589:本当にあった怖い名無し:2006/06/25(日) 14:20:23 ID:M1v3LD4h0
「スパイ」 
ある国(A国とする)の酒場で、その国の王の武勲を称える歌が歌われていた。 
みな喜んで聴いていたのだが、一人の男が「武勲なんて嘘だ!」と叫んで、 
いい気分を邪魔された客達に小突き回される。 
主人公の吟遊詩人に助けられた男は、なぜこんな真似をしたかと話し始める。 

男の正体はスパイ。以前の戦では、攻め込む予定の隣国(B国とする)への潜入任務を命ぜられていた。 
いわゆる「草」と呼ばれる任務で、まずはB国に何年も住み込み、周囲の完全な信頼を得る。 
そして戦が始まると、内部から手引きをしてA国を勝利へ導くのだ。 

男は命令どおりB国へ潜入し、ある大商人の家へ奉公人として雇われた。 
何年も過ごすうちに大商人に認められるようになり、将来の後継者として一人娘を妻に迎えるまでになった。 

やがて戦が始まった。男は大商人の後継者からスパイへと戻り、任務を忠実に実行した。 
B国は壊滅し、A国の大勝に終わった。 
男は王から褒賞をもらうも、その心は空虚だった。 

家族を探して廃墟をさ迷い歩く男。その結果、愛する妻は兵達に犯され自害した事実を知る。 

男は詩人に語りかける。 
「なあ、信じられるかい?あんたの目の前にいる男は、戦を勝利に導いた英雄なんだぜ?」 



525:餓鬼1:2006/06/24(土) 13:20:55 ID:NneEOOew0
もしかしたらとっくに既出かもしれないけど 
エコエコアザラクと同じ作者の漫画。タイトルは餓鬼。 

少年と犬が地下室に閉じ込められている。 
必至で出してと叫ぶが誰も助けに来ない。 
実は少年の父親は再婚で、後妻に入った女は子供嫌い。 
世話をするのがうっとおしいので邪魔な先妻の子を殺そうと 
団地の地下倉庫に閉じ込めたのだ。 
犬を一緒に閉じ込めたのは一人で餓死するのは淋しいだろうから 
せめての心遣いだそうだ。 

少年の父親である旦那には自分の田舎に遊びに行っていると嘘をついて 
誤魔化していた。 

そうこうするうちに時間がすぎ、少年と犬はだんだん餓えていく。 
長靴をかじり餓えをしのぐ少年。 
犬は実は妊娠していて地下室で子供を産む。 
犬ももうガリガリにやせ細っている。 

そして餓えが極限に達した少年はとうとう犬の赤ちゃんに食らいつく。 
母親犬はそれを見て怒り、少年に襲いかかるが少年はそれでも 
必死に子犬を食らい続ける。 
だが結局、少年は生きたまま母親犬に手足を食われてしまう。 



526:餓鬼2:2006/06/24(土) 13:21:32 ID:NneEOOew0
少年がどうなったか様子を見に来た継母は母親犬に襲われ 
これも生きたまま食われてしまう。 

朦朧とした意識の中、少年は幻を見る。 
自分を助けに来てくれた優しい母親(継母)の姿を。 
------完。 

子供と動物が酷い目に遭う話は本当に辛い。 
継母にも天罰が下ったのはまだ救いがあるけど、子供はたぶん 
助からないと思うし、マジでムカムカする。 



534:本当にあった怖い名無し:2006/06/24(土) 14:29:36 ID:hsoJSF6i0
筒井康隆の「母子像」 

主人公が赤子の息子に買ってあげたサルの人形は特殊な能力を持っていた。 
そのサル人形を持っていた息子の右手が、空中から消えてなくなっていたのだ。 
このときは主人公が気づいて、あわてて赤子をこちら側に引っ張り、事なきを得た。 
サル人形は、持っている人を異次元に引きずりこむ性質があった。 

その後、赤子と妻が蒸発した。 
何度か「向こう側」から助けを求めて、ぼうっとした姿で浮かび上がる妻と子。 
だが、主人公には助けるすべがない。触ることもできない。 

