてめったにないことで、やっぱり朝とは違う感じがして、寝起きの清清しさはない。 
僕は昨日の夜にあったことを思い出そうとする。
あの顔入道の洞窟で、僕とシゲちゃんは怒りを堪えているような顔を見た。
そして、入れ替わりに入っていったタロちゃんが、悲鳴を上げて飛び出てきて、勢いあまって崖から落ちた。 
幸い怪我は思ったほど大したことがなく、右肩の骨にちょっとヒビが入ってるけど、あとは打撲だそうで、
しばらく入院したら戻ってこられるとのことだった。 
だけど、僕には気になることがあった。
痛がって呻くタロちゃんをシゲちゃんが担いで山を降りていた時、タロちゃんが繰り返し変なことを呟いていたのだ。
怒った。顔入道が怒った。 
そんなことをうわ言のように繰り返していたのだ。
それを聞いた時の僕は、とにかくあの洞窟から早く遠ざかりたくてたまらなかった。
今にも巨大な顔が、憤怒の表情で闇の中を追いかけてきそうな気がして。 
夜が明けて冷静になった今振り返ると、不思議なことだと思う。
あの洞窟は一本道で、ほかの場所には通じてないはずなのだ。 
僕とシゲちゃんが顔を見てから、タロちゃんが入れ替わりに洞窟に入って行くまで、ほとんど時間は経ってないし、
僕とシゲちゃんが外で待っているあいだ、当然ほかの誰も入ってはいない。 
だからタロちゃんは一人で洞窟に入り、行き止まりの場所で顔入道を見てから、戻ってきただけのはずなのだ。
僕らが見た時には怒っていなかった顔入道が、タロちゃんの時には怒っていたなんて、そんなことあるはずがない。
考えてもよくわからない。タロちゃんは一体なにを見たのだろう。
聞いてみたいけれど、今は隣町の病院だ。そんな変なことを聞きに行けない。 


677 :先生 中編  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/28(金) 23:21:54 4kHIdhSj0 
「起きたか」 
考え込んでいると、おじさんがやってきて「飯を食え」と言う。
シゲちゃんも起きてきて一緒に食べていると、おじさんにもう一度昨日のことを聞かれた。 
「どうして夜にあんな山に登ったのか」と。
半分はお説教だ。僕らは口裏を合わせるように、顔入道のことは言わなかった。
そうだろう。秘密を守るのは仲間の証なのだから。 
ただ探検したかった。もうしない。ごめんなさい。そんなことを何度となく繰り返して、乗り切るしかなかった。 

昼ご飯を食べ終わると、じいちゃんの部屋に呼ばれた。 
僕とシゲちゃんは正座をさせられて、じいちゃんの険しい目にじっと見つめられる。
お説教なら別々にせずに一度にしてくれよ、と思いながら俯いていた。 
「顔入道さんだな」と、じいちゃんは言った。 
僕は驚いて顔を上げる。じいちゃんは顔入道のことを知っていたらしい。 
「わしらも子どもの時分に、見に行ったものだが」と、眉間に皺を寄せた。
そして、「あれは、おそろしいものだ」と呟く。 
どうやらじいちゃんの子どものころにも、顔入道が怒ったことがあるらしい。
その時にはなにか大変なことが村に起こったそうだが、詳しくは教えてくれなかった。 
顔入道さんにはもう近づいてはならないときつく厳命されて、僕らは釈放された。
さすがにシゲちゃんもしょげかえっていて、元気がなかった。
竹ヤブ人形事件の時よりも、大ごとになってしまったからだ。 
次のイタズラを思いついて目の奥がぴかりとするのは、まだ先のことだろうと僕は思った。 

その日は結局、夏休み学校には行けなかった。午前中を寝て過ごしてしまったのだから仕方がない。
僕は昨日あったことを先生に聞いてほしかった。こんな不思議なことが世の中にあるんだということを。 
けれど同時にこうも思う。
先生ならこの出来事に、僕には思いもつかなかったような答えを見つけ出してくれるんじゃないかと。

661 :先生 中編  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/28(金) 22:45:47 4kHIdhSj0 
その日は特に陽射しが強くて、やたらに暑い日で、
家で飼っていた犬も地べたにへばりついて、長い舌をしんどそうに出し入れしていた。 
それでも僕ら子どもには関係がない。
夏休み学校から帰ってきて昼ご飯をかきこんでから、午後にシゲちゃんたちと合流すると、
裏山に作った秘密基地に連れて行かれた。
そして木切れや布で出来た狭い空間に顔を寄せ合うと、シゲちゃんが神妙な顔で言う。 
「こいつももう、俺たちの仲間と認めていいんじゃないか」 
僕のことだ。これで何度目だろう。
こんなことをシゲちゃんが言い出した時は、決まって『秘密の場所』に連れて行かれる。 
それは沢蟹がたくさんとれる場所だったり、野苺が群生している藪だったり、カブト虫がうじゃうじゃいる木だったりした。
みんながうんうんと頷くと、シゲちゃんは目を瞑って、
「今日の夜、カオニュウドウの洞窟へ連れて行こう」と言った。
それを聞いた瞬間、みんなビクッとして急にそわそわし始めた。
そして、「今晩は親戚がくるから」だとか、「家のこと手伝えって言われてるから」なんていう言い訳を並べ立て始めた。 
変にプライドが高いタロちゃんがその波に乗れない内に、
シゲちゃんがガシっとその首を腕に抱えて、「おまえはくるよな」と言った。 
「え、あ、う……うん」と、明らかに狼狽しながらタロちゃんは頷き、しまったーという表情をした。 
シゲちゃんは「へん、臆病もんは置いといて、三人で行こうぜ」と言って僕を見る。
たぶん怖いところなんだろうと思ったけれど、面白そうという思いが先に立った僕は、ピースサインなんか作って応えていた。
後で後悔するとも知らずに。

その夜、晩御飯も食べ終わり、もう寝ようかというころに、
納屋から懐中電灯を持ち出したシゲちゃんが僕に目配せした後、
子ども部屋の電気を消してから、ソロソロと忍び足で縁側を下りた。 
庭の垣根のあいだから抜け出すのだ。こんな時間に遊びに行くといっても絶対に怒られる。 


663 :先生 中編  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/28(金) 22:49:05 4kHIdhSj0 
どうせ怒られるなら、遊んだ後だ。
前にも夜中にホタルを見に行って、夜明け前に帰ってきて布団に入ったのにしっかりバレていて、
次の日、二人しておじさんにゲンコツを喰らったこともあった。 
大人に見つからないように、懐中電灯はつけずに田んぼの中の道を歩く。
田舎の夜はとても暗く月も出てなかったので、なんども躓いてこけそうになりながら、僕たちは山へ向かった。 

途中、一本杉のところでタロちゃんと合流し、三人になった僕らは、村の外れの小高い山へ分け入っていった。 
ヤブ蚊をバチバチ叩きながら草を踏んづけて進むと、だんだんと心細くなってくる。
シゲちゃんとタロちゃんの二人が持ってきた懐中電灯だけが頼りで、
昼間きても足がすくみそうな、ほとんど獣道に近い山道を恐る恐る登っていく。 
道みち教えてくれたカオニュウドウの話は不気味で、
これからそこへ行くのかと思うと、そのままUターンして帰りたくもなったけれど、
そのカオニュドウなるものを見たい、という好奇心がわずかに勝っていたのだろう。 
『顔入道』は、この村に古くから語り継がれてきた伝承なのだそうだ。

昔、えらいお坊さんが、山の中で木食(もくじき)をしたあと、そのまま山中の洞窟で即身仏になったらしいのだけれど、
『入ってきてはならぬ』と言われていたにも関わらず、村の人が即身仏を拝もうとして中に入っていったところ、 
途中で急に洞窟の天井が崩れてしまい、その先へ行けなくなってしまったのだそうだ。 
その洞窟を塞いでいる崩れた岩がまんまるで、
まるでふくふくとしていた、生前のそのお坊さんの顔のようだというので、
村の人が彼を偲んで岩に絵を描いた。
お坊さんの顔の絵を。 
ありがたい即身仏には会えないけれど、その岩に描かれた顔を拝みに、たくさんの村人が洞窟にお参りしたそうだ。
時が経ち、やがてその習慣も絶えて、
一部の物好きだけが時どき興味本位で見に行くだけになったころ、その岩に異変が起こった。 
動かないはずの顔の絵が、ある時突然怒りの表情に変わっていたのだという。
それを見た村の若者は、なにか良くないことの起こる前触れではないかと村の仲間に告げたけれど、相手にされなかった。


664 :先生 中編  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/28(金) 22:52:56 4kHIdhSj0 
ところがその年、過酷な日照りが続いて村は飢饉に見舞われ、多くの村人が命を落としてしまった。 
いつのまにか元の表情に戻っていた洞窟の顔は、それ以来また村人の畏敬の対象になった。
そして顔入道と呼ばれて、年に数回お祭りとして顔の塗りなおしが行われては、村の吉兆を占なったのだそうだ。 

「今でも?」
僕が訊ねるとシゲちゃんは首を振る。 
「もうやってない。というか、みんな知らない」と言う。
どうやらその時代も過ぎて、村に人が少なくなった今では、
顔入道のお祭りが廃れたどころか、その洞窟自体ほとんど知られていないのだそうだ。
だからこそ『仲間だけの秘密の場所』なのだろう。 
「じいちゃんばあちゃん連中でも、あんまり知らないんじゃないかな」とシゲちゃんは言う。 
けれど、どこからかその顔入道の噂を聞きつけたシゲちゃんは、春ごろに実際に見に行ったのだそうだ。
タロちゃんたち数人の仲間と。
「どうだった」 
ゴクリと唾を飲んだ僕に、シゲちゃんとタロちゃんは顔を見合わせて、
「ホントに岩に顔が描いてた。けど怒ってなかった」と言った。
本当にあるんだ。僕はやっぱりそれが見てみたくなった。
「で、でもさ、今度はさ、怒ってたら、どうする」 
タロちゃんが落ち着かない様子で手に持った懐中電灯を揺らす。
シゲちゃんは鼻で笑って、「そんなことあるもんか」と言った。 
夜の闇になんの鳥だかわからない鳴き声が時どき響き、僕はそのたびに身体を硬くする。
怯える気持ちを叱咤しながらガサガサと草を掻き分けて、ひたすら懐中電灯の光を追いかけた。

やがて山の中腹あたりで、木々が開けた場所に出る。「あそこだ」とシゲちゃんが光を向けた。
ゴツゴツした岩が転がっているあたりに、少し奥まった洞窟の入り口がひっそりと佇んでいた。
思わず踏み出す足に力が入る。
すぐ前が2メートルくらいの崖になっているので、回り込んで近づく。 
入り口の前に立った時、タロちゃんがおずおずと口を開いた。


666 :先生 中編  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/28(金) 22:55:40 4kHIdhSj0 
「なあ、中には入らなくていいだろ」 
「なに言ってんだ」 
「いいだろ。場所は教えたんだし、あとは中入って真っ直ぐだし」 
タロちゃんは本格的にビビってしまっているらしい。
ここまできたのは、当初の目的である僕を顔入道の所へ連れて行くためだとあくまで主張するタロちゃんを、
シゲちゃんが「臆病もん」と非難する。
その怯えように僕まで怖くなってくる。 
「ようし、じゃあ俺たちが先に入ってやるから、そこで待ってろ。帰ってきたら今度はお前の番だぞ」
とタロちゃんを睨みつけて、シゲちゃんは僕を促した。
タロちゃんはホッとした顔で「ああ、いいよ」と、妙に強気な口調で返す。 
なるほど、タロちゃんからしたら、洞窟の中の顔の表情さえ確認できたら良いのだろう。怒ってさえなければ。
岩に描かれた顔が変わるなんて、そんなことあるわけないと分かっているのに、
頭のどこかでそれを想像して、足が動かないのだ。
それは僕もよく分かる。

暗闇に包まれて、ほんの少し奥も見えない洞窟の中。
振り向くと、わずかな星明りの下に四方の山々が、黒い胴体をのっぺりと横にしている。
人間の光なんてここからはなにも見えない。 
何百年も前にこの洞窟の奥へと消えたお坊さん。
その人はそれからこの世界に戻ることなく、即身仏になったんだという。 
即身仏ってのは、ようするにミイラのことだ。生きたまま断食をし続けて、そのまま死んでしまうってこと。 
どんな気分なんだろう。
瞑想をしたままお腹が減りすぎて、だんだんほとんど死んじゃったみたいになってきて、ある瞬間に死の境目を越えてしまう。
その時って、どんな気分だろう。そのことを想像すると、どうしようもなくゾッとしてしまった。 
「行こうぜ」とシゲちゃんが僕をつつく。 
迷うまもなく、僕はぐいぐいと背中を押されるように洞窟の中へ連れて行かれる。
タロちゃんは本当に入ってこない気のようだ。 
足元には小さな石がゴロゴロ転がっていて、足の裏の変な所で踏んでしまうとやけに痛かった。 