何度目かの時、サル人形だけが奇跡的に主人公の手に戻ってきた。 
二人を助けるために常にサル人形を右手に持つ主人公。 
気が狂いそうになりつつも、数日が過ぎ、ついに右手が消えはじめる。 
そのとき妻の声がはっきり聞こえ、消えていく右手に左手を添えて両手を異次元に持っていく。 
左手で妻の足を掴み、「こちら側」へ引っ張る。 
足、腰、手、胸、と下半身から順々にだんだんこちらの世界に戻ってくる妻と抱かれた赤子。 
あともうすこしだ! 
主人公は矢も盾もたまらず、両手で一気に妻と子を「向こう側」から引き摺り下ろした。 

そこには首から下だけになった妻と赤子がいた。 
サル人形を手放したために、首から上は異次元に取り残されたままになったのだ。 
サル人形は「向こう側」に残り、もはや二人を戻すすべは無い。 
だが首がなくなっても、二人は生きていた。 
首が異次元に残った副作用で、妻と子はその後、まったく歳をとらなくなった。 
主人公はいつまでも若々しい妻を見て、このほうがよかったのかもしれない、などと思う。 
[完] 

これでおしまい。何の救いも無し。 
自分のせいで妻と子がひどいことになったのに、 
「このほうがよかったかもしれない」はないだろう… 



544:本当にあった怖い名無し:2006/06/24(土) 17:13:06 ID:uGd2VYlP0
ちょっと思い出した昔話「かかの首」。「ヨメさんの首」って意味。 
ある所に仲の良い若い夫婦がいたのだが、ある日ダンナの留守中に 
山姥が来て、嫁さんをガリガリ食べてしまう。首から下は全部食べ、 
首だけ残る。で、残りは次に来たとき食べようと、戸棚の中にしまって帰る。 
帰ってきたダンナ、嫁がいないので呼ぶと、戸棚の中から悲しげな声が。 
開けてみると、首だけの嫁が泣いている。あわてて取り出し、慰めるダンナ。 
しばらく首と暮らすも、だんだん鬱陶しくなってくる。 
それである晩、寝ている首を持って遠くの空き地へ行き、投げ捨てることに。 
ところが寸前で目覚めた嫁さん、たもとをがぶりと噛んで話さない。 
ひどいよう、捨てないでよう、という恨みがましさにダンナ、たもとをちぎって走る。 
首は、空を飛んで追ってくる。悲しみと怒りに、その形相はもう人間ではない。 
ついに走れなくなったダンナにせまる首。ダンナは最後の力で、首を地面にたたきつける。 
と、首は動かなくなった。気づくとそこは一面、菖蒲の畑。 
首は菖蒲の尖った歯に串刺しになって、死んだのだった。 
それから、菖蒲は魔よけに使われるようになったという。めでたしめでたし。 

……って、ひどくない? 



545:本当にあった怖い名無し:2006/06/24(土) 17:27:05 ID:MwcyWtbl0
>>544 
うわ、確かに酷い 



549:本当にあった怖い名無し:2006/06/24(土) 18:17:00 ID:gOiR5KTo0
・・・まぁ首だけになっても生きている時点で人外になっちゃってる 
んだろうから、それはそれで慈悲なんだろうけど・・・。 
昔話は当時の時代背景も反映したものだから、後味悪いの多いね。 

俺が知ってる昔話で後味悪かったのは、ある村の裕福な庄屋の家で 
小豆がわずかだが盗まれた。犯人は近くに住んでる村一番の貧乏な男に 
違いないと思って、早速男の家を訪ねる。 

家には男の子供がいたので、庄屋は裏を取る為その子供に昨日の晩に 
何を食べたか聞いてみると「赤いまんま(ご飯)食べた」という。 
貧乏な男がそんなものを与えられるはずが無く、間違いなく自分の家から 
盗んだものを食べさせたに違いないと庄屋は確信する。 