668 :先生 中編  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/28(金) 22:58:44 4kHIdhSj0 
大人でもなんとか屈まずに通れるくらいの高さの洞窟は、ところどころ曲がりくねっていて、
懐中電灯を前に向けていても先はあんまり見通せない。
前を行くシゲちゃんがソロソロと足を進め、その爪先が石を蹴っ飛ばすたびに、僕はその音に驚いて縮み上がった。
二人並んで進むには狭すぎる。奥からはかすかな空気の流れと、カビ臭いような嫌な匂いが漂ってくる。 
ドキドキと心臓が鳴る。
「もうすぐだ。ちゃんと歩けよ」と、シゲちゃんが僕を励ます。 
僕の目は曲がりくねる暗闇に、ありもしない幻を見ていた。それはヒラヒラとしている。
んん?と思ってじっと見ていると、赤いような灰色のような布が、曲がり角の先に見え隠れしている。 
何度角を曲がっても、それはヒラヒラとその先へ消えて行く。
どうしてこんな幻を見るんだろうと、僕はぼんやり考えていた。
その赤い布が着物の裾に見えた時、初めてこれは幻じゃないんじゃないかと思えて怖くなった。 
シゲちゃんは見えていないのか、なにも言わない。
でも、それはどうしようもなくヒラヒラしていて、
僕の中では、一体なんなんだと叫びながら走って追いかけたい、という思いと、
このまま後退して逃げ出したい気持ちがせめぎあっていた。 
ひんやりした夜露が天井からポトリと落ちて、それが足首に跳ねる。
闇の中に僕とシゲちゃんの息遣いだけが流れて、その向こうに赤い着物の裾がヒラヒラと揺らめく。 
それはやっぱり現実感が薄くて、
けれど即身仏があいまいな生と死の境をすぅっと越えたように、この洞窟にもどこからかそんな境目があって、
それをすぅっと越えた瞬間に、あの幻が現実になって、今度は僕らの存在が薄くなっていくんじゃないかな。 
なんてことを色々考える。なんだかくらくらしてきた。 
「ついた」
シゲちゃんが足を止める。僕はその肩越しに覗く。
足元を照らしていた懐中電灯を、ゆっくりと上げていく。暗闇の中に白いものが浮かび上がる。
心臓が飛び跳ねた。ゾゾゾッと背筋に悪寒が走る。
白いものは円形の洞窟の断面全体に広がっていて、とおせんぼをするように立ち塞がっている。
丸い岩ががっしりと嵌り込んでいるのだ。こんなに大きいとは思わなかった。
目の前いっぱいにその白いものがどっしりと構えている。 

527 :先生 前編  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/22(土) 00:03:15 ZFtl5JP90 
その人は机に手を触れながら、明るい表情で言う。 
「もともとこの土地は私の家のものだったから、廃校になったあと返してもらったのよ。ボロの校舎付きでね。
 壊してもいいんだけど、今は家に私と母がいるだけだから、おうちなんて小さくてもいいもの。
 ほら、校舎のすぐ横に平屋があったでしょ。あそこに住んでるのよ」 
そう言われればあった気がする。 
「今は夏休みでしょう。私、夏休みのあいだ、このあたりの子どもたちに、ここで勉強を教えてあげてるの」 
「勉強?」
「うん。私、隣の町で小学校の先生をしてるの。臨時雇いだけど。
 私も夏休みだから、することがなくって。暇つぶしもかねてね。
 だからこの夏休み、学校ではお月謝はもらってないの。ただし午前中だけね。

 学校の宿題は教えてあげない。
 普段は決められた時間に、決められた科目を勉強してる子たちを、
 夏のあいだだけでも、その子の好きな科目、興味がある科目を、少しでも伸ばしてあげられたらなぁって」 
指が机の木目を撫でる。
「でも、みんな今日はお休みなのよ」
そう言って顔が少し曇った。
「風邪が流行っているみたい」 
そして窓の外に目を移す。僕も釣られてそちらを向く。 
「あなた、何年生?どこの子?言葉が違うね」 
「え、あ」
僕はちょっとどもってから、自分が六年生であること、
そして、遠くからきて、親戚の家に滞在していることを説明した。
それから家の名前を言う。けれど言ってから、その近所はみんな同じ苗字ばかりだったことを思い出して、
「おっきなイブキの木が庭にある家です」と付け加えた。 
するとその人は、「ああ、シゲちゃんのところね」と頷くのだった。 
僕はなんだかわからないけど悔しくなり、口を尖がらせた。
そして、あの鎮守の森の先にはなにもないと言ったシゲちゃんの言葉は、やっぱりわざとついた嘘だったんだと思った。


529 :先生 前編  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/22(土) 00:05:35 YUHlb2rI0 
なぜって。
その人は目が大きくて、すらっとしていて、少し大人で、それから花柄の白いワンピースが似合う、
ちょっと秘密にしたくなるような、綺麗な人だったからだ。 
「この教室が一番ちゃんとした形で残ってるから、いつもここで教えてるのよ。
 探検にきて迷ったんでしょ。勉強していきなさいよ。ね、誰もこなくて、私も退屈してたから」 
そうしてその人は、僕の先生になった。 

教室に机は五つ。一つは先生が座る席。さっきみたいに窓際で頬杖をつくための席だ。
そして残りが、夏休み学校の生徒の数だった。 
先生はわざわざほかの教室から、僕のための机と椅子を運んできてくれた。
「五人目の生徒ね」と言って笑った後、
この学校の最後の卒業生の席が、そのまま残っているのかと思ったことを話す僕に、ゆっくりと首を振った。 
「最後の卒業生は二人だった。一人は私。
 卒業するのは寂しくて悲しかったけど、中学生になることは嬉しかったし、
 それから、学校がなくなってしまうことが悲しかったな。
 マイナス1プラス1マイナス1で、やっぱり悲しい方が大きかった気がする。もう十年以上経つのね」 
先生が目を少し細めると、瞳の中の光の加減が変わって、ちょっぴり大人っぽく見えた。 
「さあ、なにを勉強しましょうか。なにが好き?」
僕は考えた。
「算数が嫌い」
先生は僕の冗談に笑いもしないで、「うん、それから?」と言った。 
「社会と国語と理科と家庭科と図工と音楽が嫌い」 
僕が並べた一つ一つに頷いたあと、先生は「よし、じゃあぴったりのがあるわ」と黒板に向かった。 
小さくてかわいい黒板だ。チョークを一つ摘んで、キュッと線を引く。 
『世界四大文明』
そんな文字が並んだ。


532 :先生 前編  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/22(土) 00:08:31 ZFtl5JP90 
先生の字はカッコ良かった。今までのどんな先生よりもカッコいい字だった。
だからその世界四大文明という言葉も、凄くカッコいいものに思えて、なんだかワクワクしたのだった。 
「世界史って言ってね、あなたが学校で習うのはまだ先だけど、
 算数も国語も社会も理科も嫌いなら、勉強自体が嫌いになっちゃうじゃない。
 勉強することなんて、まだまだ他にたくさんあるんだから、
 自分が好きになれるものを見つけるのも、きっと大事なことだと思う。 
 ノートも取らなくていから、気楽に聞いてね」 
そうして先生は、僕に世界史の授業をしてくれた。
はじめて体験する授業はとても面白く、
先生の口から語られる遥か遠い昔の世界を、僕は頭の中にキラキラと思い描いていた。 

やがて先生はチョークを置き、「今日はここまで」とこちらを向いた。
エジプトのファラオが自分のピラミッドが出来ていくのを眺めている姿が遠のき、
僕は廃校になったはずの小学校の教室で、今日出会ったばかりの先生と二人でいることを思い出す。 
「どう、面白そうでしょう」と聞かれたので、うんうんと頷く。
先生はにっこりと笑うと、
「よかった。実は私、大学で史学科専攻だったの。準備なしだから、算数以外だとこれしか出来なかったんだな」
と言って、ペロリと舌を出した。 
その仕草がとても可愛らしくて、僕はショックを受けた。つまり、まいってしまったのだ。 
「もうお昼ね。今日はおしまい。明日はもっと早くきなさい」
だからそんな先生の言葉にも、あっさりと頷いてしまうのだった。 

なんだか、ふわふわしながら校舎をあとにして、
広場ならぬ校庭で振り向いた僕を、二階の教室の窓から先生が手を振って見送ってくれた。 
ぶんぶんと僕も負けないくらい手を振ったあと、明日も絶対くるぞと心に誓って帰路についた。 
やっぱり帰るには、あの鎮守の森を抜けなくてはならない、と聞かされた時はゲッと思ったけれど、
今日あったことを思い返しながら足を無意識に動かしていると、気がつくと森を抜けていた。
くる時はあんなに薄暗くて怖い感じがしたのに、今度はやけにあっさりと通り抜けてしまったものだ。


533 :先生 前編  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/22(土) 00:10:17 ZFtl5JP90 
そのあと僕はイブキの木のある家に帰って、ばあちゃんが作ってくれたそうめんを食べ、
放り投げていた宿題を少しやってから昼寝をして、
ヨッちゃんとその友だちに混ざって缶蹴りなどをしていると一日が終わった。 

その夜、シゲちゃんがいない家はやけに静かで、
電気を消してから、僕は蚊帳越しに天井の木目を見上げて、
今日出会った先生と、あの小さな学校のことを考えた。
今朝、勉強なんか嫌いで外に飛び出したのに、今は早くあの学校に行きたくて仕方がなかった。
なんだか不思議だった。

次の日の朝。朝ごはんを食べるとすぐに僕は家を出た。
ヨッちゃんにやっぱり「どこ行くの」と聞かれたが、「どっか」とだけ応えて振り切った。
今日はリュックサックはなし。保存食がいるような大冒険ではないと分かったからだ。 

昨日と同じように鎮守の森に入り、薄暗い木のアーチを潜ったけれど、今日はそんなに怖くなかった。
誰もいない畦道を抜け、坂道を登ると学校が見えてくる。 
その二階の窓辺に先生がいる。頬杖をついてぼうっと外を見ている。
僕は手を振る。今度はすぐに気づいてくれた。
「いらっしゃい」
「いま行きます」
そうして教室に入る。 

今日もほかの子どもたちはこないみたいだ。
手持ち無沙汰だった先生は嬉しそうに僕を迎えて、「昨日の続きからね」とチョークを握った。 
シュリーマンがトロヤ遺跡を発掘した話から始まって、
エーゲ海に栄えたミケーネ文明が滅びた後、鉄器文化の時代に入ると、
ギリシアではたくさんのポリスという都市国家が生まれた、ということを学んだ。 
その中から、アテネやスパルタといった有力なポリスが現れて、
東の大帝国アケメネス朝ペルシアの侵攻に対抗したのがペルシア戦争。
ペルシアを撃退したあとに、各ポリスが集まって結成したのがデロス同盟。 


534 :先生 前編  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/22(土) 00:11:51 ZFtl5JP90 
その盟主アテネと、別の同盟を作ったスパルタが戦ったのがペロポネソス戦争。
衆愚政治に陥って弱体化したアテネやスパルタに代わって台頭してきたテーベ…… 
『テーベ』
先生のチョークがそこで止まる。教壇に立つ背中が硬くなったのが分かった。
どうしたんだろうと思う僕の前で、先生はハッと我に返ると、すぐに黒板消しを手にとって、
『テーベ』を『テーバイ』に書き直した。 
何ごともなかったかのように先生は、
その後テーバイはアテネと連合して、北方からの侵略者マケドニアと戦ったけれど破れてしまい、
時代はポリスを中心とした都市国家社会から、
マケドニアのアレクサンドロス大王による巨大な専制国家社会へと移っていった、と続けた。 
その書き直しの意味は、その時には分からなかった。
ただ先生の背中がその一瞬、重く沈んだような気がしたのは確かだった。 

ヘレニズム文化の説明まで終わって、ようやく先生は手を止めた。
「疲れたね。ずっと同じ科目ばかりっていうのも飽きちゃうから、今度はこんなのをやってみない?」 
そう言って渡されたのが、算数の問題が書かれた紙。ゲッと思ったが、よく見ると案外簡単そう。
「どこまで進んでるのか分からないから、少し難しいかも」
そんなことはないですぜ。とばかりにスパッと解いてやると、先生は「凄い凄い」と手を叩いて、 
「じゃあ、これは」と、次の紙を出してきた。 
余裕余裕。え?さらに次もあるの?今度は正直ちょっと難しいけど、なんとか分かる気がする。
僕は鉛筆を握り締めた。
そうして、いつのまにか世界史の授業は算数の授業に変わり、たっぷりと問題を解かされたところでお昼になった。
「また明日ね」 

帰り道。結局『嫌い』だと明言したはずの算数を、いつのまにかやらされていたことに首を捻りながら歩いた。
算数の問題はプリントじゃなく手書きで、それを解いていると、なんだか先生と会話しているような変な気になる。
それほど嫌じゃなかった。また明日行こうと思った。