しばらくして畑仕事から戻ってきた男を、庄屋は襟首掴んで表に引きずりだし 
「私の家から小豆を盗んだろう!」と糾弾する。 
しかし身に覚えの無い男は、当然何のことか分からず否定。 
庄屋は「とぼけても無駄だ。お前の子供が赤いまんま食うたといったぞ! 
貧乏なお前がそんなもの持ってるはずが無いだろう!」と尚も詰め寄る。 

そのうち近くの村人も騒ぎを聞きつけて集まってくるも、空気は貧乏な男を 
疑ったものになっていき、誰も男を弁護してくれない。 
進退窮まって、半分狂ったようになった男は子供をつれてきてあっと言う間に 
持っていた鎌で子供のお腹を裂いてしまう。 

子供のお腹から出てきたのは、赤がえる。食べるものも無かったので子供は 
飢えを癒す為に、赤がえるを食べそれを「赤いまんま」と言ったのだった。 

「許してくれ!」と泣き伏す庄屋と、気まずそうにする男に疑いを向けていた村人達。 
男は鎌をもったまま、呆然と立ち尽くしているだけだった。 



550:本当にあった怖い名無し:2006/06/24(土) 18:29:30 ID:sjfsf80qO
うわああぁぁぁ。・゚・(ノД`)・゚・。 



563:本当にあった怖い名無し:2006/06/25(日) 00:55:38 ID:hDnTWhYj0
旅の母娘の話で思い出した。昔アンビリかなんかでやってた話。 

パリかどこかの万博にやってきた母娘。手近なホテルに宿をとった。 
ところがインドからやってきた二人のうち、母親の具合が悪くなってしまった。 
娘は医者を呼びに行き、少しの間ホテルから離れた。 

ホテルに帰ってきた娘はフロントに行き、部屋の鍵をもらおうとした。 
ところがフロントは「あなた様は知らない」と言う。 
「今出て行ったばかりの者よ!母に会わせて!」とわけのわからなくなった娘は 
無理やり泊まっていたはずの部屋へ行く。 
部屋に行けば、母と荷物があるはずだから証拠になると娘は思っていた。 
だが部屋に行けば、母も荷物もなく出る前と内装すら違う始末。 
「何か勘違いをしていたのでは」とフロント。 
グルでからかっていると娘は警察に訴えるが、娘の言う証拠は何もない。 
キチに思われた娘は精神病院に入れられてしまう。 
「私が合ってるはずなのに……」と本当に娘は病んでしまう。 

で、しばらくして娘に一通の手紙が届く。 
あの時、本当は娘の言っていることのほうが正しかった。 
何故あんなことをしたかというと、母親は実はペストになっていたのだ。 
万博が始まる前に、ペスト患者が出たなど言えるはずもない。 
医者が娘よりも先に駆けつけたとき、既に母親は虫の息ですぐ息をひきとった。 
そこで具合の悪いものなどいなかったことにしようということになった。 
こっそり母親の遺体と荷物を持ち出し、部屋の内装まであっという間に変えて 
後は娘をキチ外にすればいいだけという計画があったようだ。 

娘悲惨すぎ。 



568:再生1:2006/06/25(日) 02:15:32 ID:DuFqMul30
綾辻行人著の眼球奇譚に収録されている再生という話。 

大学講師の主人公が教え子の女性、由伊と恋仲になる。 

やがて深い中になり、結婚を考えるようになったある日、由伊は主人公に自分の秘密を打ち明ける。 

曰く、”自分の体は呪われている”と。 

幼少時より幾度も怪我を負ったが、その痕跡は跡形もなく消えてしまい、失った四肢すら生えてくるという。 

愛する由伊の言葉を疑いなく信じる主人公。 
本来事故で失ったはずであるという由伊の白く美しい腕を見ながら主人公は言う。 
「それはね由伊。呪いではなく祝福されているんだよ」 