536 :先生 前編  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/22(土) 00:14:38 ZFtl5JP90 
そうして僕と先生の夏休み学校が続いた。
朝は世界史の講義。次に算数。それから、いつのまにやら漢字の書き取りが加わっていた。 
ほかの子は誰も夏休み学校にこなかった。
「悪い風邪が流行ってるから、あなたも気をつけてね」と言われ、僕は力強く頷く。 
世界史の勉強は面白く、走りばしりではあったけれど、歴史の魅力を十分僕に伝えてくれた。
算数や漢字の書き取りの時間はあんまり楽しくはなかったけれど、
出来てその紙を先生に見せる時の、あの誇らしいような照れくさいような感じはキライじゃなかった。 
僕が問題を解いているあいだ、先生は窓辺の席に腰掛けて折り紙を作っていた。
それは小さい折鶴で、ある程度数がまとまってから、先生は糸を通した鶴たちを窓にかけた。 
「みんな早く風邪が直ればいいのにね」
そしてまた次の鶴を折るのだった。 
僕は不謹慎にも、風邪なんか治らなくていいよと心の底では思っていた。
先生との二人だけの時間をもっと過ごしたかった。
でも、僕が机の上の問題にかかりっきりになっているあいだ、窓辺に座る先生の横顔は寂しそうで、 
その瞳が窓の外をぼうっと見るたびに、なんだか僕は切なくなるのだった。 

「言葉が違うね」と僕に言った先生自身も、その言葉には訛りがほとんどなかった。
高校に入る時東京に出て、大学も東京の大学に受かって、ずっと向こうで暮らしていたらしい。 
それが東京で就職も決まっていたのに、実家のお母さんが倒れたというので、すべてを投げ打って帰ってきたんだそうだ。
その話をしてくれた時、先生の瞳の光は曇っていた。 
「私の家は母子家庭でね、お母さん一人を残して出て行っちゃった時、
 やっとこんな田舎から離れられるって、それしか考えてなかった。
 なんにも言わずに仕送りをしてくれてたお母さんが、どんな思いでこの田舎で働いていたか、全然考えてなかった」
だから今は臨時教員などをしながら、家で母親の看護をしているのだそうだ。 


538 :先生 前編  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/22(土) 00:17:11 ZFtl5JP90 
僕はお邪魔したことはないけれど、校舎の隣の小さな家に二人で暮らしているらしい。 
先生には、なにかやりたいことがあったんだろうと思う。
それを捨てて、今はこうして田舎で子どもたちを教えている。小さなオンボロの学校で。手作りの問題集で。 

お昼になって僕が帰る時、先生はいつも二階の窓から身を乗り出して手を振った。「明日もきてね」と。
僕はいつか夏が終わるなんて、考えていなかったのかも知れない。
蝉の声が耳にいつまでも残っていて、晴天の下をポッコポッコと歩いて、
通る人の影もない道を、毎日毎日わくわくしながら通い続けた。 

林間学校からシゲちゃんが帰ってきても、午前中だけは彼らの遊びの誘いに乗らなかった。 
「そろそろ宿題やんないとヤバイ。うちの学校ごっそり出るんだ」と言うと、
「大変だな」と頷いて、シゲちゃんはそれ以上無理に誘ってこなかった。
このあたりにも、親分としての器量が伺える。 
ただ、朝から外に飛び出して行くシゲちゃんが、いきなり帰ってくることはまずなかったけど、
念のために「あ、でも気分転換に散歩くらいするかも」と、予防線を張っておくことも怠らなかった。 
僕はなんとなく鎮守の森を越えて行く夏休み学校のことを、ほかの人に知られたくなかった。
特にシゲちゃんに知られてしまうと、先生と二人だけの時間をぶち壊しにされてしまいそうで。 
先生もシゲちゃんのことを知ってたし、
シゲちゃんが鎮守の森の先を『なんにもないよ』と嘘をついたことが、ずっと気になっていたのだった。 
朝から遊びに行くシゲちゃんを見送ってから、こっそりと家を抜け出すのだけれど、
午後からはきっちりシゲちゃんたちと遊びまわったし、特に怪しまれることはなかったと思う。 
問題は妹のヨッちゃんだ。毎朝「どこ行くの」と聞いてくる。
そのたびに「散歩」とか、適当なことを言って追い払うのけれど、
家から抜け出すたびに尾行されていないか、途中で何度も振り返らなくてはならなかった。 


539 :先生 前編 ラスト  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/22(土) 00:19:50 ZFtl5JP90 
世界史の講義は、ローマ帝国の興亡からイスラム世界の発展へと移り、
先生の作る折り鶴もだんだんと増えて、教室の窓に鈴なりになっていった。 
休憩の時間には、僕も習いながら鶴を折った。僕はコツを教えてもらってもヘタクソで、変な鶴ができた。
全体的に歪んでいて、あんまり不格好で悔しいので、
せめてもの格好付けに、羽の先をくいっと立てるように折った。戦闘機みたいに。 
先生はにこにこと笑いながら、その鶴も飾ってくれた。
朝から雨がぽつぽつと降り始めていたのに、鎮守の森を抜けるとカラッと晴れていたことがあって、
先生は僕のその話を聞いたあと、「山だからね」と頷いてから、 
「でもあの森って、不思議なことがよくあるのよ。私も子どものころに……」と、怪談じみた話をしてくれたりした。
先生の白い服の短い袖から覗く腕は細くて頼りない。トカイもんの手だ。
先生は僕の知っている先生と比べても若すぎて、まるで近所のお姉ちゃんみたいだった。 
でも、そんなお姉ちゃんの口から、
マルクス・アウレリウス・アントニヌスだとか、ハールーン・アッラシードなんて名前がパシパシと出てきて、
それが変にカッコよかったのだった。 

そして、その日がやってきた。 

518 :先生 前編  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/21(金) 23:16:13 YUHlb2rI0 
それから三日くらい、僕らはひたすら川で泳ぎ回っていた。とにかく暑かったからだ。
川は海よりも体が浮かななくて、しかも流れがあるので、岸に上がった時にドッと疲れる感じ。 
その川には小さな橋が架かっていて、その上から飛び込むのが僕たち子どもの格好の度胸試しになっていた。 
僕も泳ぐのは得意だったし、川底も深かったのでしばらく躊躇したあと、見事に頭からドブーンとやってやった。 
プシューッと水を吹きながら、他のみんなと同じように水面に顔を出すと、
橋の欄干の上にプロレスラーよろしくシゲちゃんが立っているのが見えた。 
「見てろ」と言って、シゲちゃんはみんなの視線を集めながら宙を舞った。
歓声と光と水に溶けていく体温。太陽の中に僕らの夏があった。

そうしているうちに、やがて僕が一人で遊ばなくてはいけない日がやってきた。 
シゲちゃんたち六年生が、みんな二泊三日で林間学校に行くのだ。
僕も連れて行って欲しかったが、学校行事なのでどうしても駄目らしい。
リュックサックを背負って朝早くに家を出るシゲちゃんを見送って、今日からの三日間をどうしようかと考えた。
家は農家だったので、おじさんとおばさんとじいちゃんは、朝ごはんを食べたあと軽トラに乗って仕事に行ってしまう。
ばあちゃんがゴトゴトと家の仕事をする音を聞きながら、僕は持ってきていた宿題を久しぶりに開いた。 
広い畳敷きの部屋で、大きな机の真ん中に頬杖をつく。何ページか進むともう飽きる。
宿題なんて夏休み最後の三日くらいでやるものと決まってる。 
それまでにやらなくてはならないほかのことがあるんじゃないのか?エンピツがコロコロと転がる。
縁側の向こうの庭には太陽がさんさんと照っていて、こちらの部屋の中がやけに暗く感じる。 
寝転がったり、宿題を進めたり、また休んだりを繰り返していて、ふと時計を見ると朝の九時。まだ九時なのだ。
お昼ご飯まで三時間以上ある。ダメだ。どうにかなってしまう。


519 :先生 前編  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/21(金) 23:18:59 YUHlb2rI0 
僕は一人で行ける場所を考えた。いつもみんなでは行かない場所がいいな。図書館とか。 
あれこれ考えていると、ふと頭の隅に鎮守の森の神社が浮かんだ。
そして、カンバツされていない木々の下の翳りの道。その先にまだ道は続いていた。 
またむくむくとその先へ行ってみたい気持ちがわき上がってきた。
あの森の中では萎えてしまったその気持ちがもう一度強くなってくる。 
ひとりでも行けるさ。どうってことない。そうだ。午前中に、今すぐに行こう。
日の高いうちならそんなに恐くないはずだ。 
思い立ったらすぐに身体が動いた。宿題のノートを畳んでから支度をする。
リュックサックを担いでいると、その気配を感じたのか、
シゲちゃんの妹のヨッちゃんが、襖の隙間からじっとこっちを見ていた。 
「どっか行くの」
瞬間、僕はこの子も連れて行ったらどうかなと考えた。でもすぐにそれを振り払う。冒険に女は連れて行けない。
なにが待っているのか分からないのだから。
「郵便局に行くだけ」と言うと、「ふうん」とつまらなそうにどこかへ行ってしまった。 
ようし。邪魔者も追い払った。僕は意気揚々と家を出る。

太陽の照りつける畦道を北へ北へと向かうと、こんもりとした山の緑がだんだんと近づいてくる。 
昔、入山料を取っていたというころの名残で、ある木箱が朽ち果てている所が入り口。
峰を登らずに、山の麓に沿って道が通っている。
ザクザクと土を踏みしめて前へ前へ進むと、だんだんと木の影で頭上が薄暗くなってくる。 
念のために持ってきた方位磁針をリュックサックから取り出して、右手に持ったまま休まずに足を動かす。 
時どき山鳩の声が響いて、バサバサと葉っぱが揺れる音がする。
それから蝉の声。それも怖くなるほどの大合唱だ。
チラリと見上げると、葉の隙間からキラキラと光の筋が零れている。
ずっと上を向いて音の洪水の中にいると、ここがどこなのか分からなくなってくる。 
なんだか危険な感じ。慌てて前を向いて歩き出す。 


520 :先生 前編  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/21(金) 23:22:50 YUHlb2rI0 
途中、山に登る横道がいくつかあったけれど、なんとか迷わずに鎮守の森の神社までたどり着けた。 
一応お参りしておくことにする。木に囲まれた参道を進み、小さな鳥居をくぐる。
古ぼけた建物がひっそりと佇んでいるその前に立ち、お賽銭箱にチリンと百円玉を投げ込む。やっぱり良い音だ。
神社の中には人の気配はない。誰か通ってきて手入れをしたりしているのだろうか。 
くるりと回れ右をして、元きた参道をたどる。

途中で小さな池があるのに気づいて横道に逸れた。鳥居の横あたりだ。
水面ではアメンボがすいすいと泳いでいるけれど、水の中は濁っていてよく見えない。 
雨が降らないあいだはきっと干上がるんだろうな、と思いながら顔を上げ、参道に戻る。 

サクサクという土の音を聞きながら歩いていると、なにか大事なものを忘れた気がして振り向いた。
そこには鳥居があるだけだったけれど、そう言えば帰りに鳥居をくぐってないなと思い出す。 
まあいいやと思って先へ行くと、
だんだんと変な、ぐるぐるした感じが頭の隅にわいてきて、それがどんどん大きくなってきた。 
なんだろう。気分が悪い。景色が妙に色あせて見える。 
僕はキョロキョロとあたりを見回したい気持ちを抑えて、光と影が交互にやってくる参道を早足で抜けた。 
どうしよう。戻ろうか。
そう考えたけれど、また逃げ帰るのはシャクに触る。
どっかから勇気がわいてこないかと待っていると、お賽銭箱に百円玉を入れたチリンという音が耳に蘇ってきた。 
ようし、百円だからな。前は十円。今日は百円だ。 
そんな感じで無理やり勇気を引っ張り出して、帰り道の反対方向へ足を向けた。ザンザンと土を踏んで歩く。 


521 :先生 前編  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/21(金) 23:25:12 YUHlb2rI0 
蝉の声は相変わらずやかましくて、あたりは薄暗くて、どこまでも同じように曲がりくねった道が続いている。
道の先には誰の足跡もない。時どき振り返るけれど、地面には僕の足跡がついているだけ。 
カーブのたびに、誰か僕じゃない人の姿が木の影に隠れたような気がするけれど、きっとサッカクなのだろう。
だんだん道は狭くなり、倒れた木がそのまま放っておかれて、キノコなんか生えちゃってるのを見ると、
やっぱりこの先は、ただの行き止まりじゃないかと考えてしまう。 
リュックサックにつめた保存食料、まあそれはクッキーやリンゴだったのだけれど、
そういうものが役に立つようなことがないように祈りながら、
方位磁針を見たり、振り返ったり、チリンという音を思い出したりして、僕は歩き続けた。 