だが二人の幸せは長くは続かなかった。 

由伊はクロイツフェルド・ヤコブ病という病に冒され、 
急速に痴呆が進み一年以内に寿命を終えてしまうと宣告される。 

そして痴呆が進み主人公の事もおぼろげにしか思い出せなくなる由伊。 
「私がすべてを忘れてしまう前に二人で過ごしたあの山荘で静かに暮らしたい」 



569:再生2:2006/06/25(日) 02:16:13 ID:DuFqMul30
山荘で暮らし始める主人公と由伊。 
しかし病の進行は止まらず、由伊は自分の意思で動くこともしゃべることもあまりなくなっていった。 

由伊を暖炉前の椅子に座らせ、一人静かに酒を飲む主人公。 

酩酊し、いつの間にか寝入ってしまった主人公は激しい物音で目が覚める。 
暖炉の前の椅子に座わらせていた由伊が火の消えかけた暖炉に頭を突っ込むようにうつ伏せに倒れていた。 

由伊の足元には空のウィスキー瓶が転がっている。 
これに由伊は躓いたのだろうか、あるいは…。 

緩慢な動きで由伊を暖炉から引き出す。 
髪も顔も醜く焼けただれ、美しかった由伊の面影はなくなっている。 

泣きながら由伊の名前を呼ぶが、意識を失っているのか由伊はその言葉に反応することはない。 

主人公は思い出す。 
あの日、由伊のいっていた言葉を。 

「それはね由伊。呪いではなく祝福されているんだよ」 
呆然と呟く。 



570:再生3:2006/06/25(日) 02:18:27 ID:DuFqMul30
血と脂にまみれつつ由伊の頭部を切り離す主人公。 
焼け爛れた頭部は外に捨て、体だけを綺麗に拭き白いドレスを着せて椅子に座らせる。 
美しい由伊の顔が再生すると信じて。 

あれからどのくらい経ったのであろうか。 
幾日幾週間、主人公は由伊の顔が再生するのを待ち続けた。 

腐り果てていく由伊の肉体。 

主人公は祝福された体というのは嘘であったのかと、嘆き崩れる。 

そのとき山荘の外、激しい豪雨の音に混じり奇妙な唸り声が耳に届いた。 
赤ん坊が泣くような、小さな獣が鳴くような、甲高くひび割れた叫び声。 
恐る恐る外を見る。 

そこには雨に打たれ泥まみれになった焼け爛れた由伊の顔。 

その口が裂けるように開き、奇妙な声を漏らし続けている。 
切断した首の傷跡から胎児のような体を生やしながら。 

こちらが再生の本体だったのか… 

虚ろな由伊の目が主人公を捉え、爛れた唇で言葉を動いた。 

「先生」 



長々と書いてゴメン。 



585:本当にあった怖い名無し:2006/06/25(日) 10:20:59 ID:Vk+5ovFhO
>>570
最後はグロいけど、なんか綺麗で切ない話だ 



572:高い塔の女(1/3):2006/06/25(日) 02:28:56 ID:fd4rpBIT0
最近やってた「地獄少女」っていうアニメは後味悪い話が多かった。 
その内の「高い塔の女」を紹介。 

【設定】 
恨みを持った人間が、深夜0時に「地獄通信」というサイトにアクセスし 
憎い相手の名前を送信すると、地獄少女が現れ契約の藁人形を渡してくる。 
その藁人形に巻かれている赤い糸を解くと、速やかに憎い相手は地獄に送られる。 
だが、人を呪わば穴二つ。糸を解いた人間も、いずれ死ぬと地獄行きになる。 


ここ4年で急成長した会社・デッドラインの女社長、里穂。 
彼女はその溢れるカリスマ性と、遠い親戚の身寄りのない少女・美沙里の面倒をみてやっていることから、社員から絶大な信頼を寄せられていた。 
だが実は、それはすべて嘘。 
彼女は機械が大の苦手で、仕事のほぼすべてをパソコンに詳しい美沙里にやらせていたのだった。 
しかも、美沙里とは親戚でも何でもなく、系列店舗で万引きを行った美沙里を脅して、 
学校にもろくに行かせず無理矢理仕事をさせていたのだ。 
その上、自社の成長する上で邪魔な人間を秘密裏に消しており、その犯罪にも美沙里を荷担させていた。 
だが、最も自分の手を汚さずに邪魔者を排除できる方法として、地獄通信というものがあることを知った。 

それから毎晩のように美沙里に地獄通信にアクセスさせるのだが、何故か一向に地獄少女からの応答がない。 
「なによ!地獄少女なんていないんじゃないの!?」 
憤慨した里穂は、ある晩部下にまた邪魔な人間を排除するようにこっそりと指令を出していた。 
それを美沙里が録音していたことも知らずに… 
そう、実は美沙里は、里穂の本性を暴き告発するために、わざと里穂の系列店で万引きをしてデッドラインに潜入したのだ。 
美沙里の父も同じように里穂に弱みを握られ、散々こき使われた挙句に殺された。その復讐の為に、美沙里は今までの仕打ちに耐えてきた。 
「これを警察に持っていけば…!」 



573:高い塔の女(2/3):2006/06/25(日) 02:30:10 ID:fd4rpBIT0
勝ち誇る美沙里の背に、部下を連れた里穂が立つ。 
そこで初めて、美沙里は自分の行動がすべて筒抜けだったことを知る。 
「あんたもあんたの父親もバカよね。大人しくしていれば死なずに済んだのに… 
親子そろって同じことをするなんて」 
「人生なんて所詮ゲームなのよ!生きているうちが楽しければそれでいいの!」高笑いする里穂。 
なんと、美沙里の父も美沙里と同じく、里穂の犯罪を告発しようとして殺されたのだという。 

その事実に愕然としながら、父の恨みを晴すためにもここで死ぬわけにはいかないと必死で逃げる美沙里。 
会社の一室に逃げ込むが、そこには身を守れそうなものなど一つもない。 
絶体絶命、ここまでかと思ったその時、目の前のデスクにあるパソコンが目に入った。 
美沙里は藁にも縋る思いでパソコンを起動し、地獄通信にアクセスする。 
「お願い、助けて……!!」 
そして、美沙里の前に現れる地獄少女。 
「この赤い糸を解けば、貴女の恨みの相手は地獄へ流される。 
 けれど、人を呪わば穴二つ。糸を解けば、貴女も死後地獄へと堕ちるわ。それでもいいなら…」 
「それでもいい…!あいつを今すぐ地獄へ落として!!」 

美沙里の指が赤い糸を解いた瞬間―― 

里穂は、四年前の、恋人と二人でやりくりしていた頃のまだ小さな会社(というよりマンションの一室)の前に立っていた。 
恋人の待つその部屋のドアを開けると、…里穂の親友と恋人が抱き合っていた。 
肩に掛けていた鞄を落とす里穂。 
恋人は必死で弁解するが、里穂ずっと一緒に頑張ってきた恋人の裏切りを許せず、近くにあった傘を手にし… 



574:高い塔の女(3/3):2006/06/25(日) 02:31:22 ID:fd4rpBIT0
…気づいた時、里穂は血まみれになっていた。 
側にはかつて恋人であったモノと親友であったモノの変わり果てた姿。 
だがふと気づくと、その死体が、自分の姿になっていた。 
悲鳴をあげて部屋を飛び出す里穂。 
そんな里穂を、地獄少女が人形のような無表情で見つめていた。 
「闇に惑いし哀れな影よ…人を傷つけ貶めて、罪に溺れし業の魂… 
 ――イッペン、死ンデミル?」 
再び里穂が目を覚ますと、そこは舟の上。 
「この恨み、地獄へ流します…」 
こうして、美沙里の恨み―里穂は、地獄へ流された。 

後日、里穂の犯罪や美沙里との関係の真実が暴かれ、美沙里は晴れて自由の身となっていた。 
だが、美沙里はなぜか里穂のいた、高層ビルの最上階・社長室の窓から外を見つめていた。 
『人生はゲームなのよ!生きているうちが楽しければそれでいいの!』 
頭の中で反復される、里穂の言葉。 
「…人生はゲーム、か。 
…このゲーム、思う存分楽しませてもらうわ…」 
窓に映った美沙里の唇が、くっと吊り上がった。 