やがて一際暗い木のアーチが、まるでトンネルの幽霊のように現れ、
僕は少しだけ足踏みをしてから、その奥に吸い込まれて行く。 
なんという名前の木だろう。分厚い葉っぱが頭の上を覆い尽くして、光がほとんど漏れてこない。
時どき暗がりから白い手がスイスイと揺れているのが見えた気がして、身体が硬くなる。 
足元を見ると、僕の足は確かに今までと同じ土を踏んでいて、
その上に立っている限りは大丈夫だと自分に言い聞かせながら、ほとんど走るようなスピードでそのトンネルを抜けた。
ぱあっ、と目の前が明るくなる。 
白い雲がぽつんと空に浮かんでいる。
その下には緑の眩しい畦道が伸びている。畑がある。山の上にはいくつか家が見える。
ツバメが飛んでいる。蛙が鳴いている。 
僕は、はぁっ、と息を吐き出して、それから吸い込む。 
なんだ、別の集落に通じているじゃないか。
シゲちゃんめ。嘘こきやがって。そう思って、自然に軽くなる足を振り上げ畦を進む。
でも良く考えると、途中の森の中になにもなかったのは確かだ。
ううむ。嘘つきだと言ってやっても、へこませられるか自信がないな。 
ふと思いついて振り返ると、さっき抜けた森の入り口がぽっかりと暗い口を開けている。 


522 :先生 前編  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/21(金) 23:29:37 YUHlb2rI0 
帰る時にまたあそこを通るのかと思うと、少し嫌な気分になったけれど、
ひょっとするとほかに道があるかも知れないと考えて、とりあえず誰かこのあたりの人を探すことにした。 
ひまわりが咲いている道をキョロキョロしながら歩いていると、そこは山に囲まれた案外小さな集落だと気づく。
段々畑が山の斜面に並んでいて、埋もれるように家がぽつんぽつんとある。 
道には太陽が降り注ぐばかりで、ほかに歩く人の影も見えない。
僕は勾配のなだらかな坂道を登って、大きな屋根が見えている場所へ向かった。

汗を拭いながら登りきると、そこには広い庭と木造二階建ての古そうな家があった。 
とても大きい。庭も、庭というより広場みたいな感じ。隅っこの方に鉄棒と砂場が見える。あれ?
なんだか学校みたいだなと思ったけれど、学校にしては小さすぎる。少なくとも僕の知っているものよりは。 
その時、二階の窓に誰かいるのに気がついた。 
風が吹いて僕の髪が揺れるのと同時に、その人の髪も揺れた。黒くて長い髪。白い服。女の人だ。 
窓際に頬杖をついて、ぼうっと広場の隅を見ている。
なんだか胸がドキドキした。僕は広場の真ん中にり突っ立って、その人を見上げていた。
でもいつまで経っても、その人はこっちに気づく気配はなかった。
僕は方位磁針をポケットに仕舞ってから、「あのぅ」と言った。 
あんまり声が小さかったので、すぐに「すみません」と言い直した。
それでもその人は気づいてくれず、ぼうっとしたまま外を見ていた。
なんだか恥ずかしくなってきて帰りたくなったけれど、もう一回声を張り上げた。 
「すみませぇん」
次の瞬間、なにかかが弾けたような感じがした。
その人がこっちを見た。わ、どうしよう。確かに、ぱちんという感じに世界が弾けたのだ。 
その人は最初驚いたような顔をして、次に、ぼうっとしていた時間が去ったのを惜しむような哀しい顔をして、
それから最後ににっこりと笑うと、「こんにちは」と言った。


526 :先生 前編  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/22(土) 00:01:05 ZFtl5JP90 
僕にだ。僕に。 
「どうしたの」 
その人は窓から少し乗り出して、右手を口元に添える。 
「ここはどこですか」と、僕はつまらないことを聞いてしまった。 
なにかもっと気の利いたことが言えたら良かったのに。 
「ここはね、学校なの」
「え?」
「がっ・こ・う。ね、上ってこない?すぐそこが玄関。下駄箱にスリッパがあるから、履いてらっしゃい」 
「は、はい」と、僕は慌ててその建物の玄関に向かった。

開け放しの扉の向こうに、埃っぽい下駄箱と板敷きの廊下があった。 
電気なんかついていなかったけれど、ガラス窓から明るい陽射しが差し込んできて、中の様子がよく見えた。
左右に伸びる廊下には、『一、二年生』や『三、四年生』と書いてある白い板が壁から出っ張っていて、
その向こうは小さな教室があるみたいだった。 
玄関の向かいにはすぐに階段があって、僕は恐る恐る足を踏み出す。
なにしろ片足を乗っけただけでギシギシいう古ぼけた木の階段なのだ。
狭い踊り場の壁には、画鋲の跡と絵かなにかの切れ端がくっついていた。 
二階に着くと、一階と同じような板敷きの廊下が伸びていて、
その左手側の教室から、さっきの女の人が手を振っていた。 
「いらっしゃい」
僕はなんて返事していいか困った挙句、「どうも」と言った。
その人はくすりと笑うと、
「ここはね、むかしは小学校だったの。今はもうやってないけど。子どもが減ったのね」 
と、僕を教室の中に誘った。
白い板には『六年生』と書いてあった。 
小さな教室には机が五つあった。それが最後の卒業生の数だったのかも知れない。
僕はたくさんの机がぎゅうぎゅうに詰まっている自分の学校の教室を思い浮かべて、
なんだか目の前のそれがおもちゃのように見えて仕方がなかった。 

512 :先生 前編  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/21(金) 22:58:57 YUHlb2rI0 
師匠から聞いた話だ。 

長い髪が窓辺で揺れている。
蝉の声だとかカエルの声だとか太陽の光だとか地面から照り返る熱だとか、
そういうざわざわしたものをたくさん含んだ風が、先生の頬をくすぐって吹き抜けて行く。 
先生の瞳はまっすぐ窓の外を見つめている。
僕はなんだか落ち着かなくて鉛筆を咥える。
こんなに暑いのに先生の横顔は涼しげだ。
僕は喉元に滴ってきた汗を指で拭う。
じわじわじわじわと蝉が鳴いている。 
乾いた木の香りのする昼下がりの教室に、僕と先生だけがいる。 
小さな黒板にはチョークの文字が眩しく輝いている。三角形の中に四角形があり、その中にまた三角形がある。 
長さが分かっている辺もあるし、分かっていない辺もある。
先生の描く線はスッと伸びて、クッと曲がって、サッと止まっている。
おもわずなぞりたくなるくらいの綺麗な線だ。 
それからセンチメートルのmの字のお尻がキュッと上がって、実にカッコいい形をしている。 
三角形の中の四角形の中の三角形の面積を求めなさい、と言われているのに、そんなことがとても気になる。
それだけのことなのに、本当にカッコいいのだ。 
mのお尻に小さな2をくっつけるのがもったいない、と思ってしまうくらい。 
「できたの」
その声にハッと我に返る。 
「楽勝」
僕は慌てて鉛筆を動かす。 
「と、思う」と付け加える。 
先生は一瞬こっちを見て、少し笑って、それからまた窓の外に向き直った。
背中の剥げかけた椅子に腰掛けたままで。
僕は小さな机に目を落としているけれど、それがわかる。 
また、蝉の声だとかカエルの声だとか太陽の光だとか地面から照り返る熱だとかが風と一緒に吹いてきて、
先生の長い髪がさらさらと揺れたことも。
白い服がキラキラ輝いたことも。
二人しかいない教室は時間が止まったみたいで。
僕はその中にいる限り、夏がいつか通り過ぎるものだなんてことを、なかなか思い出せずにいるのだった。


513 :先生 前編  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/21(金) 23:01:03 YUHlb2rI0 
小学校六年生の夏だった。夏休みに入るなり、僕は親戚の家に預けられることになった。
その母方の田舎は、電車をいくつも乗り継いでやっとたどり着く遠方にあった。 
小さいころに一度か二度連れてこられたことはあったけれど、一人で行かされるのは初めてだったし、
『夏休みが終わるまで帰ってこなくて良い』と言われたのも、当然初めてのことだった。 
厄介払いされたのは分かっていたし、
一人で切符を買うことや道の訊き方について、それほど困らないだけの経験を積んでいた僕は、
むしろ『帰ってこなくて良い』の前に、『夏休みが終わるまで』がくっついていたことの方に安堵していた。 

田んぼに囲まれた畦道を、スニーカーを土埃まみれにしながらてくてく歩いていくと、
大きなイブキの木が一本垣根から突き出て、葉を生い茂らせている家が見えてきた。 
この地方独特の赤茶色の屋根瓦が陽の光を反射して、僕は目を細める。 
その家には、おじさんとおばさんとじいちゃんとばあちゃんと、それからシゲちゃんとヨッちゃんがいた。 
おじさんもおばさんも、親戚の子どもである僕にずいぶん優しくしてくれて、
「うちの子になるか」なんて冗談も言ったりして、二人とも農作業で真っ黒に日焼けした顔を並べて笑った。 
じいちゃんは、頭は白髪だったけど足腰はピンとしていて、背が高くて、
ガハハと言って僕の頭をぐしゃぐしゃに撫でたりして、それが痛かったり恥ずかしかったりするので、
僕はその手から逃げ回るようになった。 
ばあちゃんは、小さな体にチョンと夏みかんが乗ってるような可愛らしい頭をしていて、
なにかを持ち上げたり布巾を絞ったりする時に、「エッへ」と言って気合を入れるので、
それがとても面白く、こっそり真似をしていたら本人に見つかって、
怒られるかと思ったけれど、ばあちゃんは「エッヘ」と言って本物を見せてくれたので、
僕はあっというまに好きになってしまった。


514 :先生 前編  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/21(金) 23:03:29 YUHlb2rI0 
シゲちゃんは名前をシゲルと言って、僕と同い年の男の子で、
昔もっと僕が小さかったころにこの家に遊びにきた時、僕を子分にしたことを覚えていて、
僕はさっぱり覚えていなかったけれど、まあいいやと思ったので子分になってやった。 
ヨッちゃんは名前をヨシコと言って、シゲちゃんの二つ年下の妹で、目がくりくりと大きく、オカッパ頭の元気な女の子で、
僕の顔や服の裾から出ている体の色が白いのを見て、トカイもんはヒョロヒョロだと言って馬鹿にするので、 
そうではないことを証明するのに、泥だらけになって日が暮れるまで追いかけっこをする羽目になった。 

トカイもん。
田舎にきてまず感じたのが、この言葉のむずむずする肌触り。 
僕にはけっしてトカイの子などという認識はなかったのであるが、この小さな村の子どもたちからすると、
テレビのチャンネルがNHKのほかに三つ以上映るというだけで、それは十分トカイの条件を満たしてしまうようだった。 
シゲちゃんはそのトカイもんを、さっそく地元のワルガキ仲間に引き合わせてくれたので、
とにかく毎日ヘトヘトになるまで僕らは一緒に駆け回り、泳ぎ回り、投げ回り、逃げ回った。 
小学生最後の夏休みなのだ。アタマが吹っ飛ぶくらい遊ぶのは、子どもの義務なのである。
タカちゃんやらトシボウやらタロちゃんなんかと仲良くなった僕は、
どいつもこいつも揃って足が速いこと、
そしてまた、並べてフライパンで焼いたように色が黒いことに、いたく感心した。
なるほど。『トカイもん』と自分たちを区別したくなるのも分かる気がする。
僕の周囲にいた子どもたちとは少し違っている。 
朝早くから虫カゴと網を持って山に入ったかと思うと、ヒグラシが鳴きやむまで下界に下りてこず、
いざ帰ってきた時には、手作りの大きな虫カゴが満タンになっているのだけれど、
その夜それぞれの親に、早く家に帰らなかったことについてコッテリ絞られた後だというのに、 
次の日には、また颯爽と朝早くから虫カゴと網とを持って山に駆け上って行く、という具合だ。 


515 :先生 前編  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/21(金) 23:06:05 YUHlb2rI0 
その中でも、シゲちゃんはとびきりのやんちゃ坊主で、それになかなかの親分肌だった。
いばりんぼで喧嘩っ早かったけれど、
子分のピンチには一番に駆けつけて「ヤイヤイ」と凄んだり、
「にげろ」だとか「とにかくにげろ」だとかといった的確な指示を出して、僕らを窮地から救い出してくれたりした。
背丈は僕と同じくらいだったけれど、ギュウギュウに絞った雑巾のような筋肉が全身に張り付いていて、
その足が全力で地面を蹴った時には、大きな水溜りをらくらくと跳び越し、
あとから跳んだ僕らの足が水溜りの端っこでドロ水を撥ねるのを、振り返りながら鼻で笑ったものだった。 
ただ、そんなシゲちゃんの親分っぷりの中にも、
生来のイタズラ好きが首をもたげてくると、僕らはその奇抜さ、迷惑さに閉口した。 
山で見つけた変なキノコを、「キノコの毒は火を通せば大丈夫」などと言って、うっかり信じたトシボウに食べさせた時など、
腹を抱えて昏倒したあげくに、医者に担ぎこむ騒ぎになったし、
落とし穴づくりに関しては、それはそれは恐ろしい『穴の中身』を用意することで知られていた。 