デッドラインの高層ビルを後にする地獄少女。 
ふとその高い塔を見上げ、ぽつりと呟く。 
「……闇に惑いし、哀れな影よ……」 



575:本当にあった怖い名無し:2006/06/25(日) 02:35:55 ID:alVOqQ0t0
まー、死んだあと地獄行きと決まっちゃえば 
現世利益最優先になるわな… 



576:本当にあった怖い名無し:2006/06/25(日) 02:39:29 ID:fd4rpBIT0
まとめるの苦手なんで、長々とゴメン。 
しかもちょっと解りづらいな… 
いつも地獄少女は糸が解かれる→恨みの対象者に恐怖を味わわせてから地獄に落とすってやり方なんだ。 
この場合、4年前に里穂が悪人(会社を大きくするためならなんでもする、人の命を何とも思わない)へと変わるきっかけとなった記憶を掘り返して、 
更にそれをちょっと捏造(自分が殺した死体が自分になる)して見せた。 
そして充分恐怖を味わわせたあと、三途の川へ流す。 

恨みをはらした美沙里は、『自分もいつか里穂と同じように地獄へ堕ちるんだ』という思いからか? 
里穂と同じように、人生をゲームとして(恐らく里穂と同じあくどいことをやりながら)生きることにする。 
っていう、ループを感じさせる後味の悪いオチ。 



609:本当にあった怖い名無し:2006/06/25(日) 21:15:02 ID:zYmRvcyt0
星新一のショートショートから。(内容うろおぼえ) 

A氏には殺してやりたいくらい憎い奴がいる。でも、殺した後で警察に 
捕まるのは嫌だ。 
なんとなく酒場でそんな愚痴をこぼしたら、ある紳士に話しかけられる。 
なんでも紳士は、ホテルを経営しているらしい。 
「それではウチのホテルにお泊まりください。そうすれば、従業員全員で 
あなたのアリバイを証言してあげましょう。数の力は絶大ですよ。」 
なるほど。彼のホテルに宿泊し、夜の間にでも部屋を抜け出し、あいつを 
殺害してから戻ってくればいいわけだ。 
決定的な証拠さえ残さなければ、あとはホテルの従業員全員が有利な証言を 
してくれるだろう。 
警察は疑うかもしれないが、数の力は絶大だ。 



610:本当にあった怖い名無し:2006/06/25(日) 21:15:42 ID:zYmRvcyt0
男は支度を整えるとホテルに宿泊し、夜の間に憎い相手を殺害。 
証拠も残さずに無事に帰って来ることができた。 
チェックアウトも終えて自宅に戻り、くつろいでいるとすぐに警察がやってきた。 
「昨夜あなたはどこにいましたか?」 
「ホテル○○の部屋に泊まっていましたよ」 
「部屋から一歩も外には出ませんでしたか?」 
「ええ、その通りです。」 
「なるほど、従業員たちも確かにそう証言している。」 
「そうでしょう」 
男はホッと胸をなでおろしたが、次の言葉を聞いて真っ青になった。 
「ではあなたを殺人容疑で逮捕します。あなたがチェックアウトした直後に、 
ホテルのベッドの下から死体が発見されたのです。」 

なんということだ。見事にはめられてしまったらしい。 
しかし、何を言い訳しても無駄だろう。なにしろ、数の力は絶大なのだから… 



821:本当にあった怖い名無し:2006/06/29(木) 18:28:21 ID:TVhOJA9l0
「刑事追う」というドラマで見た話。 
昔に一度見たきりで、細部うろ覚えなのでだいぶ脚色しています。 
名前は全部仮名。 