ある時は裏山の竹ヤブに僕らを集め、なにをするのかと思っていると、
シゲちゃんは「あ、人が落ちそう」と、崖の方を指さして叫んだ。 
見ると、確かに誰かが竹ヤブの端っこから落ちそうになって、竹の子に毛が生えたような細い竹にしがみついている。
それは今にもポキリと折れそうに見えた。 
わあわあ言いながら慌てて駆け寄ると、なんとそれは藁と布で出来た人形で、
シゲちゃんに一杯食わされた僕らは怒ったり、あんまりその人形が良くできていたので感心したりしていたけれど、
間の悪いことに、山菜を採りにきていた近所のおばさんが、そのシゲちゃんの「人が落ちそう」を耳にして、
遠くから僕ら以上に慌てて人形に駆け寄ってきたものだから、
途中で竹の根っこに躓いてスッテンコロリンと転がり、あやうく崖から落っこちるところだった。 
僕らはそのおばさんに叱られ、それぞれの家でしかられ、とにかくさんざん絞られたのであるが、
シゲちゃんはさらに人形の出来が良すぎたせいで、カカシの作成をじいちゃんに命じられ、
家の田んぼと畑のカカシを全部作り直させられていた。


516 :先生 前編  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/21(金) 23:09:22 YUHlb2rI0 
そのあいだシゲちゃんは遊びにも行けずに、うなだれながらカカシをせっせと作っていたのだけれど、
その目の奥には、次のイタズラを考えている光がぴかりと点っていて、
僕らにはそれが、頼もしかったり迷惑だったりしたものだった。 

田舎の暮らしにもすっかり慣れて、シゲちゃんたちほどではないけれど、僕の身体にも日焼けが目立ち始めたある日、
「鎮守の森へ行こう」というお誘いがかかった。 
鎮守の森は、北の山の峰に沿ってズンズン分け入った奥にある。 
高い山に囲まれているせいで、太陽が東や西よりにある時間そのあたりは昼間でも暗くて、
真上に昇っている時でも、生い茂るクスノキやヒノキの枝や葉っぱで光が遮られ、
その森の底を歩く僕らには、ほんのかけらしか零れてこない。
それだから、シゲちゃんとタロちゃんの後を追いかけて、
ようやく鎮守の森の真ん中に佇む神社を見つけた時には、なんだか厳粛な気持ちになっていた。 
今まで太陽の熱が暴れ回る場所で遊んでいたのに、
ここは黒い土に地面が覆われ、空気はしっとりしていて、身体の中から冷えていくような感じがする。
それまでに登ったほかの山や森ともどこか違う。 
「カンバツもほとんどしとらんから」と、シゲちゃんは言った。
そのころはカンバツというのがなんなのか良く分からなかったけれど、
きっとそれをしないのは、ここが鎮守の森だからなのだろうというのは理解できた。 
ひっそりと静まり返った参道を通って、
(後から思い出すと、蝉がうるさいくらいに鳴いていたはずだったのに、確かにその時はそう思ったのだった)
ちんまりした神社の本殿にたどり着く。 
光も影も斜めに屋根や板壁に走り、それがずっと何百年も昔からそこにそうやって張り付いているような気がする。
時どきサラサラと葉っぱの形に揺れて、そんな時にようやく僕は時間の感覚を取り戻した。 
チャリン 
と音がしてそちらを向くと、賽銭箱の前にシゲちゃんが立っている。
ボロボロで苔が生えていて、誰かがお賽銭を回収しているのかどうかもちょっと怪しい。 


517 :先生 前編  ◆oJUBn2VTGE:2009/08/21(金) 23:12:28 YUHlb2rI0 
実は江戸時代くらいからのお賽銭がゴッソリと溜まっているんじゃないかと覗いてみたけれど、
暗くて良く分からず、それでもゴッソリと溜まってる感じでもなかったので、
どうやらここへ参拝にくる人自体がめったにいないんだろうと僕は考えた。 
そして、ズボンのポケットから十円玉を取り出して投げ入れる。 
その神社に何の神様が奉られているのか誰も知らなかったけれど、
チリンというとても良い音がしたので、僕はその音に手を合わせた。 
やがて「もう帰ろうぜ」とタロちゃんが言って、境内から出たがり始める。
心なしか内股でもじもじしている。どうもおしっこを催してきたらしい。
口ばかり達者なくせに恐がり屋な面があるタロちゃんは、
この鎮守の森の奥深くに眠る神社の聖域を、おしっこなんかで汚してしまうことに畏れを感じているようだった。
ようするにビビッてたワケだ。
僕とシゲちゃんはタロちゃんを苛めることよりも、その場を離れることを選んだ。
僕らも僕らなりに、その森になにか近寄りがたいものを感じていたのかも知れない。 

クスノキが枝葉を手のように伸ばす薄暗い参道を抜け、また黒土の山道に出る。
気が焦っているタロちゃんが、「あれ、どっちだっけ」とキョロキョロしていると、
シゲちゃんが「こっち」と、元きた道の方を正しく指さした。
僕はふと、反対方向へ抜けるもうひとつの道に目をやった。
道はすぐに折れ、木立の群に飲み込まれてその先は見えない。この道の先はどこに通じているのだろう。
むくむくと好奇心がわき上がってくる。 
「こっちはなにがあるの」 
そう聞くと、シゲちゃんは「なんにもないよ」と言って、さっさと元の道を戻り始めた。 
僕はその奥へ行ってみたい誘惑に駆られたけれど、
ひとりで鎮守の森に残される心細さがじわじわと胸に迫ってきて、その場に立ちすくんでしまった。 
そうしていると、いきなりバサバサと頭の上の木のてっぺんあたりから大きなものが飛び立つような音と気配がして、
思わず見上げると、
その瞬間に覆い被さるような木の枝や葉っぱやそこから零れる光の繊維が、
ぐるぐると僕の視点を中心に回り出したような感覚があった。 
頭がくらくらしたのとビビッたのとで、森の奥へ行ってみたい気持ちは引っ込み、一目散にシゲちゃんたちの後を追いかけた。

引用http://hosyusokuhou.jp/archives/39626483.html

1
動物園φ ★@\(^o^)/2014/08/13(水) 20:50:18.21 ID:???.net
ローマ法王:韓国に出発へ 元慰安婦の女性らミサに 
フランシスコ・ローマ法王は13日夕(日本時間同日深夜)、 
初のアジア訪問国・韓国に向けて出発する。滞在最終日の18日には、
元慰安婦の女性らが法王の
ミサに出席する。

韓国政府で慰安婦問題を担当する女性家族省を通じて、韓国の教会から招待を
受けたという。
韓国の政府と慰安婦支援団体は最近、国際社会への宣伝強化で日本への圧力を強めて
おり、
元慰安婦のミサ出席もそうした宣伝攻勢に使う狙いがあるとみられる。 


元慰安婦10人が暮らすソウル郊外の施設「ナヌムの家」によると、ここで暮らすカトリック信者の 
女性を含む6人程度が法王のミサに出席する見込み。

法王は社会的弱者に寄り添う「貧者の教会」を
掲げている。法王庁のロンバルディ報道官は、
韓国カトリック教会による元慰安婦の招待についても
「貧者の教会」路線の反映との見方を示した。 

ナヌムの家の安信権(アン・シングォン)所長は「ミサに招待されたが、法王と元慰安婦が
対話
するというようなことは聞いていない」と話す。 

ただ、慰安婦問題を巡っては、バチカンと韓国の間に微妙な温度差も見え隠れしている。 

ナヌムの家は韓国の教会に対し、法王の地方視察にナヌムの家を入れてほしいと要望したが、 
断られたという。法王の日程には、地方の障害者施設へのヘリコプターによる訪問も入っており、 
ナヌムの家の訪問は不可能ではなかったはずだ。

カトリック関係者は「バチカンは(慰安婦問題に
関する複雑な事情を)よく分かっている」と話す。
法王庁が慰安婦問題への過度な肩入れを
避けた可能性もありそうだ。 

バチカンの通信社アジアニュースのベルナルド・チェルベレッラ編集長は「法王は女性や子供の 
搾取について話し、元慰安婦にあいさつすると思うが、慰安婦問題はアジアの歴史における傷の 
一つにすぎない。根本的な問題は南北朝鮮の和解だ」と指摘した。 

ミサには、北朝鮮のカトリック信者も招待されたが、北朝鮮側からは否定的な回答が来ているという。 

20130319_1_2

毎日新聞 2014年08月13日 20時15分 
http://mainichi.jp/select/news/20140814k0000m030069000c.html



2<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 20:51:36.61 ID:q/MlCEBY.net
霊的に無理 


5<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 20:52:25.23 ID:6VQ6epYK.net
また>>2で終わらすw 


293<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 21:54:27.60 ID:M/UdR2hn.net
>>2 
いきなり終わらすなw 


6<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 20:52:52.10 ID:yyGJrB19.net
霊的に生まれかわれ 


7<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 20:53:21.63 ID:12n9zKoT.net
拒否キター 


8<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 20:53:47.12 ID:lQFlaBUB.net
つか、教皇を政治利用しまくろうと必死やな 


12<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 20:56:18.52 ID:Br+i4Umk.net
半島全員、死んでやり直せって言われたろwww 


15<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 20:57:32.33 ID:yOgAPe9V.net
>>12 
火病の鳥「逃しはしない」 


28<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 21:00:34.59 ID:ZjUUFyVR.net
>>15 
ついに、教皇対火病の鳥の戦いが始まるのか 


51<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 21:05:12.75 ID:TkFqr5/U.net
>>12 
ウリスト教は敵だし無理もないな 


3<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 20:51:36.83 ID:zfqnA3bg.net
バチカンの情報収集能力はどのくらいなのか? 
今回の顛末は興味あるな 


108<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 21:16:54.45 ID:8hKIVDLi.net
>>3 
バチカンは全部知ってる 


125<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 21:21:29.40 ID:yy4FEOME.net
>>3 
ああ見えてバチカンは凄いぜwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww 

世界のどこで何が起こって経済状況や政治状況がどうかってことに
関する情報を逐一集めてるからなwwwwwwwwwwwwwwwww 

でないと困ってる人のところに助けにいけないからなwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww 


151<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 21:24:55.74 ID:3vsXNyk9.net
>>3 
自ら集めなくても勝手に集まって来るんだろうな 


198<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 21:37:18.24 ID:Eeihhffh.net
>>3 
カトリックの信者なんて世界のどの階層、どの場所にもいてる。 
その全てが情報提供者だと思ってたほうがいい。 

ようは世界のどの情報機関よりも収集能力は高い。 
あと、情報に対しての管理能力も半端ない。 

って、信者さんが言ってた。 


199<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 21:37:18.37 ID:yMmk4SqM.net
>>3 
世界最大の情報機関と揶揄されるほどの能力 


253<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 21:47:32.32 ID:Xs3Ukjgd.net
>>3 
半島が未だウホウホやってた頃にグローバルだったからな。 


290<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 21:53:57.64 ID:mRjGORlD.net
>>3 
イスラエルのモサドと並んで、小規模国家にもかかわらず世界トップレベルだと
聞いたことがある。 


290<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 21:53:57.64 ID:mRjGORlD.net
元売春婦を権威付けするために、教皇まで利用しようとするとは酷すぎる。 

自分たちの異常性に気づかず、政府の反日政策に踊らされているということにすら
気づいてなさそうだ。 


21<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 20:59:01.89 ID:dxM/nros.net
バチカンの情報収集、分析能力を侮ってはいけない。 
国連は騙せてもバチカンは無理。 


26<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 21:00:19.18 ID:g/XgWLYR.net
>>21 
国連って、ほんとにバカだよな。 

テキサス親父に分かることが、国連には分からないのな。 


164<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 21:27:37.13 ID:P4mOa/KE.net
>>21 
国連はもうわかってやってるだろww 
反日目当てに集まってるく連中がいるから。 


22<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 20:59:17.12 ID:N77VPVG8.net
カトリックにおける「七つの大罪」 
・傲慢 
・貪欲 
・嫉妬 
・憤怒 
・貪食 
・色欲 
・怠惰 
dc96f53ecad03cb7c4f058c326aa5752

まさに韓国 


64<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 21:07:20.13 ID:lwy9Q02V.net
>>22 
嘘  

も入らないのかな 


146<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 21:24:06.27 ID:/1DQ0cqi.net
>>64 
そもそも殺人、窃盗、偽証は十戒に含まれている。「大罪」どころじゃない。 
「七つの大罪」は、起こした罪の結果より、罪を起こす原因となるもの。 


38<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 21:01:57.90 ID:N77VPVG8.net
カトリックにおける「十戒」 

わたしはあなたの主なる神である。 

・わたしのほかに神があってはならない。 
あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。 
・主の日を心にとどめ、これを聖とせよ。 
・あなたの父母を敬え。 
・殺してはならない。 
・姦淫してはならない。 
・盗んではならない。 
・隣人に関して偽証してはならない。 
・隣人の妻を欲してはならない。 
・隣人の財産を欲してはならない。 
cdded2437abbec401cf7131e6858d358