あるラーメン屋でバイトをする男、山田がいた。 
山田は些細なミスで店長にこっぴどく叱られる。 
最初は大人しく叱られていた山田だが、我慢できなくなったのか突然キレて暴れだした。 
店を飛び出した山田は、近くにいた女性を捕まえ人質にしアパートの一室に閉じこもる。 
騒ぎは大きくなり、立て篭もり事件として警察が乗り出してくる。 
刑事がラーメン屋店主に詳しく話を聞くと、きっかけは本当に些細な事だった。 
「あの程度でキレるなんて、こらえ性のないどうしようもない奴だ」と店主は語る。 
山田は何の要求もせずただ立て篭もっているだけ 
人質がいるため強硬手段には出れず、まずは山田の素性を洗うことになった。 
調べてみると山田は以前の職場では佐藤と名乗っていた。 
さらに調べるとその前は鈴木、田中、川田、と職場を変えるごとに名前を変えていた。 
こんなに頻繁に名を変え、偽名を名乗り続けるとは何か凶悪事件の容疑者なのでは? 
との疑惑から、事件はさらに大きく報道されることになる。 
人質になった女性が大物政治家の娘だったのも拍車をかけた。 
刑事は山田が勤めてきた職場の人間に話を聞いていく。 
すると「アイツは悪い奴じゃない」と、みな口を揃えて言った。 
「アイツが悪いんじゃない、ただ運が悪いんだ」 



824:821:2006/06/29(木) 18:34:56 ID:TVhOJA9l0
>>821続き 

山田は数々の職場を渡り歩いていたが 
その殆どの職場で些細な事から仕事を続けられなくなり、辞めていったのだ 
刑事は山田が名前を変え続ける理由が分かった気がした。 
何をやってもうまくいかない。 
次こそは、次こそは新しい自分としてうまくやるんだ。 
そんな事を何度も、何度も、何度も繰り返す。 
山田の経歴をたどる度に、その不器用な気持ちが伝わってくる。 
しかし、今度のラーメン屋ではついに限界がきてしまった。 
またここでも駄目なのか、そんな自棄になった思いが山田を凶行に走らせた。 
立て篭もってもう何時間になるか、 
山田は自分がどうすればいいのか分からなくなっていた。 

そんな時、報道を聞いて駆けつけた男がいた。 
「アイツの本当の名前は佐々木と言うんです」 
刑事が話を聞くと、男はかつての山田の雇い主であった。 
何でも山田はその小さな会社ではよく働き、社長も山田を良く思っていた。 
しかし会社が傾き、山田を解雇せざるをえなくなり 
そこで彼の消息が分からなくなったと。 
山田は小さな村の出身で、その村もダム工事の為に水没し 
身寄りもなく故郷すらなくしてしまっていた。 
社長は連絡も取れなくなった山田の事をずっと気にかけていて 
そして今回の事件の報道を知り駆けつけたのだ。 



825:821:2006/06/29(木) 18:36:27 ID:TVhOJA9l0
立て篭もっている山田に社長が説得する。 
「刑事さんから話は聞いた、お前がどれだけ苦労してきたか良く分かる。 
うちの会社も持ち直した、働きに来い。だから、早くそこからでてくるんだ」 
社長の一生懸命な説得を聞き山田は涙した。 
そして自分はなんて愚かな事をしてしまったんだ、と気付く。 
「ごめんな、ごめんな」 
何度も謝り顔をくしゃくしゃにして泣きながら、人質の女性を縛っていた縄を解く。 
そしてアパートの鍵を開け、ドアを開けようとした瞬間 
後ろから包丁で刺された。 

「よくも私にこんなマネしてくれたわね」そう言って人質だった女性は包丁を投げ捨てる。 
事切れる山田。事件は終わった。 
押し寄せ騒ぎ立てる報道陣、女性の過剰防衛ではないかとの声も。 
彼女に付き添う弁護士は、そんなことにはさせませんよ。と事務的に対応する。 

「これからだってやり直せたはずじゃないか」山田に泣きすがる社長。 
そんな喧騒の中、新たに若い男が現場に来て刑事に言った。 
「あの、TVで報道されていた山田って男、×年前に友人だった坂井だと思うんです」 
×年前、それは社長が山田を雇うより以前の話だ。 