30<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 21:01:13.04 ID:JXBaHRAe.net
あーあ~ 
カトリックの総本山バチカン本部まで呆れさせちゃたw 

フランシスコ法皇を 
国連のチンパン事務総長まで使って政治利用しようとするからだよ 


34<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 21:01:38.34 ID:kKvypOQ5.net
ナヌムの家って園長がパワハラで 
女子職員犯しまくったとこじゃん 

そんな穢れた場所に法王を連れて行こうとしたのかw 



86<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 21:12:23.74 ID:TLujXp7U.net
2001年2月に、当時ナヌムの家の園長で曹渓宗の僧侶でもあった慧眞(ヘジン)が、
女性職員数名に対して地位を濫用して性交渉を強要した事実があったことが暴露された。 

http://ja.wikipedia.org/wiki/ナヌムの家 


41<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 21:03:12.09 ID:hXzfL4pG.net
>ナヌムの家は韓国の教会に対し、法王の地方視察にナヌムの家を入れてほしいと
要望したが、断られたという。 

あらあらまあまあ可哀相(クスッ 


42<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 21:03:21.91 ID:F5lJNEDL.net
プギャー 


78<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 21:10:50.20 ID:sP5Yifw+.net
法皇が黄色人種の都合で動かされ利用されるとか
バチカンが許すわけないだろ 


84<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 21:12:14.34 ID:Vpr+Jo9+.net
さすがにそんなバカチンではなかったな。 


92<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 21:13:57.04 ID:AHP/CuYJ.net
流石法王様だな 


114<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 21:18:46.83 ID:rgqEMK9R.net
バカチンにも捏造がバレバレ。 


141<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 21:23:33.14 ID:FOzaG4jd.net
バチカンの情報収集能力は日本の公安より遥かに上だからな。 
教皇が政治的素人でも取り巻きは優秀って事さ。 


179<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 21:31:25.50 ID:RHaT9XXG.net
バチカンをなめたら大変な事になるぞw 


188<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 21:34:34.21 ID:FoKl2c0I.net
バチカン VS バカチョン 


202<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 21:37:52.51 ID:npzOPCUp.net
法王「まだ霊的に生まれ変わっていないのか...」 


301<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 21:56:25.88 ID:9pifR0a6.net
そりゃただの売春婦の家だもんな 
ローマ法王が行く場所ではない 


304<丶`∀´>(´・ω・`)(`ハ´  )さん@\(^o^)/2014/08/13(水) 21:57:10.34 ID:kq7x4mIG.net
そりゃセウォル号しかり、南北朝鮮人の日頃の行いを見てたらそうなるわなw 
 

引用http://hosyusokuhou.jp/archives/39627238.html

1
シャチ ★@\(^o^)/2014/08/13(水) 19:14:11.32 ID:???0.net
 
朝日が再度、報道機関として信頼を取り戻すことは難しいだろう。
ただ、最低限度やるべきことがある。
それは、これまでのあり方を180度改めるとともに、 
どうしてこんな過ちを続けてきたのかを、国内外に明らかにすることだ。 

そのためにも、木村伊量社長以下、主な関係者は公の場で説明を行うべきだ。
慰安婦の記事を執筆した記者については、
その動機に不純がなかったのか、
十分な取材の上で執筆したのかなど、第三者の検証・調査に応じる必要があるだろう。 


「報道の自由」の範疇に、国などが立ち入るべきでないことは分かっている。
しかし、この件は、日本の国益に大きく関係している。 


朝日に「報道機関」としての誇りと気概がわずかでも残っているのなら、
ぜひ、国会招致を受けてほしい。
一方的な言い分を紙面に載せるだけでなく、
国民の代表である議員の質問に答えてほしい。

そして、堂々と国民に自らの非を認め、謝罪してほしい。
(取材・構成 安積明子)  


三原じゅん子(みはら・じゅんこ) 1964年、東京都生まれ。女優業とともに、医療や
介護問題への関心を強め、
がん撲滅の啓発活動に取り組む。2010年、自ら介護施設の
経営に乗り出す。同年7月の参院選で初当選(比例区)する。
現在、自民党女性局長。 
DPP_0141

ソース 夕刊フジ 記事の一部を抜粋 
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20140813/dms1408131550003-n2.htm



36名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/13(水) 19:21:31.21 ID:/GXZbXU40.net
謝罪は当然にしても謝罪だけで済むのか 


38名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/13(水) 19:21:37.78 ID:8lhJolf00.net
謝罪ではダメ 
廃刊せよ 


39名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/13(水) 19:21:39.68 ID:99IDuXNT0.net
謝罪だあ? 

そんなもんで済ませるつもり?頭下げるだけならタダなんだぞ。 


55名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/13(水) 19:23:53.19 ID:WfRuoTpPO.net
受けて欲しいって、招致したのか? 


73名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/13(水) 19:26:59.43 ID:HnQLXImY0.net
国会に呼んでメディアの在り方をみんなで考えないとな 
個人的な思想と利益のために捏造してまで叩く自由はどんな機関にもあっては駄目でしょ 


107名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/13(水) 19:33:21.28 ID:oTG9iH0x0.net
河野と朝日両方国会に呼んで徹底追及しろ。 


108名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/13(水) 19:33:21.76 ID:i0vKBzPT0.net
証人喚問したの? 


127名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/13(水) 19:35:48.61 ID:oTOp/dKZ0.net
政府としてアナウンスしてみてはどうか。 
テレビコマーシャルで「朝日の慰安婦報道は誤報でした」って。 


132名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/13(水) 19:36:40.94 ID:VgHYPdmn0.net
謝罪しなければ全力で潰すし、謝罪したら責任とって潰れてもらう。 


143名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/13(水) 19:38:41.81 ID:U+UI7wL/0.net
朝日新聞の捏造が謝罪ですむんなら今の死刑囚は全員無罪開放だろ。 


227名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/13(水) 19:51:52.04 ID:iearuIFv0.net
朝日があやまちを認めたんだから、自民党も河野談話を撤回しろよ 


262名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/13(水) 19:58:29.71 ID:OSI2iP+b0.net
朝日の記事を英訳して、世界中にガンガン流せ 
それくらい出来るだろ 


265名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/13(水) 19:59:02.99 ID:g8bSZPIA0.net
売国奴なんだから 

証人喚問をしろよ 


290名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/13(水) 20:03:51.82 ID:dl+dEYna0.net
謝罪だけじゃダメだろ。賠償もセットだよ。 
 
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引用http://hosyusokuhou.jp/archives/39634563.html

1
きのこ記者φ ★@\(^o^)/2014/08/13(水) 23:34:47.36 ID:???0.net
御承知のように先週火曜日、朝日新聞はその「朝刊で、同社のいわゆる従軍慰安婦問題を
巡る報道について、
誤りがあったとして一部を取り消す記事を掲載」しました。 

訂正しないよりはした方が良いに違いないのですが、今時分になって記事を出す此の朝日新聞と
いうのは、
本当に怪しからん大罪を犯したと言わざるを得ないものです。 

32年もの長きに亘り、「第二次世界大戦時に済州島で女性を慰安婦として強制動員したという
吉田清治氏
=故人=の1982年のインタビュー記事」が虚偽だったにも拘らず、
何も言わなかった此の新聞社の罪は
極めて大きいというわけです。 

6日付の読売新聞特集記事「朝日慰安婦報道 要旨と問題点」にも書かれていたように、 
実際問題「吉田氏の証言の信ぴょう性は、90年代半ばには研究者から否定され」多くの識者が
偽記事だと指摘していたわけで、
朝日新聞は本来「国際関係にも重大な影響を与えていることを
踏まえれば早急に事実関係の有無を調査することが
求められていた」と言えましょう。 

今回の一件を受け、安倍首相は「朝日新聞が取り消した証言について、事実として報道された
ことによって
2国間関係に大きな影響を与えたわけです。

そして同時に、全ての教科書にも『強制連行』の記述が出たのも事実です。 

(中略)その報道によって多くの人たちが悲しみ、そして苦しむことになっていくわけです。 

そうした結果を招くということに対する自覚と責任感の下に、常に検証を行っていくということが
大切なのではないか」と
述べられたようですが、之は全くその通りだと思います。 

『河野洋平氏の国会招致を求む』(14年7月2日)というブログでも取り上げた日本政府の報告書、 
「慰安婦問題を巡る日韓間のやりとりの経緯~河野談話作成からアジア女性基金まで~」
(14年6月20日)に関する
一連の状況を見ていても、今回の検証作業は中・韓との現状を
意識して余り深く突っ込むことなく終わってしまった
ような感がします。 

また「慰安婦問題の大誤報」認定の後にあっても、「事実を受け入れることを注文」するといった
類の発言が
出てきている始末ですから、やはり先ずは河野洋平氏や朝日新聞関係者等の
国会招致も含め検討し、
「吉田証言が談話の根拠になっているかどうか」等々その真相を徹底究明すべきです。 

日本の歴史に深く関わる此の問題の解決に当たって「本当はこうだけど、丸く収めるために、 
まぁ取り敢えず黙っておこうか」などと、その歴史的事実の正しさが一時凌ぎで判断されるという
ことは
長い目で見れば大きな間違いであります。 

池田信夫氏も『最初、朝日は吉田清治のいうような「慰安婦狩り」が多数行なわれたと報道したのに、 
それが嘘だとわかると「挺身隊の強制連行」にすり替え、それが嘘だとわかると「強制性」に
定義を拡大してきた』と
指摘されているように、何世代にも亘る一国の民族の誇りにも関わる
重大な史実を捻じ曲げ続けた此の新聞社に対し、
私として非常に残念な思いがしています。 

拙著『何のために働くのか』(致知出版社)にも書いたことですが、大きな書肆(しょし:書店)を
経営していた北尾禹三郎という
私の曽祖父にあたる人は、村山龍平が朝日新聞を作る時
「その地における人望のある人を口説き落とす……という政策」で、 

「北尾さんのところで新聞を売ってくれないか」と依頼にやってきました。 

その縁で禹三郎は北尾新聞舗という販売店を作って大阪一円の朝日新聞の独占販売権を
持つこととなり、
以来この新聞販売事業は祖父の代まで約60年間続いたのですが之は朝日新聞の社史
にも載っていることで、
私はそうした御先祖様の御縁もあって当該新聞を長年読み続けてきました。 

しかし今回、私自身は朝日新聞をある意味許せないと思い、自らその購読を止め読売新聞に
代えました。
之は、私の一種の小さな正義感の現れというものです。 

これ程いい加減な然も何世代にも亘る一国の民族の誇りに関わるような事柄を捏造して書いた記者、 
そしてまた、それを十分検証もせずに喧伝し30年間超もの長き間それを事実かの如き扱ってきた朝日新聞 

---何故こうも杜撰な報道が為されたか、何故その過ちを認めるにこうも多大な時間を要したか、
私として許し難く思います。 

14b73a66-s

http://blogos.com/article/92304/


13名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/13(水) 23:38:09.08 ID:Lm4D7tw+0.net
毎日は選択肢にも入れてもらえなかったんだね 


15名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/13(水) 23:38:47.78 ID:MZsuBw3M0.net
この人のように朝日新聞購読やめる人は多いと思われ 


20名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/13(水) 23:39:30.64 ID:pFB5dq6r0.net
何を今更ww情弱すぎるやろこのおっさんwwwwwww 


25名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/13(水) 23:40:44.61 ID:ec7xXpUK0.net
朝日はダメこもわからんが、ゴミ売りもダメでしょ 


26名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/13(水) 23:40:53.73 ID:716bqvwq0.net
読売の巧妙なステマ


96名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/13(水) 23:58:25.22 ID:08L9C7VM0.net
こいつは孫の手先だぞ 

こいつらがホワイトナイトとしてフジに介入し、バラエティー部から鹿内派を排除 
朝鮮人の巣窟に変えた 

産経の影響下にあるフジの報道(とくダネはバラエティー部製作だから別。
芸能ワイドショー枠だが、徐々に報道を装い始めた番組)以外はクソ反日 



31名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/13(水) 23:41:34.24 ID:CSIFQ2EO0.net
SBIが参戦ってどういう風の吹き回し? 
ここって韓国とずぶずぶだったようなww 


172名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/14(木) 00:16:31.42 ID:RiIaScCO0.net
>>31 
いま韓国の貯蓄銀行にかなりの金額突っ込んじゃってるw 
一年後たぶんトンデモナイ事になってるはずw 


35名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/13(水) 23:42:17.61 ID:7xJZUJU70.net
SBIホールディングスのSBI?って 
ソフトバンク インターナショナルの略? 
韓国系?の会社?? 