刑事「彼は…一体誰だったんだ?」 



833:本当にあった怖い名無し:2006/06/29(木) 22:37:49 ID:iHfOHtUV0
ルースレンデルの短編 

ある男 
郊外に住んでいて、これといった趣味も、楽しみも無く仕事と家を往復している。 
住んでいるところは、駅からかなぁ~り歩く所。 
ある日、家に帰る道のり前を歩いていたら、前を歩いていた女性が怯えたような行動。 
???と思いつつ、もしかして自分が後ろを歩くことで怯えてるぅ!?って思う男。 

それから男は家に帰る時、前に女性が歩いているとき、 
女性が、後ろから来る男に怯え歩調を緩め後ろから来る男に追い抜いて貰おうとしているようだと、
自分も歩調をさりげなく緩め、彼女に歩調を合わせる。 
男は、女に一切手も触れずに、ただ歩調を調節するだけで女を怯えさせることに喜びを見出す。 

そして、段々エスカレートする男。 
ある女の跡を歩いていた、女が怯え歩調を緩めると自分も緩める、女が立ち止まると自分も立ち止まる、 
恐怖マックスになった女が通りかかった車を止め乗せてもらう。 

後日、新聞を見る男。 
自分が跡を付け車に飛び乗った女が殺されたという記事を読む。 
(彼女は、みずから変質者の車に乗ってしまった) 

自分が、彼女を恐怖に落しめる事がなければ彼女は「車の乗ることは無かった」 
間接的に彼女を殺してしまった。 
そして彼は、その趣味を止めた。 



843:本当にあった怖い名無し:2006/06/30(金) 03:11:46 ID:rf5sx/SV0
>>833 
後味悪い王道な話だね。 
主人公の男の後味悪さが読んでる方にじわじわと来そうだが 
まったく主人公に同情できないあたりがますます後味悪い。 



930:本当にあった怖い名無し:2006/07/01(土) 22:43:55 ID:bXUVOh+e0
川原泉のマンガ「笑う大天使」。 
お嬢様学校で猫をかぶる3人娘の話。連載はかなり前に終わってる。 
映画化されたせいか雑誌に特別編が載っていた。 

ダミアンという真っ黒な野良犬。 
お嬢様学校の近くを縄張りとして君臨している。 
前に立つだけで彼女たちは恐怖におびえ、そしてお弁当の残りを彼へと差し出すのである。 
残りといってもお嬢様のお弁当なのでずいぶんと豪勢。 

ある日ダミアンは懐かしい匂いをかぐ。 
それは昔、他のお嬢様とは違うちょっと変わった3人娘の匂い。 
彼女たちだけは彼を恐れることはなかった。 
その主人公たちが同窓会に出席するために母校にやってきたのだ。 
しかし主人公たちの顔はババアになっていた。 
時の流れに驚くダミアン。 

主人公たちも久しぶりにダミアンをみてまだ生きていたのかと驚く。 
あれから20年たっているのでダミアンは人間の年齢に換算して108歳、おじいちゃんなのである。 
それなのにダミアンは自分は昔のように若いと思っている。 
年老いた彼をもう誰も恐れたりはしていない。 
彼女たちがお弁当の残りを分けてくれるのは彼を恐れたからではなく、 
よぼよぼの彼がかわいそうだったから。 

真実を知り呆然としたダミアンはかつてのファンとしては後味悪かった。 
昔のままでいて欲しかった。 



937:本当にあった怖い名無し:2006/07/02(日) 02:40:41 ID:yzDVCEvg0
>>930 
それ後味悪かった。ダミアン好きだったし。 
最初は連載終了時から作中で何年たったかわからないまま 
ダミアンを紹介したから、そこまで老いているとは思わなかったし、 
主人公達が老けている様子は絵では書かれなかったし。 
(顔の輪郭の中は真っ白で、口調も高校生のころと変わってない)