62名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/13(水) 23:49:30.41 ID:RAr5D/vS0.net
>>35 
wikiより 

元々ソフトバンクグループの金融関連企業として設立されたため
「SoftBank Investment」の略であったが、その後同グループを離脱し
「Strategic Business Innovator(戦略的な事業の革新者)」の略に変更した。 


131名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/14(木) 00:07:17.13 ID:ckQknjh90.net
こんなのが金を転がして稼いでいるのか?w 
で、朝日新聞に広告も出していたり、取材を受けていたりしたんだろ? 

つーか、SBIって実質韓国系じゃん。 


149名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/14(木) 00:11:21.64 ID:uSR1tNDQ0.net
>>131 
ソフトバンクとは資本的にはもう切れてるよ 


48名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/13(水) 23:45:41.79 ID:Yw73W30L0.net
こういう人は全国紙は全部目を通してるのかと思ってたけど、違うんだね 


49名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/13(水) 23:46:09.96 ID:I5JVSRTeO.net
今になって気付くとかアホすぎだろw 
反日マスゴミの捏造すら見抜けない経営者に先は無いな 


52名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/13(水) 23:47:15.65 ID:YymhaE+00.net
長年アサピー読んでる時点で馬鹿だとわかるわ。 


56名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/13(水) 23:47:54.81 ID:auGU+vC30.net
最終的に東スポ一紙購読に落ち着く 


60名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/13(水) 23:48:49.08 ID:A+6utPZ30.net
おせえよバカ 


61名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/13(水) 23:49:06.36 ID:N08DVgZz0.net
言いたいこともあるだろうが、ここは褒めとけよ。 
地位も金もある人間がこの手の発言するケースは稀なんだから流れを大事にしろ。 
2ちゃんの名無しの発言とは価値が違うんだよ。 



69名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/13(水) 23:50:37.85 ID:bM5ed4EL0.net
>>1 
社会的に影響力のある人がどんどんこのような、朝日を非難するような 
当たり前の発言をして欲しい 



81名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/13(水) 23:54:13.43 ID:SOTUUulG0.net
長年なんて遅れてるよ。北尾さん。 


95名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/13(水) 23:58:11.14 ID:o/RaZ/AW0.net
こうやって今まで鈍感だった購読者もどんどん離れていく。 
購読契約が一通り満了したら継続してもらえるかな?新規は相当厳しいだろうな。 


106名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/14(木) 00:01:05.47 ID:Qlevj8QIi.net
うわべだけでも転向したものを叩くのは正しくないな 
取りあえず歓迎して多数派にしとかないと 
転向できない臆病者をただの頑固者にさせるだけだぞ 


122名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/14(木) 00:03:54.12 ID:Bfq+Fb7N0.net
>>106 
そうだよな 
なんでも取りあえず叩くってのは良くない 
まあそれが2ちゃんなんだろうが 


108名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/14(木) 00:01:12.85 ID:Xc6CckhU0.net
読売でいいのか 
ここはネタとして日刊ゲンダイだと 
面白いのに 


116名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/14(木) 00:02:45.69 ID:lN0BinaE0.net
これで実質購読者がどんどん減っていくのはいいことだ 
そのうち押し紙で部数の9割以上占めるようになるぞwww 



218名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/14(木) 00:26:05.11 ID:4jyy5z8k0.net
結構大物のコメント 


224名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/14(木) 00:26:35.94 ID:xbAuZh5z0.net
フジテレビをあんな風にした張本人のくせに白々しいwwwwww 


241名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/14(木) 00:31:32.30 ID:96MT5ZaS0.net
北尾は知らなかったのか? 
吉田証言が嘘だって話はほとんどの人が知ってることだと思ってた 


254名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/14(木) 00:33:57.33 ID:WAYjMVwN0.net
>>241 
知っててやめたかったけどしがらみがあるからやめられなかった 
これで心置きなく購読を止められるばんざーいって話 


284名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/14(木) 00:42:39.52 ID:3iTe/yqx0.net
>北尾新聞舗という販売店を作って大阪一円の朝日新聞の独占販売権を持つこととなり、 
>以来この新聞販売事業は祖父の代まで約60年間続いたのですが之は朝日新聞の社史にも
載っていることで、
私はそうした御先祖様の御縁もあって当該新聞を長年読み続けてきました。 

家業で朝日新聞を販売してた人まで朝日新聞を見捨てて読売に変えたよ 


287名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/14(木) 00:46:06.53 ID:NUy4UqlF0.net
北尾家と朝日にそんな歴史があったのかw 


299名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/14(木) 00:51:19.11 ID:pEtXZQu70.net
>>287 
結構朝日新聞にとって、象徴的な家柄なんじゃないのか?この人の家って 


331名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/14(木) 01:02:38.86 ID:+ZQiRp2A0.net
こういう風に解約を表明してくれるのはありがたいね 
他の企業主や官公庁も続いてくれ 



366名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/14(木) 01:14:01.77 ID:SIyuv8zqQ.net
曾祖父の代から続く朝日新聞との関係を完全断絶か。 
発信力がある人のこういう発言は効果あるだろうな。 


373名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/14(木) 01:15:11.44 ID:yrQs+Q9T0.net
>>366 
だね 
わざわざ発言してくれるのはGJだよ 


374名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/14(木) 01:15:52.16 ID:QbKlTtjW0.net
>>366 
朝日新聞創設期から関係がある家計の大物が 
朝日新聞切ったんだからな100年くらいか購読してたの 
これはデカイ 


594名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/14(木) 07:08:22.24 ID:hH5y8YK60.net
遅いけどこういう発信は大事 
みんなオレに続けってことだろ 


665名無しさん@0新周年@\(^o^)/2014/08/14(木) 09:09:30.07 ID:y1W8pula0.net
>私はそうした御先祖様の御縁もあって当該新聞を長年読み続けてきました。 

こんな義理堅い人まで購買止めさすなんてもう末期だな朝日新聞は 
 
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朝日新聞は何故反日記事を書くのか、何故捏造記事を書くのか

それを問いただしました 。

役職者に聞いたのですが、どうやら記者に朝鮮人が多いそうです。

入社する時に外人枠があるのも事実だそうです。

話を聞いてみると、どうも役職者に黙って反日捏造記事を書いているという結論に達しました。

しかし、どこでだったか忘れましたが、朝日新聞の幹部が故三宅久之氏に言った言葉

『安倍政権打倒は朝日の社是である』と言ったそうだ。

今日僕に話した事はウソだった可能性が高いのではないだろうか。

なんにせよ、日本人を貶める新聞社など、とっとと潰れて欲しいものだ。

アザゼル 
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1 :名無しさん@おーぷん :2014/08/12(火)23:44:46 ID:???
           ;┌─┐;
           ;|●|
 . ;/\        ├─┘    /\ ;
 ;< ● \    _|___   / ● >
  ;\/ ;\/___ノ(_\/  \ /;
       ;/_愛●国_.\;
     ;/ノ(( 。 )三( ゚ )∪\; 
    ;.| ⌒  (__人__) ノ(  |.; ネトウヨという言葉じたいヘイトスピーチじゃね?
    ..;\ u. . |++++|  ⌒ /;  
     .;ノ   ⌒⌒    .\;

【ヘイトスピーチの定義】

ある個人や集団を、【人種(民族)・国籍・性】といった先天的な属性、あるいは
【民族的文化】などの準先天的な属性、あるいは【宗教】などのように人格との結び付きが
密接な特別の属性で分類し、それを有することを理由に、差別・排除の意図をもって、
貶めたり、暴力や誹謗中傷、差別的行為を煽動したりするような言動のことを指す。

【人種(民族)・国籍・性】→明らかに該当しない
【民族的文化】→明らかに該当しない
【宗教】→該当するかも

ネトウヨって宗教なの? 

323 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:48:26 ID:???
>>315
ネトウヨっていうかチョン中毒だよな 

324 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:48:34 ID:???
>>138
正義のみかたきどりw 

325 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:48:49 ID:???
>>324
それネトウヨ 

326 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:49:11 ID:???
>>138
自分でこういうこと言うから左翼は信用できないんだよな 

327 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:49:24 ID:???
>>138
きも 

328 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:49:28 ID:???
「ネトウヨ」がネット+右翼で侮辱的な意味を含まないのに対して

ネトウヨが使う「ブサヨ」は不細工(蔑称)+左翼 だもんな

ネトウヨの品の無さが見て取れるw 

329 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:49:44 ID:???
ずーっと>>138にレスし続けてる人ヒマなんだね 

330 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:49:45 ID:???
>>138
キモい隊おつ 

331 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:50:01 ID:???
>>325
ブサヨにとっても都合悪いのな 

332 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:50:09 ID:???
欧米の左翼(リベラル)と日本の左翼(サヨク)

欧米の左翼:「○○であるならば△△である。ゆえに□□すべきという結論が導き出される」
日本の左翼:「だって、だって、○○さんたちがかわいそうでしょ~」

欧米の左翼:自国を愛するがゆえに、自国をもっとより良い社会にしようと思い、左翼になる。
日本の左翼:中高生の時に悲惨なイジメに遭ったため、日本社会全体を憎悪し、左翼になる。

欧米の左翼:常に現実と向き合う。
日本の左翼:常に現実から逃避する。

欧米の左翼:政府のやり方に反対する場合は、できる限り、具体的対案を提示することに努める。
日本の左翼:はなっから具体的対案を提示しようとは考えないし、低IQゆえにそうした能力を持ち合わせていない。
        「政府のやり方に反対するカッコイイボク」に自己満足するのが目的。

欧米の左翼:自明の原理を疑う。なぜか。新しい哲学と政策を作るために。
日本の左翼:自明の原理を後生大事にする。なぜか。内輪で盛り上がるために。

欧米の左翼:あらゆる既成概念を疑うことから、全ての思考が始まる。
日本の左翼:「平等」「平和」「正義」といった薄っぺらい観念をそのまま信じ込むだけで終わる。

欧米の左翼:異なる価値観の交差。
日本の左翼:異なる価値観の排除。

欧米の左翼:基本的にプラス評価。「○×は大切だ」「□▲には価値がある」と訴える。
日本の左翼:基本的にマイナス評価。「○▲はいけない」「断固反対する」「○□はやめろ」と叫ぶだけ。 

333 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:50:17 ID:???
>>329
某有名半コテだから触れちゃだめだよ 

334 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:50:26 ID:???
>>138
キモいよ 

335 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:50:38 ID:???
>>138
笑えるw 

336 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:50:38 ID:???
>>328
なんか悪あがきはじめたwww 

337 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:50:42 ID:???
韓国はすごい国です 誇らしい
日本必要ないんです 


だから日本に関わらないでください 

338 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:50:44 ID:???
>>333
なんでわかるの? 

339 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:50:58 ID:???
>>328
サヨクにとっては、ネットも右翼も侮蔑用語なんやで 

340 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:51:07 ID:???
>>336
瀕死で強がるなよwwww 

341 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:51:11 ID:???
>>138
キモいな 

342 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:51:21 ID:???
万引き犯 

343 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:51:24 ID:???
>>339
は? 

344 : :2014/08/13(水)00:51:37 ID:???
自らの自由な意思で変えられない属性に向けられるのがヘイトスピーチ
ネトウヨが自分たちのやっていることが神道系の新宗教と正面から認めれば
ヘイトスピーチに準ずるものと考えてくれる人もいるかも。 

345 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:51:52 ID:???
>>332
ネトウヨは海外の左翼事情に精通してるのか?w
それとも単なる願望なのか?w

残念ながら後者の可能性が高いようだw 

346 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:51:53 ID:???
ブサヨを自称してる人が実在するという願望 

347 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:51:53 ID:???
>>340
これ強がりか? 

348 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:52:08 ID:???
サヨク・朝鮮人のロジック

●ネトウヨ側発言
常にソースを求める
ソースを張るとコピペだと言って絶対に見ない
ネットの情報だと「ネットデシンジツ(笑)」と言う
ソースを出すと捏造といい始める

●サヨク・朝鮮人(自身)側発言
絶対に自分からソースを出さない、求めても滅多に出さない
渋々だしたソースコピペを張って見ろという
なぜかそれはネット情報(笑)だったりする
ソースを疑いだすと、「悪魔の証明」などの理屈に走り始める 

349 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:52:10 ID:???
>>138
キモいな 

350 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:52:35 ID:???
>>347
自分のレスなんだから自分で考えろよ 

351 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:52:42 ID:???
>>138
きもーい 

352 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:52:51 ID:???
>>348
真逆じゃね 

353 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:53:26 ID:???
そろそろ飽きたな

反応がなくなったw 

354 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:53:47 ID:???
ネトウヨ敗走 

355 : :2014/08/13(水)00:54:11 ID:???
ネトウヨは宗教と考えるようにすればいいと思う。異常なのが当然。 

356 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:54:17 ID:???
>>350
自分の発言なのに人任せか 

357 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:54:24 ID:???
>>138
確かにキモいな 

358 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:54:40 ID:???
滅チョン教 

359 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:54:45 ID:???
>>348
自爆してるぞネトウヨw

これまでのレス見てみw 

360 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:54:46 ID:???
まだいるようですね


361 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:54:57 ID:???
>>356
えっ 

362 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:54:59 ID:???
587??名前:無党派さん[sage]??投稿日:2010/06/15(火)??10:37:44.40?鶴D:et1HqGNy??[1/2]
いやぁνはいいね、「何だネトウヨか」っていえば
黙るから。いろいろ便利だわw。
頑張ってきた会があった

594??名前:無党派さん[sage]??投稿日:2010/06/15(火)??10:44:05.36?鶴D:HiS6TkYw
587
イメージを固定化したモン勝ちだな

598??名前:無党派さん[sage]??投稿日:2010/06/15(火)??10:47:22.86?鶴D:et1HqGNy??[2/2]
594
ホントそうw
「ネトウヨ=ダサイ」「俺はネトウヨみたいにダサくない!(キリッ」
って刷り込めばもうこっちのモノよ。
これがどんどん広がればいいのだけど
+でも2つ使ってやっているけど流れがあれだからなかなかできない。
まぁ時間の問題だわな。

600??名前:無党派さん[sage]??投稿日:2010/06/15(火)??10:49:54.71?鶴D:M/cVAyBb??[4/4]
598
昔の学生運動の沈静化法と同じだな。

603??名前:無党派さん[sage]??投稿日:2010/06/15(火)??10:51:55.83?鶴D:8NFNQtCR??[1/2]
598
まぁ無印の方は、とにかく+みたいな馬鹿と違うwって
いわせたもの勝ちだから。
ネトウヨダサイ運動は周りでもやっている。

■「ネット右翼」という言葉を作った目的

中国、韓国、北朝鮮、創価学会への批判者??を「ネット右翼」と認定することで「それらの団体がなぜ批判されているのか」を議論させない(or聞く耳を持たせない)
反日活動家が自分たちの都合の悪い情報を隠蔽したり誤魔化したりするときに使う。
この言葉を使うときの特徴は、何の論理的根拠も無く「ネット右翼」「ネットウヨ」「ネトウヨ」という一言で済ませ、レッテルを貼る。
在日を批判している一部の市民団体や一般市民を、危険な右翼団体の主張であると国民に思わせる。

■使用例

ネトウヨ必死だなwww
ネトウヨ乙
バカウヨ
アホウヨ


363 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:55:16 ID:???
>>343
発言みてりゃ分かるが、
ネット→不確かな物、軽薄な物などなど
右翼→軍国主義、戦争推進、レイシストなどなど
こういう固定観念があるんや

は?と思うやろ?まあ戦後からこうやから 

364 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:55:26 ID:???
>>348
逆だな
ソースはこのスレの流れ 

365 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:55:42 ID:???
>>138
キモいよ 

366 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:56:04 ID:???
わかった

ネトウヨ降臨で話が逸れまくったけど本題に戻ろう

ここは韓国の話をするスレではない

「ネトウヨは宗教」という結論でいいかな? 

367 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:56:30 ID:???
>>366
うん
だってカルトじゃん 

368 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:56:32 ID:???
これでネトウヨが増加しないわけない。


1 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:40:50 ID:BCJbYRrcu
日本人はいまだに日本語しか喋れない奴多いw
議員までも日本語しか喋れない人多い。




韓国人中国人は母国語 英語日本語が喋れる

日本人が日本に何でもあるから
わざわざ海外行く必要が無い
だから海外の行き方や飛行機が乗り方がわからない奴が多い





中国人韓国人はパス取って海外に住んで勉強する

日本人はわざわざ金貯めて海外にすんで勉強しようとする奴少ない
いたとしても料金は全額親持ち。





あなたたちはこれで韓国人中国人より上と言えるの? 

369 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:56:33 ID:???
~初心者でもよくわかる「ネトウヨ」~


■サヨク・朝鮮人が問題を起こす
< `∀´ >「独島は韓国領土!」

□マスメディアに取り上げられる
(-@∀@つ「韓国は竹島(独島)を領土として主張しており~」

□ニュース板にスレが立つ
m9(・∀・)「「韓国は竹島(独島)を領土として主張しており~」」

○雑談が始まる
(´・ω・`)「これオカシイよなー」 (´・ω・`)「また馬鹿な主張してる…」

●朝鮮人・サヨクが沸く
< `∀´ >「独島は韓国領土!」

○住人が否定する
(´・ω・`)「いや、日本領土だし」

●ネトウヨ認定     
< `∀´;>「だ、黙れネトウヨ!」

○反論したり、ソースを出す
(´・ω・`)つ「大体にして李ラインは国際法違反で~」

●論破されて消える
< #`Д´# >「ネトウヨとなんて話にならないニダ!帰る!」 

370 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:56:43 ID:???
>>366
587??名前:無党派さん[sage]??投稿日:2010/06/15(火)??10:37:44.40?鶴D:et1HqGNy??[1/2]
いやぁνはいいね、「何だネトウヨか」っていえば
黙るから。いろいろ便利だわw。
頑張ってきた会があった

594??名前:無党派さん[sage]??投稿日:2010/06/15(火)??10:44:05.36?鶴D:HiS6TkYw
587
イメージを固定化したモン勝ちだな

598??名前:無党派さん[sage]??投稿日:2010/06/15(火)??10:47:22.86?鶴D:et1HqGNy??[2/2]
594
ホントそうw
「ネトウヨ=ダサイ」「俺はネトウヨみたいにダサくない!(キリッ」
って刷り込めばもうこっちのモノよ。
これがどんどん広がればいいのだけど
+でも2つ使ってやっているけど流れがあれだからなかなかできない。
まぁ時間の問題だわな。

600??名前:無党派さん[sage]??投稿日:2010/06/15(火)??10:49:54.71?鶴D:M/cVAyBb??[4/4]
598
昔の学生運動の沈静化法と同じだな。

603??名前:無党派さん[sage]??投稿日:2010/06/15(火)??10:51:55.83?鶴D:8NFNQtCR??[1/2]
598
まぁ無印の方は、とにかく+みたいな馬鹿と違うwって
いわせたもの勝ちだから。
ネトウヨダサイ運動は周りでもやっている。

■「ネット右翼」という言葉を作った目的

中国、韓国、北朝鮮、創価学会への批判者??を「ネット右翼」と認定することで「それらの団体がなぜ批判されているのか」を議論させない(or聞く耳を持たせない)
反日活動家が自分たちの都合の悪い情報を隠蔽したり誤魔化したりするときに使う。
この言葉を使うときの特徴は、何の論理的根拠も無く「ネット右翼」「ネットウヨ」「ネトウヨ」という一言で済ませ、レッテルを貼る。
在日を批判している一部の市民団体や一般市民を、危険な右翼団体の主張であると国民に思わせる。

■使用例

ネトウヨ必死だなwww
ネトウヨ乙
バカウヨ
アホウヨ 

371 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:56:49 ID:???
>>366
俺のスレを取んなよ 

372 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:57:00 ID:???
>>366
と朝鮮人が申しております。 

373 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:57:09 ID:???
>>138
とりあえずお前はキモいな 

374 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:57:37 ID:???
~初心者でもよくわかる「ネトウヨ」VIP版~

●朝鮮人・サヨク・馬鹿が反日スレを立てる
< `∀´ >「ネトウヨは馬鹿!独島は韓国領土!」

○ネトウヨが否定する
(´・ω・`)「いや、日本領土だし」

●ソースを求める
< `∀´; >「黙れネトウヨ!証拠を出すニダ!」

○ソースが出る  ※1
(´・ω・`)つ「ほい、これ」

●ソースを否定する
< `Д´# >「捏造情報乙!ネットで真実!まとめブログ洗脳!」

○ソースを求める
(´・ω・`)「じゃあ、反論かそっち側の主張の証拠だしてよ」

●ソースが出ない
< #`Д´# >「悪魔の証明なんてできるか!ネトウヨめっ!話にならない!帰る!!!」    
< #`Д´# >「まず、ネトウヨ側が正確なソースを出すことが先ニダ!」――――→※1に戻って繰り返し

後日別スレ
●ネガキャンに走る
< `∀´ >「ネトウヨは捏造ソースに踊らされてる馬鹿ニダよ」
< `∀´ >「ネトウヨなんてそんなモノだよ」
(^p^ ) 「そうなんだ!ネトウヨって捏造された情報を信じてる馬鹿なんだね!」 →最初に戻って繰り返し 

375 : :2014/08/13(水)00:57:38 ID:???
>>363
ネトウヨは支持を集めるには一旦移民を受け入れて、社会保障問題を起こして、国家社会主義を主張するといいよ(皮肉) 

376 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:57:45 ID:???
>>372
出たー!願望レッテル貼り
修行かなんかですか? 

377 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:57:49 ID:???
>>366
最高な宗教じゃん

俺もはいろうw 

378 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:57:54 ID:???
>>345
多くのまっとうな国ではレッドパージが行われて、
わりとまっとうな左翼がいるけど、日本にはまっとうな左翼なんて存在しないよ。 

379 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:58:07 ID:???
>>138
お前はキモいけどな 

380 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:58:14 ID:???
ネトウヨ敗走パターンコピペ連投入りまーす 

381 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:58:25 ID:???
>>376
とかやってるとますます嫌われるよ?
居場所なくなったらどうすんのw 

382 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:58:29 ID:???
>>378
ソースは願望 

383 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:58:31 ID:???
>>138
本気できもっす 

384 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:58:34 ID:???
>>368
何をもって上なの? 

385 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:58:43 ID:???
やはりこいつがダントツだったな。


138 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:18:28 ID:???
左翼は弱者に味方し権力に立ち向かうが

ネトウヨは権力にへつらい弱者を貶める存在だからな

女にもてないのも仕方はないw 

386 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:58:55 ID:???
>>366
「ネトウヨ叩きは宗教」だな
やってる事がスターリンソ連の内ゲバと全く同じ 

387 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:58:58 ID:???
>>366
いいねー 

388 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:59:03 ID:???
>>381
本当にやめたほうがいいよな願望レッテル貼り 

389 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:59:17 ID:???
>>138
とりあえずきもいよ 

390 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:59:30 ID:???
>>382
例えばフランスの議会なんかで、
軍備削減に左翼が反対してるという事実は知ってる?
願望とか決めつける前に、日本の左翼の正体を知らなきゃねぇ。
そもそも共産主義による闘争って何かわかってる? 

391 :名無しさん@おーぷん :sage :2014/08/13(水)00:59:32 ID:???
■関連スレ

自らが作り出した「ネトウヨ」という形のない影に怯える在日
(p)http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1406853572/


392 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:59:53 ID:???
>>390
説明できないことを知ったかしない方がいいよ 

393 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)01:00:02 ID:???
>>388
ようテョンw 

394 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)01:00:24 ID:???
>>393
また願望レッテル貼りwwww 

395 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)01:00:24 ID:???
ネトウヨは分身できるんだぜ

舛添がなんか言ってたじゃん 

396 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)01:00:33 ID:???
さらしあげー


138 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:18:28 ID:???
左翼は弱者に味方し権力に立ち向かうが

ネトウヨは権力にへつらい弱者を貶める存在だからな

女にもてないのも仕方はないw 

397 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)01:00:38 ID:???
>>392
頭悪すぎるな 

398 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)01:00:49 ID:???
>>396
もっと広めよう! 

399 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)01:01:00 ID:???
>>394
願望しか言えないのな


400 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)01:01:09 ID:???
>>397
だよな
知らないくせに知ったかするからダメなんだよ 

401 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)01:01:16 ID:???
>>138
とりあえずきもいよ 

402 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)01:01:31 ID:???
>>399
だって事実願望なんだもの 

403 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)01:01:37 ID:???
>>400

>>392が頭悪すぎるといってるのだが?w 

404 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)01:01:37 ID:???
>>396
これコピペにできるよなw

ブサヨがこんな馬鹿な事考えてるってw 

405 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)01:01:46 ID:???
>>398
wwwwwww

138 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:18:28 ID:???
左翼は弱者に味方し権力に立ち向かうが

ネトウヨは権力にへつらい弱者を貶める存在だからな

女にもてないのも仕方はないw 

406 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)01:02:01 ID:???
>>404
広めよう広めよう! 

407 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)01:02:02 ID:???
■関連スレ
(p)http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1407858050/l50

私は一応韓国人ですが、なんで韓国人嫌いなの?wwww

1 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)00:40:50 ID:BCJbYRrcu
日本人はいまだに日本語しか喋れない奴多いw
議員までも日本語しか喋れない人多い。




韓国人中国人は母国語 英語日本語が喋れる

日本人が日本に何でもあるから
わざわざ海外行く必要が無い
だから海外の行き方や飛行機が乗り方がわからない奴が多い





中国人韓国人はパス取って海外に住んで勉強する

日本人はわざわざ金貯めて海外にすんで勉強しようとする奴少ない
いたとしても料金は全額親持ち。





あなたたちはこれで韓国人中国人より上と言えるの? 

408 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)01:02:26 ID:???
>>402
他人の願望がわかるエスパー降臨 

409 :名無しさん@おーぷん :2014/08/13(水)01:02:30 ID:???
>>398
一般人じゃないw

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